17 / 67
神宮寺稀のお仕事 前編
しおりを挟む
私の名前は神宮寺稀(しんぐうじまれ)。
本名ですかって?違いますわ。
これはあくまでも仕事をする上での名前ですの。
本名と年齢は企業秘密ですわ。
私の仕事はいわゆる「恨み晴らし屋」ですの。
悲しい事にこの世の中、理不尽な目に遭われている方たちがたくさんおります。
暴言、暴力。いじめや差別。迷惑行為など挙げたらキリがないですけど、そういった事に耐えきれなくなった人たちが私の元に恨みを晴らしてほしいとご依頼に来られるのですわ。
私はお客様のそんなご無念を少しでもお晴らし出来ればと微力ながらお力添えをしておりますの。
さて、今日はどんなお客様がお見えになるのかしら?
「あなたのお恨み、この神宮寺稀が晴らして差し上げますわ」
⭐︎⭐︎⭐︎
今回、稀に恨みを晴らしてほしいと依頼してきたのは松川智志(まつかわさとし)25歳。男。会社員。
趣味は美少女フィギュア収集。
特にお気に入りはアイドルを育成するスマホゲーム「七色天使セイラルージュ」のフィギュアである。
赤、青、黄、緑、ピンク、白、紫の七つの色のセーラ服を来た地下アイドルユニット「セイラルージュ」を育成するゲームから作られたフィギュアで、智志のお気に入りは赤セイラの乙桐葉(おとは)のフィギュアであった。
会社のデスクには七体のセイラルージュのフィギュアが飾られていて、朝出勤時にはいつも声をかけている。
「乙桐葉ちゃん、おはよう。今日も可愛いね」
25歳にもなった男がフィギュアに声をかける姿は周りから見たら異様なものであるが、本人はそんな事は気にしていない。
そんなある日、智志は会社に出勤してくると、デスクの上に置いてあったフィギュアが全て無くなっていた。
慌てた智志は仕事もそっちのけでフィギュアを探した。
「誰だ?俺のフィギュアを盗んだ奴は」
荒い息をして叫ぶ智志を同僚たちは冷ややかな目で見ていた。
「松川、仕事中に何やってんだ!」
智志は課長に怒られて仕方なくいったんは仕事についた。
そして仕事が終わった夕方になり再度フィギュアを探していたところに同期の子角春樹(こかどはるき)がやって来た。
「お前が探しているのはこれか?」
春樹が見せたのは赤セイラ乙桐葉のフィギュアであった。
「お前か?俺のフィギュアを盗んだのは。返せ」
智志が春樹に飛びかかろうとしたとき横から四人の男たちが明典を押さえつけた。
この四人はいずれも春樹の友人たちで社内ではよく連んでいる仲間であった。
「お前のその腐った根性を叩きのめしてやろうと思ってな」
「乙桐葉を返せ」
「うるせえ」
智志の腹に蹴りが入りその場にうずくまる。
「こんなフィギュア一つにガタガタ騒いでるんじゃえねよ」
春樹はそう言うと智志の目の前で乙桐葉フィギュアの首をへし折った。
「何しやがる」
春樹に再び飛びかかろうとした智志を四人ががりで押さえ付けて床に押し倒す。
「前からお前が気に食わなかったんだよ。ウザいし気色悪いしでな。早いところこの会社から出て行ってくれないか」
春樹はそれだけ言うと四人に合図して智志を離した。
あまり痛めつけると刑事事件として警察が出て来てしまうため、社内での喧嘩程度で済ませたのだ。
「ほらよ。返すぜ」
首の取れた乙桐葉のフィギュアを智志の前に投げ捨てると五人は笑いながら去っていった。
「よくも。。よくも僕の乙桐葉を殺したな」
智志は笑いながら去っていく春樹たちを睨みつけていた。
その後、会社のゴミ箱から残る六体のフィギュアが見つかったが、どれも腕や足を折られていた。
智志の目に殺意がこもる。
「あいつら必ず地獄へ送ってやる」
「部長、こんな具合でよろしかったんですか?」
「上出来だ。松川の奴がこれでいなくなれば良し。まだ居残るようならもう一度痛い目に遭わせろ。くれぐれも警察沙汰にならない程度にな」
「部長も人が悪いですな。自分は手を汚さずに俺たちにこんな事させるなんて」
「人聞きの悪い事を言うな。その代わり奴を会社から追い出したらお前たち全員係長に昇格させてやると言っただろう」
「その約束守ってもらいますよ」
智志を痛めつけるように春樹たちに命じたのは直属の部長、天田光秀(あまだみつひで)であった。
その夜、智志はインターネットで恨み晴らしの情報を検索しているうちにひとつのサイトに目を止めた。
「神宮寺稀の館?」
サイトを開くとパープルの衣装に身を包んだ稀の艶やかな姿が映し出され、評判も上々であった。
五段階評価で四・八はほとんど満点である。
