霊媒巫女の奇妙な日常

葉月麗雄

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ハザマ真理教編

ハザマ真理教編 十一

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拳と拳がぶつかり合い、互いに手を取って力比べの形になるが、舞美と愛梨の戦いはほぼ互角であった。
その戦いの最中に突然愛梨の身体から幽体が分離したのだ。
これには美里も驚いた。

「これは。。怨念というよりは法元に対する狂信が生み出した邪念といったところね。本体だけでも手こずっている時に参ったな」

美里が聖剣神楽を構えると神楽は赤い光を解き放つ。

「私を見下した奴らに死を」

愛梨の幽体が舞美に襲い掛かる。
本体と手を合わせて互いに押し合っている時に突然霊体に飛びかかられては舞美も避けようがなく、蹴りの一撃を浴びてしまう。

「く。。」

舞美の体勢が崩れたところに本体である愛梨が腕をがっちり押さえたまま前蹴りを舞美の胸元に浴びせると、舞美の両腕が千切れてそのまま四、五メートルほど後ろに飛ばされた。

「きゃああ」

「舞美!」

「ははは。いいザマだな」

愛梨は千切れた舞美の両腕を無造作に放り捨てた。
あたりには血が飛び散っている。

「童子(どうこ)、治療をお願い」

舞美はハザマ幼虫を埋め込まれて傀となったので、幼虫「童子」の力で千切れた腕は再生出来る。

「舞美、その幽体とは私が戦う」

これを見た美里が聖剣神楽を持って愛梨の幽体に斬りかかる。

「どけえ!」

愛梨の幽体が美里に殴りかかり、美里は神楽で斬りつけるが拳に弾き飛ばされ、倒れてしまう。

「ぐ。。なんてパワーなの」

「お前如きが私に勝てるか。この無礼者が」

「無礼者って何様のつもりなのかしら?」

美里が立ち上がり、スカートについた埃をはらう仕草をする。
それは愛梨からすればまだ余裕というパフォーマンスにも見えたが、美里は内心どうしようか考えていたのだ。

思った通り、力は凄まじいものがあるが思慮に欠ける。
とりあえず頭に来るような事をやって冷静さを失わせる事が出来れば隙に乗じられるかも。
そう考えていた美里の思惑通り、愛梨はこの仕草が頭に来たようだ。

「お前ら如き虫ケラがこの私と教祖様に逆らおうなどと百万年早いわ」

「その教祖様とやらがどれだけ偉いのか知らないし、あなたが誰だか私には興味もない。襲ってくる者は撃退する。それだけよ」

「ならば死ね!」

「さっきから教祖様と無礼者と死ねしか言ってないんだけど、よほど語彙(ごい)に欠けるのかしら」

美里はわざと愛梨を挑発して冷静さを失わせるよう仕向ける。
元々が思慮に欠ける人物であったので、面白いように挑発に引っかかる。

「あああ? 誰に向かって口を聞いている」

「ついさっき言ったことをもう忘れているようね。あなたが誰かなんて興味もない。とりあえずわかったのはあなたみたいに頭が弱い勘違い人間が法元の好みだって事ね」

美里の指摘はある程度的を得ていた。
愛梨だけでなく、坂松や昭夫といった口先だけで思慮のない人物を手元に置きたがるのが法元であった。
こんな人物が半世紀でハザマ商会を大企業にのし上げられたのは最下層で働く社員たちの努力の賜物であった。
その最下層の社員たちが報われる事はなく、法元とその取り巻きたちだけが私服を肥やしたのだ。

「ブチ切れたあああ。てめえから真っ先に地獄へ送ってやる」

愛梨はするどく伸びた爪を使い、美里を攻撃する。
美里はそれを避けながら攻撃の隙を見計らっていた。
切れ味鋭い鋭利な刃物を振り回しているようなもので、少しでも斬られたら大出血は免れず、首を斬られたら一撃でお陀仏であろう。
美里も決して余裕などなかった。必死で避けているのだ。

それでも愛梨を挑発する姿勢は崩さない。
その時、両腕が再生した舞美が再び愛梨に向かい攻撃を仕掛ける。
舞美は愛梨の腕を取ると、お返しとばかりに蹴りを繰り出す。
これは同じ傀同士の攻撃だけあって効いたのか、愛梨は顔をゆがませた。

