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第三章
共有、相談、疑問
しおりを挟む【ピエネの湖のほとり】
三人とマオが離れていた間のことを、歩きながら共有する。
魔獣の発生で軍隊が組織されたこと、勇者パーティーの再結成、アイザックの薬師の登録削除、子爵家の追手……は、可能性があるだけだが。
一方マオから聞いた話は次の通りだ。
魔獣に関しては魔王、むしろ魔界全体でノータッチ。むしろ人間側からの抗議文や宣戦布告で初めて確認したらしい。
しかし勇者VS魔王の争いになる以上、マオの父は迎え討つことになるので、魔界も戦争準備が始まり、魔王城の警備体制もきつくなる。
マオは次世代であるため、なるべく関わらないようにしばらく魔王城には帰らない。魔王が倒された場合、後を継いで次の魔王にならなければいけないが、とにかくすべて終わるまで何もできないという。
そのため、このまま一緒に旅をするのは変わらない。前より一層、勇者との遭遇や魔王バレに気を付けることにはなる。
報告をし合って、そのままイーヴォルの町に向かう足取りは変わらず。
湖のほとりにテントを張り、夕食の魚を食べ終えた時だった。
「言うか言うまいかずっと迷っていたが、言うことにした。聞け。」
マオがそう言って黙るから、三人は静かにマオの方を見て、続きを待つ。
「アイザック。魅了を、我ら三人にかけた覚えはないな?」
次に視線が注がれるのはアイザックだ。
「ないよ。仕留めたい魔物の制御に使うことはよくあるけれど、思考も体の制御も一切できなくなるほどに強いものをかけているから、うっかりかかったら露骨に分かるはず。」
「そうか。意図的には、かけたことはないんだな?」
「うん。」
様子を見ていたハロが口をはさむ。
「それを尋ねるということは、その関係で気になることがあるんだね?」
「そうだ。おまえとジュアンが自覚しているかは分からないが、二人は旅路で、時折、魅了の状態異常が出ている。我は、見たければいつでもステータスを勝手に確認することができるからな。魅了されている、これは間違いない。」
思い当たることがあるのか、ジュアンはうつむく。ハロは……なんのリアクションも見せない。
「奇妙なのは、それが常時かかっているわけではないということだな。ジュアンは外に遊びに出るなど、しばらくアイザックと距離を置くと解けていた。ハロは……おそらく、一晩経つなど、時間経過か。それで魅了が解けている。」
アイザックの顔色は、悪い。それこそマオを心配していた道中よりも、薬師の登録が消された時よりもだ。
「おまえはどう考える、ハロ。呪術に関する知識ではおまえの方が明るいだろう?」
「……魅了の症状が出ていることはね、気づいていたよ。」
ハロがアイザックの方を見る。
「ただ、アイザックが意図的に、微量ずつかけているのかと……。時折僕も暴走することはあったけれど、他人に呪いをかけられる経験に浮かれていてね、つい。」
「ごめん。でも本当にかけたつもりはなくて、」
「ああいい。謝らないで。かけたなら一生解かないでね。僕と君が共に死に、塵に、土に、輪廻に還るまで。」
「え、いや、その、」
魅了を使ってしまった罪悪感や絶望感はある。されどアイザック自身にその気はないので、愛の告白染みた台詞に白い眼を向ける。口から続いて発せられたのは、疑問。
「ハロって、素で変態なの?魅了のせいでそうなってるの?恋のせい?」
「生粋の変態さんだよ?」
ジュアンが訝しげに問えば、愉快そうに返すハロ。
顔色悪くジト目でハロから少し遠ざかるアイザックを見つつ、マオが咳払いをする。
「話が逸れたが、我も、おまえがわざと味方にかけたとは思っておらぬ。少なくとも、それならばジュアンにしてもハロにしても、おまえが嫌がる理由が分からぬ。」
「……マオも、魅了がかかってるの?」
「たわけ。魔王に弱小の呪いなど効かぬわ。」
ハロが小声で、アイザックに囁きかける。
「動きも思考も封じて、複数人の強者で何日もかけて行えば……?」
「させるかド阿呆。不敬罪で瓶に詰めるぞ。」
「こわあ。」
こんな事態だというのに、ハロはケラケラと笑っている。
「本当に、かかってないんだね?」
「ああ、それは確かだ。むしろかかったのかと酷く焦ったからこそ、ハロやジュアンのステータスを何度も確認することになったのだ。……しばらく言い出せなかったのも、我の状態を見極められなかったからで。」
「…………そっか。」
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