無論、やらせ評価の可能性もある。
ネットの評価など友人や親戚に頼んでいい評価を入れてもらう事も出来るからだ。
だが、智志は艶やかなHPが気に入った。
「場所はどこだ?」
所在地を確認するとすぐ近所であった。
「なんだ。目と鼻の先にこんなところがあったとは。灯台下暗しとはこの事だな」
他にも探せばあるだろうが、近所という点が何より大きく、智志は稀に呪いの依頼をする事に決めて翌日早速店に向かった。
「神宮寺稀の館へようこそ。今日はどんなお悩みを?」
「は、はあ。。」
全身をパープルカラーのアラビアンナイト衣装に身を包んだ稀は神秘的な雰囲気を演出している。
智志は稀の美貌に一瞬見惚れてしまったが、すぐに気を取り直し、恨みの内容を話し出す。
親身に話を聞きながら相槌を打ち、時には確認するようにお客の言ったことを繰り返して見せる。
稀の客対応は相手の心を掴むのに理想的なやり方である。
「その人形は松川さんにとっては大事な恋人のようなものだったのですね」
「そうです。俺の彼女を殺した報いをあいつらに償わせてやらなければ気が収まりません」
「お恨みを晴らしたい方は何人いらっしゃるのですか?お伺いしていると複数人いるようですが、代金はお一人につき十万円頂きますけれどよろしいでしょうか?」
「全部で五人です。構いません、あいつらを痛い目に遭わせられるのなら五十万円くらい安いものです」
「どのような呪いをご希望でしょうか?どれくらいの強さでどんな風にしたいのかお教え頂けますか」
「全員殺してほしい。乙桐葉と同じように首をへし折って」
「そこまではやり過ぎなのではごさいませんか?あまり強力な呪いはその分代償も大きくなって自分自身に跳ね返ってくる事もあるのですよ」
「じゃあ、全員手足のどこか失わせて一生苦しむようにしてほしい。それなら大丈夫ですか?」
「よろしいでしょう。ではその壊れたフィギュアをこちらにお預け頂けますでしょうか。それを使って呪いをかけますので」
稀に言われて智志は首の折れた乙桐葉のフィギュアを手渡す。
フィギュアを恭しく受け取ると稀は彼女の代名詞でもあるお馴染みの言葉を明典にかけた。
「ご依頼、承りました。あなたのお恨み、この神宮寺稀が晴らして差し上げますわ」
本名ですかって?違いますわ。
これはあくまでも仕事をする上での名前ですの。
本名と年齢は企業秘密ですわ。
私の仕事はいわゆる「恨み晴らし屋」ですの。
悲しい事にこの世の中、理不尽な目に遭われている方たちがたくさんおります。
暴言、暴力。いじめや差別。迷惑行為など挙げたらキリがないですけど、そういった事に耐えきれなくなった人たちが私の元に恨みを晴らしてほしいとご依頼に来られるのですわ。
私はお客様のそんなご無念を少しでもお晴らし出来ればと微力ながらお力添えをしておりますの。
さて、今日はどんなお客様がお見えになるのかしら?
「あなたのお恨み、この神宮寺稀が晴らして差し上げますわ」
⭐︎⭐︎⭐︎
今回、稀に恨みを晴らしてほしいと依頼してきたのは松川智志(まつかわさとし)25歳。男。会社員。
趣味は美少女フィギュア収集。
特にお気に入りはアイドルを育成するスマホゲーム「七色天使セイラルージュ」のフィギュアである。
赤、青、黄、緑、ピンク、白、紫の七つの色のセーラ服を来た地下アイドルユニット「セイラルージュ」を育成するゲームから作られたフィギュアで、智志のお気に入りは赤セイラの乙桐葉(おとは)のフィギュアであった。
会社のデスクには七体のセイラルージュのフィギュアが飾られていて、朝出勤時にはいつも声をかけている。
「乙桐葉ちゃん、おはよう。今日も可愛いね」
25歳にもなった男がフィギュアに声をかける姿は周りから見たら異様なものであるが、本人はそんな事は気にしていない。
そんなある日、智志は会社に出勤してくると、デスクの上に置いてあったフィギュアが全て無くなっていた。
慌てた智志は仕事もそっちのけでフィギュアを探した。
「誰だ?俺のフィギュアを盗んだ奴は」
荒い息をして叫ぶ智志を同僚たちは冷ややかな目で見ていた。
「松川、仕事中に何やってんだ!」
智志は課長に怒られて仕方なくいったんは仕事についた。
そして仕事が終わった夕方になり再度フィギュアを探していたところに同期の子角春樹(こかどはるき)がやって来た。
「お前が探しているのはこれか?」
春樹が見せたのは赤セイラ乙桐葉のフィギュアであった。
「お前か?俺のフィギュアを盗んだのは。返せ」
