呪われ薬師、最強の仲間たちと旅に出る~美味しそうだと思っているのは秘密です~

なーの( *¯ ꒳¯*)ナー

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第三章

実験、結果、別れ

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「僕の見立てでは……ああいや、先に確認しようかな。その方がマオも安心するだろうし。ちょっと待ってね。」

 そう言うと、首から下げられる小型の黒板を取り出し、魔法陣を複数描き出す。ひとつ描くと息を吹きかけ、チョークの粉を飛ばすようにして魔法陣を宙に浮かべる。

 それを複数回行い、アイザックの周りに浮かべた。

「今アイザックはダークエルフの姿。ちょうどいいね。次ジュアン、おいで。」

 同様にして、ジュアンの周りにも魔法陣を並べていく。

「今からアイザックに、いくつか日常的な動きを取ってもらう。アイザックの周囲の魔法陣は、魔法、呪術、状態異常やステータス変動を感知するものだ。今は宙に浮いているだけだけど、かなり微量な魔力の流れでも感知して、その度合いに応じて光る。」

 最初からハロに相談しておれば良かったな、と横から聞こえた気がするが、ハロは無視して続ける。

「次にジュアン。こっちも同様に魔力の変動、ステータス変化、状態異常や脈拍、健康状態を映しているよ。異常があればこっちも光る。」

「すっごいね!」

「毎日君たちの体を盗撮&スキャンしているからこそ、短時間でこの魔法陣が作れるんだからね。今後は素直に透視スキャンさせるように。」

「でも変態なんでしょ?」

「それは、そう。」

「噛んで含めるように言うな変態。」

 ジュアンは素直に褒めたたえてくれたものの、アイザックとマオからは変わらず嫌そうな返答なので、今後も透視スキャンは盗撮になるだろう。

「まず……あー、そっか。アイザック、目を閉じてる場合と、開けてる場合、両方やろうか。長くなるけどよろしく。」

「いや、それはこちらこそだから。」

「この際、徹底的にやれ、ハロ。」

「そーそー!じっけーん!!」

 長い夜が、始まった。




 翌朝、アイザック、ジュアンが疲れて眠りにつく中、マオとハロが結果をまとめる。
 検証結果は、ある程度予想していた通りだった。

 キーとなるのは五感。
 名前を呼ぶだけで、本当に僅かだが、魅了効果が発生する。しかし耳をふさいで聞いていなければ、効果は出ない。

 近くに立つだけで魅了の効果が出ることもあったが、視線を遮る、触らないなど、五感を塞げば無効。

 アイザックと生活するだけで、本当に僅かだが、魅了にかかっていく。
 特に効果があるのは、至近距離で目を見ること。どちらかの目を塞ぐと効果は薄れるものの、この行動だけは他より明らかに効果が大きかった。

 ただ、微量の魅了効果のため、五分もせず魅了の効果は消えてなくなる。
 この結果は全員が交代で仮眠を取った後、夕方に伝えられた。

「ハロが強くかかっていたのは、よく俺の顔を覗き込んでいたから。ジュアンとは一緒に行動することや、目を見てお話することが多かったから……かな。」

「おおよそ分かってきたね。呪術の観点からみるとね、おそらく、アイザックの目を一度も見たことがない人と、一度でも見たことがある人で、アイザックへの感想、違うと思うんだ。」

「どゆこと?」

「アイザックの目を一度でも見ていると、アイザックに対して好意的になるのさ。すれちがっただけの人はアイザックのことを、取るに足らない、痩せ気味のありふれた若者……あるいは、見るのも嫌なダークエルフだと、評価する。」

「…………そうだったっけ?」

「そう、人間の姿で旅をしていたし、薬を売る過程で目を見るからね。奇妙なパーティーだったからこそ余計に、アイザックの顔をつい見るような人が多かった。…………旅の道中、妙に絡まれたり、好意的な人が多かったのもそういうことだろうよ。」

「目を見ると、惚れちゃうの?」

「少し違うかな。そこまでじゃない。見方が変わる、のかな。『ただの痩せた男の手』が、『なぜか艶めかしい、白魚のような儚い手』、とかに印象が変わるんだ。」

「妙な違和感の正体はそれか。」

「マオはどう感じていたんだい?」

 マオは納得したように頷いて、何かを思い出したようだ。

「とりたてて美形という顔でもないが、老若男女問わず、アイザックと話すと全員好意的になるからな。見知らぬ小僧の薬などいらんと言っていた爺が、別嬪べっぴんだと頬を緩ませて出てくる始末。女子供ならともかく、男どもであの反応は、ない。」

「あっはっはっは!!そうだね!魅了にかからないマオからしたら、さぞかし滑稽こっけいだろうねえ。」

「すみませんねえ、平凡なつらで。」

 大笑いするハロ、どうフォローしていいか分からず目を細めるジュアン。
 納得がいったならいいか、と思う半分、複雑なアイザック。

「生きていくうえで、プラスになるしいいじゃないか。」

 ハロは励ますように……いや、笑わせてくれたことに感謝するようにアイザックの背中を叩いた。


 話し合いは途中で誤魔化されて、楽しくふざけあったまま就寝の時間になった。

 誰も認めたくなかったのだ。自分の好意が、ただの呪術……禁術による、偽りのものだと思いたくなかった。魅了にかかる前から、気のいい旅仲間としてアイザックが好きなのだから。

 多少暴走はしたが、アイザックなら流してくれる。変わらず、こうして旅を続けてくれると。

 そう思って、言葉にしないまま。

 途中町で休憩して、物資を補充して。

 珍しく宿が空いていたから、一人一部屋、宿を取って。



 宿泊した次の朝。アイザックはいなくなっていた。





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