「さっきのお返しよ」

舞美は右腕を捻り上げると思い切り愛梨を蹴り飛ばす。
その脚力で今度は愛梨の右腕が引きちぎれた。

「よくもやってくれたな」

愛梨の千切れた腕は舞美と同様にすぐ再生した。

美里と舞美が戦っている時、背後から二人を呼ぶ声が聞こえた。

「美里さん、舞美」

戦っている二人に声をかけたのは宗像凛であった。

「凛。どうしてここに?」

「蓮香が嫌な予感がするから美里さんたちについていてくれって言ってね。来て良かったですよ」

「こっちも助かったわ。二人より三人の方がより確実に倒せるから」


「雑魚が三人に増えたところで変わるか」

「大丈夫よ、あなたも雑魚だから」

「はああ? ふざけんなあああ。私は高貴な人間。お前たちとは違うんだ」

「ああ、そうね。思い込みの高貴という点では私たちはあなたの足元にも及びませんものね」

美里の皮肉にこれ以上お前たちの会話は受け付けないと言わんばかりに愛梨は鋭い爪を出し攻撃を仕掛けて来る。
本体は舞美が、幽体は美里が対応しているが、このままではらちが明かない。
そう思っていた時、凛が美里に耳打ちする。

「美里さん、私に一つ考えがあるんですけど」

「何かいい案が浮かんだの?」

「美里さんの神楽と私の雷神剣、二人掛かりでやってみたらどうでしょう」

なるほど、と美里は思った。
お互い一人で聖剣を持って戦っていたため、二つの聖剣が合わさったらどれだけの力になるのかがわからないのだ。
美里と凛が互いに剣を構えると共鳴した二つの剣は赤い光と黄色い光を放ち始める。
舞美は二人の考えている事を理解し、愛梨の本体を押さえつける。

「剣がこれほど強い光を放つのは初めて見たわね」

「いけるかも知れません」

幽体が邪魔だと言わんばかりに舞美に襲い掛かろうとした時、美里と凛が左右から同時に幽体に斬りかかった。

「そんな攻撃にやられるか!」

愛梨の幽体は拳で美里と凛の聖剣を弾き飛ばそうとするが、二つの剣が合わさった力は愛梨の予想を遥かに超える威力であった。
左右から剣を振り下ろし、神楽の赤い光と雷神剣の黄色い光が交錯すると、愛梨の右腕はまるで生身の人間が溶岩に腕を入れたかの如く一瞬で溶解した。

「なにいい?」

美里と凛の聖剣はその勢いのまま愛梨の幽体をクロス状ち斬り裂いた。

「往生せよ」

「浄化されよ」

幽体が斬り裂かれて本体である愛梨も身体に激痛が走り悲鳴をあげた。

「ぎゃあああ」

そこへ舞美の拳が愛梨の眉間を捉えると、愛梨は五メートルほど後ろに吹っ飛んでいった。
ハザマ幼虫が寄生するのは脳の中である。
その脳に衝撃が加わると、ハザマ幼虫にもダメージが加わり、愛梨は脳震盪を起こして動けなくなった。

「やった!」

美里の神楽と凛の雷神剣。
どちから一つだけでは倒せなかったであろう愛梨の幽体を二つの聖剣の合わさった力で見事に斬り倒した。

「うう。。私は教祖様の一番弟子」

動けなくなった愛梨を美里たちが取り囲む。

「こいつはどうする?」

凛の問いに美里が答える。

「助ける価値があるかは微妙だけど、殺すわけにもいかないでしょう。とりあえず幼虫だけは取り出しておこうか。後々面倒だからね」

美里にそう言われて舞美が蓮香に連絡を取り、十分ほどして蓮香が到着する。
蓮香が愛梨の身体からハザマ幼虫を取り出し、愛梨は元の身体に戻った。

「こんな。。こんなはずじゃ。教祖様に申し訳が立たない」

「そこまで法元に義理だてする必要があるとも思えないけど。狂信的な法元信者の考えることは私たちには理解し難いものがあるわね」

「お前たちに教祖様の偉大さがわかるものか」

「ええ。知りたくも無いし興味もない。逆に知ったら怒りが込み上げてくるかも知れないから知らない方が身のためだと思っているわ」

「教祖様を悪く言うな」

「事実を言っているだけよ。それが悪く聞こえるのなら、法元とはそういう人物なんでしょう」

美里の言葉にそれ以上答える力が残っていなかったのか、愛梨はその場で気を失った。

「一つ片付きましたね。あとは雪乃さんが無事に幼虫のデータを破壊してくれていれば」

「残るはラスボスだけという事ね」

幼虫を全て始末し、データを破壊しまえばハザマ幼虫も傀もこれ以上生産出来ない。
残るは狭間法元だけだ。
美里たちは雪乃の無事を祈り、報告と待つ事とした。
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