呪われ薬師、最強の仲間たちと旅に出る~美味しそうだと思っているのは秘密です~

なーの( *¯ ꒳¯*)ナー

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第一章

囚われの姫君と呪われ薬師

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 魔王城最下層の下水道にプディリンはいた。そりゃあもう、いた。ぶよぶよとしたその見た目は、初見では吐き気を催すレベルだ。簡単に説明するなら、色合いがプリンで、ぶよぶよした巨大ゴブリンである。必要となるのはその目玉。通常魔物は死すると自壊して解けて消えるものがほとんどだ。そのため特殊な粉をかけることで形を維持させ、採取していく。

 ジュアンは二丁拳銃で撃ち抜き、ハロは水晶を用いて無力化の呪術をかける。マオは中立、どちらの敵でもないということで、優雅に椅子を召喚して戦闘を見ている。アイザックは倒れた魔物に片っ端から粉をかけまくり、素材採集だ。

 薬の生成自体は、夜キャンプ地に戻って行った。
 あとは一晩寝かせて、完成。

 一息ついたところで、アイザックのいるテントの外が騒がしいことに気が付いた。

 出て行くと、こちらに走ってくるブロンドの長髪を結った、麗しい少女と目が合った。アイザックのよく知る、そしてアイザックをよく知る人物。アイザックを人間にしたのは、この少女、ミッシェル姫だ。

 彼女はアイザックに気が付いて目の前で立ち尽くし、かける言葉に困っているようだった。だから、

「初めまして。」

 彼女の顔に悲しみが浮かぶ。

「だって、そうでしょ?初めて、僕の魅了に溺れていない貴女に会った。」

 彼女をうながし、皆の元へ。
 説明しなければならない。


 アイザックたちがプディリンを狩っていた昼の間。
 勇者たちは魔王城に連れ去られた、ミッシェル姫奪還のため派遣されていた。中層階にて、水晶に閉じ込められた彼女を発見する。妙なのは、まるで最近運び込まれたような印象を受けたことだが……。とにかく、姫の無事を確保するのが最優先。水晶をキャンプに持ち帰り、やっとのことで水晶から開放できたのは、夕方、アイザックがテントから出てくる数分前のことだった。

「アイザックは?」

 眠りから解放された彼女が、一番に口にしたのがアイザックのことだった。



 こうして今に至る。ミッシェルをはじめ、興奮している者もいたが、全員をひとまず焚火の周りに座らせた。静かになると、アイザックは炎を見ながら語り始める。

「……ちょうど、10年前かな。」




 7才のアイザックは、生きているのがやっとの状態で、森の中を彷徨っていた。自分のものでない血が服にこびりつき、異臭を放つ。持っていた戦闘方法は、魔、女に押し付けられた魅了という禁術のみ。殺し合いの中から出てきたばかりの、手負いの獣だったアイザックの前に突如何かが飛び出したのだ。


 少年だったアイザックは恐怖した。


 殺される。


 アイザックは全力で、命がけの魅了を行った。それが、その相手が、城を抜け出していたミッシェル姫だったのだ。その魅了の効果は、10年かけても解けることはなかった。


 そしてあの事件が起きたのだ。アイザックをはじめとした、ウィルの町のエルフたちの人間化と衰弱。



「でも今は魅了、落ち着いてるみたいだね。僕が今、人間だからかな。」

「わからないの。頭はとても冷静で、記憶もしっかりしてるわ。だから、あなたのことを変わらず好きよ。そしかしたらそれが魅了の名残なのかもしれないけれど。」

「少なくとも、こうしてまともに会話が成立したのは初めてだ。勇者様、彼女を助けていただいてありがとうございます。」

 事故とはいえ、禁術である魅了をかけてしまった。その責任を感じてずっと、町ではともに過ごして世話を焼いてきた。恋人にはならないが、付き合いの長い友人だとは思っている。

「うん。姫様を魔王城から助け出したし、僕ら勇者パーティーも、しばらくお役御免だ。魔王が進軍してこない限りは……いや、アイザックの頼みがあったね。」

「何を頼んだ。」

 マオの殺気。大嫌いな勇者と慣れあうのが心底嫌なのだ。

「落ち着いて、落ち着いて。薬を完成させた後のことを頼んだんだ。」

 アイザックがなだめ、どうどうとジュアンがマオの頭に登り、髪を撫でる。

「クリスさん、明日には薬が完成します。解呪の後、よろしくお願いします。」

「……戻っちゃうの?」

 ミッシェルは残念そうだ。一体誰のせいで、と腹が立つ。だが相手は一国の姫君だ。

「俺以外にも苦しむ人を、ミッシェルも見ただろ。」

「………そうね。」

「それに俺の心は変わらない。分かってくれ。」

「ええ……ごめんなさい。」

 クリスにミッシェルは向き直る。

「私からも解呪のお手伝いをお願いします。私のせいなんです。」

「……かしこまりました、姫様。」

 うやうやしくクリスは応じた。






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