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第二章
結界に覆われるアンサンセ
しおりを挟む【アンサンセの街】
一行は次の街を目指し進んでいた。他の街からは距離があり、外交や商業のやりとりの薄い、いわゆる外部とは隔絶した街だ。ただ、神の庭とも称される美しい街並みであり、町の風景画は各国の宮殿に飾られるほどとも囁かれている。
「止まって。」
先頭のハロが声を出す。
「街の様子がおかしい。見て。」
街は大きな円柱状の砂嵐に覆われていた。まるで物理的に何かを拒むような、砂の壁。
「天気が悪いのかなー?」
「いや、あれはただの砂嵐ではない。結界の類だ。」
「そうなの?」
魔法や呪術に疎いアイザックとジュアンには分からないが、二人とは違ってハロとマオの顔色は悪い。
「近づいてみる?」
「街の人を助けるかってこと?」
「僕としては近づいてデータをとりたいね。あれはお師匠様でもできるかわからないほど高位の魔法だ。……いや、もはや禁術クラスかも。」
「うーん……そうだね。行けるところまでは行こう。手が出せないようならもちろん引き返すけど。」
実際に近くで見たそれは、砂嵐ではなかった。金色の光の渦。それが強風によって舞っていたのだ。
「どう?ハロ。」
「見た感じ危険はないよ。入っても平気なはずだ。」
「はず?」
「初見でそれだけ言えれば十分であろうよ。進め。ついて行く。」
ハロとアイザックが通過する。肌触りもなくただの暴風。続いてジュアンが通過しようとしたのだが。
「ぶふっっ、ごほっがはっ。」
血反吐を吐いて倒れる。
「ジュアン!?」
「………口の中が切れておるようだ。大きな傷ではない。」
マオも挑むが、
「………っく。」
曰く。無理に突破することもできるがそれで力尽きてしまう可能性が高いとのこと。また、アイザックとハロも暴風の外に出ることができなくなっていた。一方通行のようだ。
「我はジュアンの手当てと世話をしてここで待とう。おまえたちだけでなんとかしてこい。」
「しかたないね。」
「アイザックも残ってかまわないんだよ。」
「ハロ?」
「これの犯人はおそらく、お師匠様だ。」
アイザックの脳裏によぎる人影。幼少期に一度だけ言葉をかけられた魔女。オレンジの髪に金色の瞳の…………ダークエルフの女。自分を、化け物にした、女。
「行くよ、ハロ。俺も彼女には借りがある。」
「……分かったよ。でもいざとなったら僕を置いて逃げるんだよ。君はまだ生きているんだから。」
「それは……時と場合による。」
たとえ何の役に立たずとも、きっと自分だけ逃げることはできないだろう。しないのではなくできないほどには、情というものが湧いてしまっているから。それ以前に、非戦闘員を逃がすようなヘマをする相手とも思えないが。
「そう。じゃあ僕の名前、極力呼ばずに行動してね。名前を呼ぶだけで位置がバレる魔術もあるから。」
「気を付けろよ、こんなところで死なれては詰まらんからな。我は世界に八つ当たりをするタイプだぞ。」
「ありがと。行ってくるよ、俺の魔王様。暴れずに待っててね。」
二人で街を散策する。まるで、白亜の宮殿を歩いてるかのような、綺麗で整った街並み。しかし家は鍵が開けっ放しで、中には食べかけの食事と眠る人。どの家でも時が止まり、そして人々は眠りについていた。街の中央に再び光と風の壁がそそり立つ。
「あらかた探し回ったけど、きっとここだよね。」
「ああ。中に生体反応が一つ。おそらくね。」
二人は再び暴風の光の中を抜けた。
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