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第四章 空と大地の交差
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そんな二人の様子を見守る人影が三つほど、少し離れたところの岩陰にあった。
女船乗り二人は興味津々にその様子を眺め、アーデルハイトは箒に座り三人を隠せるほどの大きさの岩の上から顔を少しだけ出して、その表情を盗み見る。
「なんか事情はよく判らないけど、上手く纏まった感じ?」
「……そうね」
「恋人同士、と言うわけでもないでしょうけど。どういう関係なのでしょうか?」
「きっとアタシとラニーニャみたいなもんでしょ?」
「なるほど!」
ぽんと掌を叩くラニーニャ。
そんな二人の様子を無視して、アーデルハイトの視線はあるものに釘付けになっていた。
カナタを見下ろすヨハンの表情。
困ったような、呆れたような微笑。
昔からアーデルハイトが無茶を言うと、あんな表情をしながらも何かと付き合ってくれたものだ。
その顔を見るのが好きだった。優しい表情に目を奪われたことは、一度や二度ではない。
今はそれは自分には向けられない。
それが悔しくて、でも同時にその感情を引きだすことができるカナタに感謝している。
「アーちゃんさ」
「……嫌な予感がするのだけど、そのアーちゃんと言うのはわたしのこと?」
「当たり前じゃん。アーデルハイトだからアーちゃん。可愛いでしょ?」
「……別に」
「照れんなよー」
「ちょっと、箒にしがみつかないで!」
急に掛けられた体重を支え切れず、アーデルハイトはクラウディアを巻き込んで砂浜に転がる。
身体を起こしながら雷撃の一発でもかましてやろうかと思ったところで、同じように地面に転がりながら笑顔を向けてくるクラウディアを見て、一気に毒気を抜かれてしまった。
「いい女じゃん、アーちゃん」
「何のこと?」
「ちゃんと引き留めて、自分は肝心なところで身を引いてさ。言いたいことは沢山あったんじゃない、両方に?」
「……かも知れない。でも、もうどうでもいいわ」
二人の件はこれで丸く収まった。
そこに関してアーデルハイトがこれ以上関与することもないだろう。
依然、胸の中にはもやもやした感情が積み上がっているが、それはヨハンの脛を蹴ることで解消すればいい。
「あの二人にはね、ファンがいるの。わたしもその一人よ」
「ふーん。アタシには惚けた女の子と、頼りないにーちゃんにしか見えないけどなぁ」
「否定はしないけどね」
「クラウディアさん。ちゃんとあのベアトリスに勝ってることを評価してあげましょうよ」
「……んー」
その事実を認めたくないのか、クラウディアは難しい顔をして腕を組んでいる。
交差した腕の上に彼女の豊かな胸が乗っかっているのを見て、アーデルハイトは小さな溜息をついた。
女船乗り二人は興味津々にその様子を眺め、アーデルハイトは箒に座り三人を隠せるほどの大きさの岩の上から顔を少しだけ出して、その表情を盗み見る。
「なんか事情はよく判らないけど、上手く纏まった感じ?」
「……そうね」
「恋人同士、と言うわけでもないでしょうけど。どういう関係なのでしょうか?」
「きっとアタシとラニーニャみたいなもんでしょ?」
「なるほど!」
ぽんと掌を叩くラニーニャ。
そんな二人の様子を無視して、アーデルハイトの視線はあるものに釘付けになっていた。
カナタを見下ろすヨハンの表情。
困ったような、呆れたような微笑。
昔からアーデルハイトが無茶を言うと、あんな表情をしながらも何かと付き合ってくれたものだ。
その顔を見るのが好きだった。優しい表情に目を奪われたことは、一度や二度ではない。
今はそれは自分には向けられない。
それが悔しくて、でも同時にその感情を引きだすことができるカナタに感謝している。
「アーちゃんさ」
「……嫌な予感がするのだけど、そのアーちゃんと言うのはわたしのこと?」
「当たり前じゃん。アーデルハイトだからアーちゃん。可愛いでしょ?」
「……別に」
「照れんなよー」
「ちょっと、箒にしがみつかないで!」
急に掛けられた体重を支え切れず、アーデルハイトはクラウディアを巻き込んで砂浜に転がる。
身体を起こしながら雷撃の一発でもかましてやろうかと思ったところで、同じように地面に転がりながら笑顔を向けてくるクラウディアを見て、一気に毒気を抜かれてしまった。
「いい女じゃん、アーちゃん」
「何のこと?」
「ちゃんと引き留めて、自分は肝心なところで身を引いてさ。言いたいことは沢山あったんじゃない、両方に?」
「……かも知れない。でも、もうどうでもいいわ」
二人の件はこれで丸く収まった。
そこに関してアーデルハイトがこれ以上関与することもないだろう。
依然、胸の中にはもやもやした感情が積み上がっているが、それはヨハンの脛を蹴ることで解消すればいい。
「あの二人にはね、ファンがいるの。わたしもその一人よ」
「ふーん。アタシには惚けた女の子と、頼りないにーちゃんにしか見えないけどなぁ」
「否定はしないけどね」
「クラウディアさん。ちゃんとあのベアトリスに勝ってることを評価してあげましょうよ」
「……んー」
その事実を認めたくないのか、クラウディアは難しい顔をして腕を組んでいる。
交差した腕の上に彼女の豊かな胸が乗っかっているのを見て、アーデルハイトは小さな溜息をついた。
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