追放置き去り婚約破棄されたので拾われ溺愛狙います

つるぎ

文字の大きさ
40 / 55
第五章

40.誰がために居る場所

しおりを挟む
 ヨルノス遺跡に辿り着く前は。

 庶民からは置き去りにされ、貴族からは追放され、メイベルにはもう、居場所なんてないと思っていた。

 唯一の寄る辺と思っていた人たちは、彼らが持つ義務を思うと頼れなくて。

 そのような中で、魔王の嫌疑を掛けられては、居場所なんて本当になくなった。

 生まれた時からの疎外感。

 メイベルという存在は、魂から根本的に人と違ったのだと理解して、誰とも相容れない現実に虚しさと、安堵のようなものを覚えて。

 この孤独は、なにもおかしくなかったのだと。

 ――でも。

 彼が、手を取ってくるから。

 神の場を引き離すように、竜たちから引き離そうとするから。

 もう少し、ここに居てもいいのかなと、思うのだ。




 風を切るように空間を抜けた。

 メイベルは、今まさに攻撃に転じようとしているオズワルドの前に立つ。魔力の奔流にバサバサと長い髪を散らしながら、竜神たちを睨みつけた。

「メィ……!」

「これなるは! 神君竜王の魂を宿し! アルビアン<聖なる獣>の肉体を持つ者! 分御霊に等しければ! すなわち! そなたらの子も同然のはず! みずから我が子を苦しめて、思うのところはないのか!」

「――御前」

 神君竜王が平伏し、アルビアンがすぐに倣った。オズワルドは唖然とそれを見る。

「御前、この地の主として、御目覚めになられたと見る」

「答えよ、なぜ苦しめる」

 アルビアンが答えた。

「不要だからだ。御前の言われる通り、あれなるは我が血肉。我が庇護の下にあり、加護を与えられる者。それが神君竜王の魂を宿しているなど言語道断。
 この上、我が眷属の立場にありながら、御前を利用し、御前を理由に侵攻させていた軍を撤退させた。処分するほかない」

 アルビアンの最大の強さは、損なわないこと。

 加護を与えることは信奉と引き換えで、力は失わない。その上で手足を得る。

 たとえ信奉者が消えようとも、彼らを欲しないアルビアンには痛くも痒くもなかった。履いて捨てるほど居る有象無象。

 付き合いの長さから、分御霊にも等しい一族が生まれても、低きに流れる水が瀑布となっているだけである。

 等しいだけで、土地神にあるような、死に至るほどの負のフィードバックは起きないのだ。

 だが、土地神がそうであったように、この世界で分御霊とは魂を分けた存在で、失っては取り返しがつかない。

 それがアルビアンが唯一執着を見せた存在に現れたのだ。

 しかも、それぞれの竜の身許から離れようというのだ。度し難いに度し難いをどれだけ重ねたら気が済むのか。

 アヴァルランドの守護竜にとって、アルビアン<聖なる獣>に連なる者とは、とうぜん我が身そのもの。

 それだけの物を引き換えの加護である。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?

はくら(仮名)
恋愛
 ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。 ※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。

前世で孵した竜の卵~幼竜が竜王になって迎えに来ました~

高遠すばる
恋愛
エリナには前世の記憶がある。 先代竜王の「仮の伴侶」であり、人間貴族であった「エリスティナ」の記憶。 先代竜王に真の番が現れてからは虐げられる日々、その末に追放され、非業の死を遂げたエリスティナ。 普通の平民に生まれ変わったエリスティナ、改めエリナは強く心に決めている。 「もう二度と、竜種とかかわらないで生きていこう!」 たったひとつ、心残りは前世で捨てられていた卵から孵ったはちみつ色の髪をした竜種の雛のこと。クリスと名付け、かわいがっていたその少年のことだけが忘れられない。 そんなある日、エリナのもとへ、今代竜王の遣いがやってくる。 はちみつ色の髪をした竜王曰く。 「あなたが、僕の運命の番だからです。エリナ。愛しいひと」 番なんてもうこりごり、そんなエリナとエリナを一身に愛する竜王のラブロマンス・ファンタジー!

婚約破棄された際もらった慰謝料で田舎の土地を買い農家になった元貴族令嬢、野菜を買いにきたベジタリアン第三王子に求婚される

さら
恋愛
婚約破棄された元伯爵令嬢クラリス。 慰謝料代わりに受け取った金で田舎の小さな土地を買い、農業を始めることに。泥にまみれて種を撒き、水をやり、必死に生きる日々。貴族の煌びやかな日々は失ったけれど、土と共に過ごす穏やかな時間が、彼女に新しい幸せをくれる――はずだった。 だがある日、畑に現れたのは野菜好きで有名な第三王子レオニール。 「この野菜は……他とは違う。僕は、あなたが欲しい」 そう言って真剣な瞳で求婚してきて!? 王妃も兄王子たちも立ちはだかる。 「身分違いの恋」なんて笑われても、二人の気持ちは揺るがない。荒れ地を畑に変えるように、愛もまた努力で実を結ぶのか――。

地味で器量の悪い公爵令嬢は政略結婚を拒んでいたのだが

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 心優しいエヴァンズ公爵家の長女アマーリエは自ら王太子との婚約を辞退した。幼馴染でもある王太子の「ブスの癖に図々しく何時までも婚約者の座にいるんじゃない、絶世の美女である妹に婚約者の座を譲れ」という雄弁な視線に耐えられなかったのだ。それにアマーリエにも自覚があった。自分が社交界で悪口陰口を言われるほどブスであることを。だから王太子との婚約を辞退してからは、壁の花に徹していた。エヴァンズ公爵家てもつながりが欲しい貴族家からの政略結婚の申し込みも断り続けていた。このまま静かに領地に籠って暮らしていこうと思っていた。それなのに、常勝無敗、騎士の中の騎士と称えられる王弟で大将軍でもあるアラステアから結婚を申し込まれたのだ。

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ

さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。 絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。 荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。 優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。 華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

処理中です...