智志が春樹に飛びかかろうとしたとき横から四人の男たちが明典を押さえつけた。
この四人はいずれも春樹の友人たちで社内ではよく連んでいる仲間であった。
「お前のその腐った根性を叩きのめしてやろうと思ってな」
「乙桐葉を返せ」
「うるせえ」
智志の腹に蹴りが入りその場にうずくまる。
「こんなフィギュア一つにガタガタ騒いでるんじゃえねよ」
春樹はそう言うと智志の目の前で乙桐葉フィギュアの首をへし折った。
「何しやがる」
春樹に再び飛びかかろうとした智志を四人ががりで押さえ付けて床に押し倒す。
「前からお前が気に食わなかったんだよ。ウザいし気色悪いしでな。早いところこの会社から出て行ってくれないか」
春樹はそれだけ言うと四人に合図して智志を離した。
あまり痛めつけると刑事事件として警察が出て来てしまうため、社内での喧嘩程度で済ませたのだ。
「ほらよ。返すぜ」
首の取れた乙桐葉のフィギュアを智志の前に投げ捨てると五人は笑いながら去っていった。
「よくも。。よくも僕の乙桐葉を殺したな」
智志は笑いながら去っていく春樹たちを睨みつけていた。
その後、会社のゴミ箱から残る六体のフィギュアが見つかったが、どれも腕や足を折られていた。
智志の目に殺意がこもる。
「あいつら必ず地獄へ送ってやる」
「部長、こんな具合でよろしかったんですか?」
「上出来だ。松川の奴がこれでいなくなれば良し。まだ居残るようならもう一度痛い目に遭わせろ。くれぐれも警察沙汰にならない程度にな」
「部長も人が悪いですな。自分は手を汚さずに俺たちにこんな事させるなんて」
「人聞きの悪い事を言うな。その代わり奴を会社から追い出したらお前たち全員係長に昇格させてやると言っただろう」
「その約束守ってもらいますよ」
智志を痛めつけるように春樹たちに命じたのは直属の部長、天田光秀(あまだみつひで)であった。
その夜、智志はインターネットで恨み晴らしの情報を検索しているうちにひとつのサイトに目を止めた。
「神宮寺稀の館?」
サイトを開くとパープルの衣装に身を包んだ稀の艶やかな姿が映し出され、評判も上々であった。
五段階評価で四・八はほとんど満点である。
無論、やらせ評価の可能性もある。
ネットの評価など友人や親戚に頼んでいい評価を入れてもらう事も出来るからだ。
だが、智志は艶やかなHPが気に入った。
「場所はどこだ?」
所在地を確認するとすぐ近所であった。
「なんだ。目と鼻の先にこんなところがあったとは。灯台下暗しとはこの事だな」
他にも探せばあるだろうが、近所という点が何より大きく、智志は稀に呪いの依頼をする事に決めて翌日早速店に向かった。
「神宮寺稀の館へようこそ。今日はどんなお悩みを?」
「は、はあ。。」
全身をパープルカラーのアラビアンナイト衣装に身を包んだ稀は神秘的な雰囲気を演出している。
智志は稀の美貌に一瞬見惚れてしまったが、すぐに気を取り直し、恨みの内容を話し出す。
親身に話を聞きながら相槌を打ち、時には確認するようにお客の言ったことを繰り返して見せる。
稀の客対応は相手の心を掴むのに理想的なやり方である。
「その人形は松川さんにとっては大事な恋人のようなものだったのですね」
「そうです。俺の彼女を殺した報いをあいつらに償わせてやらなければ気が収まりません」
「お恨みを晴らしたい方は何人いらっしゃるのですか?お伺いしていると複数人いるようですが、代金はお一人につき十万円頂きますけれどよろしいでしょうか?」
「全部で五人です。構いません、あいつらを痛い目に遭わせられるのなら五十万円くらい安いものです」
「どのような呪いをご希望でしょうか?どれくらいの強さでどんな風にしたいのかお教え頂けますか」
「全員殺してほしい。乙桐葉と同じように首をへし折って」
「そこまではやり過ぎなのではごさいませんか?あまり強力な呪いはその分代償も大きくなって自分自身に跳ね返ってくる事もあるのですよ」
「じゃあ、全員手足のどこか失わせて一生苦しむようにしてほしい。それなら大丈夫ですか?」
「よろしいでしょう。ではその壊れたフィギュアをこちらにお預け頂けますでしょうか。それを使って呪いをかけますので」
稀に言われて智志は首の折れた乙桐葉のフィギュアを手渡す。
フィギュアを恭しく受け取ると稀は彼女の代名詞でもあるお馴染みの言葉を明典にかけた。
「ご依頼、承りました。あなたのお恨み、この神宮寺稀が晴らして差し上げますわ」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる