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ハザマ真理教編
ハザマ真理教編 五
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「教祖様、逃げた生駒舞美はまだ見つからないのですか?」
狭間法元に付く謎の女性、藤村雪乃がそう問いかける。
「横浜の教会に手配させておる。宗像凛が上手く始末してくれるであろう」
「宗像凛ですか」
「何だ? 雪乃は凛が信用出来ぬのか?」
「いえ、実力では申し分ないでしょうが性格が優しすぎます。もし傀の実態を知った時、凛が真理教を見限る事を危惧しているのです」
「なるほどのう」
「まあ、そんな時のためにあの役立たずの中昭夫と坂松透を雇われているのでしょうが」
「はっははは。わかっておるではないか。狂犬を二匹まとめて生駒舞美にぶつけて共倒れにさせるもよし。昭夫と坂松が生駒舞美にやられるも良し。わしにしてみればゲームを楽しんでおるだけだ。それにいざとなれば雪乃、お前がおる」
「ありがたきお言葉」
何の愛情もない、ただ人を咬み殺すだけの狂犬を飼っているという事か。
雪乃はそう思っていた。
それを見抜いたかのように法元は言葉を続ける。
「狂犬はしつける必要はない。首輪を繋いでわしが命じた人間を咬み殺せばよいのだからな」
「もし、飼い犬に噛まれるような事があれば?」
「ふふふ。あやつらは餌をくれる主をちゃんと心得ておる。狂犬とはいえそれくらいの節操は持ち合わせているという事だな。万一にもわしに噛みついて来た時には、骨一本肉片一つ残らぬまでこの世から消し去ってくれるわ」
法元は高笑いする。
雪乃は不快な気分であったが、法元にはそれと悟られないように無表情を保った。
「雪乃、忠誠心は金で買うものだ。昭夫と坂松も金でわしについているだけよ。わしに金がなかったらどうかのう。彼奴らは簡単に裏切るであろうな。ゆえに信頼など必要ない。金で雇い、金で言う事を聞かせる。裏切ったら切り捨てる。それだけだ。だが雪乃よ、お前だけは違う。お前はおそらく金に関係なくわしが信頼出来る数少ない部下だ」
「そこまで私を信頼して下さっているのですか」
「お前は金で動く人間でない事は初めて見た時にわかっておった。だから雇い入れたのだ。たまには金で動かない人間を使ってみるのも一興と思うてな。だがお前はわしの予想よりも優秀であった。わしの懐刀に相応しい。
だからこそ側近としてそばに置き、重要任務を任せているのだ。邪魔であれば昭夫と坂松を始末しても良い。第一目的は逃げた生駒舞美を確保する事だからな」
「かしこまりました」
金の執着心が凄まじい狭間法元が宗教や慈善事業に乗り出すなど、当初は誰も予想だにしなかった。
金にならない事には手を出さない人間が手を出して来た以上何か裏がある。
そう考えていた人間も当然いた。
だが、ハザマ真理教が設立してから三年が経つが今のところ怪しい雰囲気や報道は出ていない。
表向きはであるが。
教会に戻った法元は部下の一人である中昭夫を相手に話をしていた。
法元にしてみれば昭夫など愛情のかけらも無い人間だが、自分に同調してくれる話し相手は必要らしい。
「昭夫、わしは慈善事業をしているわけではない。わかるのう」
「もちろんでございます」
「学園のガキどもは金のなる木よ。彼奴らは表向き社会奉仕と称して高校にあたる学歴を取得させて企業に就業させる。企業から高額の賃金を請求し、彼奴らは最低賃金で働かせてその差額分はわしの懐に転がり込むという寸法よ。
世の中の役に立たないような貧乏人のガキどもを無料で学校に入学させて表向きは慈善団体として表彰される。その裏では金儲けの道具として使うというわけだ」
いわゆる教団のおこなう派遣業のようなものであった。
学園の生徒たちはそのままハザマ商会の派遣社員として登録され、他企業に低賃金で就業させられた。
無論、いつまでも教団の後ろ盾に頼らずに自力で企業に就業する者もいたが、その生徒たちはいずれもその後事故で命を落とす事になった。
「教祖様もなかなかお人が悪いですな」
「金を稼ぐ事の何が悪い? 役立たずどもを世の役に立つように仕立て上げてやるのだ。わしは崇められこそすれ、何も言われる筋合いはないわ」
狭間法元は声を高くして笑った。
「ところで草刈愛梨は来ておるか?」
「はい。おそらく礼拝堂で教祖様をお待ちしていると思われます」
「ああいう熱心な信者はそれなりに高待遇してやらぬといかんな。草刈愛梨はハザマ真理教の支部長に昇格だ」
法元の言葉に昭夫は疑問を投げる。
「支部長でございますか? 草刈はまだ十六歳のうえに信者になってから一ヶ月足らずですよ」
「それがどうした? 支部長になるならぬはわしへの忠誠心。年齢とキャリアなど関係ないわ」
「。。左様でございますか」
「お前とて入信してから三ヶ月でわしが側近にしてやっただろう。そういう事だ」
「よく心得ておきます」
詰まるところ教団内での出世は狭間法元への忠誠心をどれだけ表面に出すかという事である。
⭐︎⭐︎⭐︎
狭間法元を慕う女子生徒草刈愛梨。
「教祖様は絶対。教祖様に逆らう者には死を」
愛梨は毎週日曜日のミサには必ず顔を出していた。
愛梨は狭間学園の新入生であったが、とにかく変わり者で、まともな話しが通じない生徒として教員の間でも問題児として見られていた。
だが教祖のお気に入りの生徒だったため、誰も注意や口出しする者はいなかった。
その結果だんだん態度が居丈高になるいわゆる「モンスター生徒化」し、挨拶もろくに出来ず言葉遣いもなっていない人間となっていった。
「草刈愛梨の狭間法元に対する信仰は常軌を逸脱している。何が彼女をそうさせるのだろう」
施設の教員である陽神美夕はそう思うのであった。
「今日は不満をテーマにした講義だ」
「不満ですか。素敵です教祖様」
「愛梨の不満は何だ?」
「はい。学校で教祖様の教えをもっと聞きたいのです。通常授業など私にはくだらないものです。教祖様のお教えを説法する時間を授業の中に取り入れて頂きたいです」
「それはよい心掛けだ」
「クラスの奴らは馬鹿だらけです。私のような高貴な人間が本来なら行くべき場所ではないのですが、教祖様のお作りになられた学校なればこそ通っているのです」
「そう申すな。他の生徒たちもわしにとっては大事な「物」じゃ。あそこはあれで良い。お前にはこの真理教での講義という形で別途教えを受けさせてやっておるだろう」
「教祖様のご配慮、私の及ぶところではございませんでした。差し出がましい事を申し上げた事をお許し下さい」
愛梨はそう言って法元に頭を下げて謝罪した。
「わかれば良い」
法元はそう言って愛梨に笑みを浮かべた。
それは部下や生徒に対する愛情というよりも、従順な飼い犬に対する可愛がりのようであった。
「愛梨、この世の中は金こそが全てだ。それはわかるのう」
「もちろんです」
「金さえあれば何でも出来る。命など金でいくらでも作れるようになるし、愛など金で腐るほど買える。この世の全ての事は金で解決出来るのだ。わしはのう、人間の寿命も金で延ばせるようにするのが目的でハザマ真理教を作り上げたのだ」
「何という壮大な計画なのでしょう。まさに教祖様にしか成し得ない崇高な目標でございます」
「お前はわしの教え子の中でも特に忠誠心の高い一人だ。わしの下で思いのままにやるがいい」
「全ては教祖様の思し召すままに」
狭間法元に付く謎の女性、藤村雪乃がそう問いかける。
「横浜の教会に手配させておる。宗像凛が上手く始末してくれるであろう」
「宗像凛ですか」
「何だ? 雪乃は凛が信用出来ぬのか?」
「いえ、実力では申し分ないでしょうが性格が優しすぎます。もし傀の実態を知った時、凛が真理教を見限る事を危惧しているのです」
「なるほどのう」
「まあ、そんな時のためにあの役立たずの中昭夫と坂松透を雇われているのでしょうが」
「はっははは。わかっておるではないか。狂犬を二匹まとめて生駒舞美にぶつけて共倒れにさせるもよし。昭夫と坂松が生駒舞美にやられるも良し。わしにしてみればゲームを楽しんでおるだけだ。それにいざとなれば雪乃、お前がおる」
「ありがたきお言葉」
何の愛情もない、ただ人を咬み殺すだけの狂犬を飼っているという事か。
雪乃はそう思っていた。
それを見抜いたかのように法元は言葉を続ける。
「狂犬はしつける必要はない。首輪を繋いでわしが命じた人間を咬み殺せばよいのだからな」
「もし、飼い犬に噛まれるような事があれば?」
「ふふふ。あやつらは餌をくれる主をちゃんと心得ておる。狂犬とはいえそれくらいの節操は持ち合わせているという事だな。万一にもわしに噛みついて来た時には、骨一本肉片一つ残らぬまでこの世から消し去ってくれるわ」
法元は高笑いする。
雪乃は不快な気分であったが、法元にはそれと悟られないように無表情を保った。
「雪乃、忠誠心は金で買うものだ。昭夫と坂松も金でわしについているだけよ。わしに金がなかったらどうかのう。彼奴らは簡単に裏切るであろうな。ゆえに信頼など必要ない。金で雇い、金で言う事を聞かせる。裏切ったら切り捨てる。それだけだ。だが雪乃よ、お前だけは違う。お前はおそらく金に関係なくわしが信頼出来る数少ない部下だ」
「そこまで私を信頼して下さっているのですか」
「お前は金で動く人間でない事は初めて見た時にわかっておった。だから雇い入れたのだ。たまには金で動かない人間を使ってみるのも一興と思うてな。だがお前はわしの予想よりも優秀であった。わしの懐刀に相応しい。
だからこそ側近としてそばに置き、重要任務を任せているのだ。邪魔であれば昭夫と坂松を始末しても良い。第一目的は逃げた生駒舞美を確保する事だからな」
「かしこまりました」
金の執着心が凄まじい狭間法元が宗教や慈善事業に乗り出すなど、当初は誰も予想だにしなかった。
金にならない事には手を出さない人間が手を出して来た以上何か裏がある。
そう考えていた人間も当然いた。
だが、ハザマ真理教が設立してから三年が経つが今のところ怪しい雰囲気や報道は出ていない。
表向きはであるが。
教会に戻った法元は部下の一人である中昭夫を相手に話をしていた。
法元にしてみれば昭夫など愛情のかけらも無い人間だが、自分に同調してくれる話し相手は必要らしい。
「昭夫、わしは慈善事業をしているわけではない。わかるのう」
「もちろんでございます」
「学園のガキどもは金のなる木よ。彼奴らは表向き社会奉仕と称して高校にあたる学歴を取得させて企業に就業させる。企業から高額の賃金を請求し、彼奴らは最低賃金で働かせてその差額分はわしの懐に転がり込むという寸法よ。
世の中の役に立たないような貧乏人のガキどもを無料で学校に入学させて表向きは慈善団体として表彰される。その裏では金儲けの道具として使うというわけだ」
いわゆる教団のおこなう派遣業のようなものであった。
学園の生徒たちはそのままハザマ商会の派遣社員として登録され、他企業に低賃金で就業させられた。
無論、いつまでも教団の後ろ盾に頼らずに自力で企業に就業する者もいたが、その生徒たちはいずれもその後事故で命を落とす事になった。
「教祖様もなかなかお人が悪いですな」
「金を稼ぐ事の何が悪い? 役立たずどもを世の役に立つように仕立て上げてやるのだ。わしは崇められこそすれ、何も言われる筋合いはないわ」
狭間法元は声を高くして笑った。
「ところで草刈愛梨は来ておるか?」
「はい。おそらく礼拝堂で教祖様をお待ちしていると思われます」
「ああいう熱心な信者はそれなりに高待遇してやらぬといかんな。草刈愛梨はハザマ真理教の支部長に昇格だ」
法元の言葉に昭夫は疑問を投げる。
「支部長でございますか? 草刈はまだ十六歳のうえに信者になってから一ヶ月足らずですよ」
「それがどうした? 支部長になるならぬはわしへの忠誠心。年齢とキャリアなど関係ないわ」
「。。左様でございますか」
「お前とて入信してから三ヶ月でわしが側近にしてやっただろう。そういう事だ」
「よく心得ておきます」
詰まるところ教団内での出世は狭間法元への忠誠心をどれだけ表面に出すかという事である。
⭐︎⭐︎⭐︎
狭間法元を慕う女子生徒草刈愛梨。
「教祖様は絶対。教祖様に逆らう者には死を」
愛梨は毎週日曜日のミサには必ず顔を出していた。
愛梨は狭間学園の新入生であったが、とにかく変わり者で、まともな話しが通じない生徒として教員の間でも問題児として見られていた。
だが教祖のお気に入りの生徒だったため、誰も注意や口出しする者はいなかった。
その結果だんだん態度が居丈高になるいわゆる「モンスター生徒化」し、挨拶もろくに出来ず言葉遣いもなっていない人間となっていった。
「草刈愛梨の狭間法元に対する信仰は常軌を逸脱している。何が彼女をそうさせるのだろう」
施設の教員である陽神美夕はそう思うのであった。
「今日は不満をテーマにした講義だ」
「不満ですか。素敵です教祖様」
「愛梨の不満は何だ?」
「はい。学校で教祖様の教えをもっと聞きたいのです。通常授業など私にはくだらないものです。教祖様のお教えを説法する時間を授業の中に取り入れて頂きたいです」
「それはよい心掛けだ」
「クラスの奴らは馬鹿だらけです。私のような高貴な人間が本来なら行くべき場所ではないのですが、教祖様のお作りになられた学校なればこそ通っているのです」
「そう申すな。他の生徒たちもわしにとっては大事な「物」じゃ。あそこはあれで良い。お前にはこの真理教での講義という形で別途教えを受けさせてやっておるだろう」
「教祖様のご配慮、私の及ぶところではございませんでした。差し出がましい事を申し上げた事をお許し下さい」
愛梨はそう言って法元に頭を下げて謝罪した。
「わかれば良い」
法元はそう言って愛梨に笑みを浮かべた。
それは部下や生徒に対する愛情というよりも、従順な飼い犬に対する可愛がりのようであった。
「愛梨、この世の中は金こそが全てだ。それはわかるのう」
「もちろんです」
「金さえあれば何でも出来る。命など金でいくらでも作れるようになるし、愛など金で腐るほど買える。この世の全ての事は金で解決出来るのだ。わしはのう、人間の寿命も金で延ばせるようにするのが目的でハザマ真理教を作り上げたのだ」
「何という壮大な計画なのでしょう。まさに教祖様にしか成し得ない崇高な目標でございます」
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