霊媒巫女の奇妙な日常

葉月麗雄

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ハザマ真理教編

ハザマ真理教編 十二

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美里たちが草刈愛梨と戦っている時、藤村雪乃も動き出していた。

雪乃は法元がハザマ幼虫を使い自らの肉体を若返らせた事を防げなかったのを悔やんでいた。

「もう少し早く研究所へ侵入する認証カードが手に入れられていれば、法元を怪物にするのを防げていた」

だが、いくら悔やんだところでもう過ぎた時間は戻って来ない。
今出来る事は、これ以上幼虫の犠牲者を増やさないために幼虫とそのデータを消去する事だ。

雪乃は幼虫の研究施設に潜入を試みる。
研究施設は千葉県某市に建設されたが、表向きはハザマ商会の商品保管倉庫であった。
しかし、その実態は人間を怪物に変える幼虫の研究施設。

「止まれ! 何者。。」

入り口のガードマンはそこまで言ったところで前から歩いてくる女性が誰だかわかった。

「これは、雪乃様。今日はどのようなご用件で?」

「教祖様から極秘の依頼を受けている。内容は極秘なので言えぬが、認証カードはこの通り」

雪乃が認証カードを見せるとガードマンは何も疑う事なく中へと通した。

「坂松の認証カード。これを手に入れるまでに時間がかかってしまったな」

この研究施設の認証カードはIDに反応して各入り口のドアが開くシステムになっているが、カードとそれを持っている人物が同一かまではチェック出来ない。
人物に関しては入り口のガードマンや各地に設置された監視カメラからの映像でチェックしているが、あくまでも外部からの侵入者に対してもので、教祖狭間法元の側近である藤村雪乃であれば誰にも怪しまれる事なく入れてしまうのだ。


「雪乃様、この研究施設までお越しになられるとは何かあったのですか?」

「教祖様から極秘の命令を受けている。ハザマ幼虫に関するデータが保管してあるUSBを持って来いとの事だ。準備してくれ」

「わかりました。しばらくお待ち下さい」

「バックアップデータはちゃんと保存してあるかも確認して来いと言われたが、大丈夫だろうな?」

「無論でございます。今お見せ致します」

研究員たちがバックアップデータの保存されたUSBと記録用紙を持ってくると、雪乃はそれを手に取り確認する。

「雪乃様、法元様はこれをどうしろと」

研究員の言葉に雪乃は目を光らせる。

「始末しろとのお達しだ」

言うや否や剣を抜き、目の前にいた二人の研究員を峰打ちで打ち倒す。

「ひ。。雪乃様、これはどういう事でございますか」

「見ての通り、ハザマ幼虫に関するデータを全て始末しているのさ。これは私が全て貰い受ける。こんな物はこの世にあってはならないからな」

「そのような事をすれば法元様にどのようなお咎めを受けるか」

「元より法元なんかに服従していない。最初からこれが目的で真理教に潜入したんだ。お前たちに恨みはないけど、真理教の研究員である以上、自業自得と思うんだな」

「裏切り者。。」

別の研究員がそう叫ぼうとした時には雪乃の剣が頭を打ちつけていた。
殺すわけにはいかないので全員峰打ちだ。
研究員たちは一分とかからない時間で全員雪乃に倒された。

「さて、このUSBデータは全て破棄させてもらうよ。こんな物はこの世にあってはならないんだ」

雪乃はバックアップも含めたハザマ幼虫に関する情報が入ったUSBを刀で全て粉々に打ち壊した。

「これでよし。あとはこの研究員たちを投獄すればハザマ幼虫は二度と生まれる事はない」

雪乃は携帯を取り出して実家である藤村家に電話をする。
警察と藤村家直轄の警備会社を手配するためだ。
応対した執事が「かしこまりました。すぐに手配致します」と返事をすると、雪乃は携帯を切り研究所を後にしようと出口に向かう。

だが、その途中で一つの研究室の前で立ち止まった。
なぜかわからないが、雪乃はこの部屋の中に異質なものを感じ取っていた。

「何だろう。。この胸騒ぎというかこの雰囲気は。この部屋から感じる」


認証カードでドアを開くと、そこは異様な空間であった。
まるで水族館の水槽のようなものがいくつも並べられていてその中には何人もの、おそらく幼虫の実験台として傀にされたであろう人たちが入れられていた。

「これは。。」

こんなものが研究所内に作られていたなど、法元の側近であった雪乃ですら知らされていない。
ここで水槽に入れられていたのは実験に失敗した傀と宗像凛に倒された傀たちであった。
凛はハザマ幼虫の存在を知らなかったため、傀を倒すだけで後の始末はすべて真理教の教団員に任せていた。

倒された傀は教団によってこの研究施設に送られ、再生出来るかの実験台とされていたのだ。
また傀にならずにハザマ幼虫の侵食に耐えきれずに発狂したり自制出来なくなった者たちもここに入れられていた。

「培養液のようなものに入れられているのか。。」

雪乃は何気なく見た一人の少女。
おそらくはハザマ学園の生徒であろう。
歳は見た目十五、六歳と言ったところか。
そんな事を考えていた時、突然水槽の中の女生徒がカッと目を開き、雪乃と目が合った。

「オ。。マ。。エ。。」

雪乃はその瞬間これはまずいと水槽から離れた。
女生徒は雪乃を確認すると分厚いアクリル板で出来た水槽に拳打を浴びせる。

「ばかな。数トンもの水圧にも耐えられる分厚いアクリル板を拳で打ち破るなど不可能だ」

雪乃はそう言ったが、次の一撃が加えられるとアクリル板にヒビが入り、水圧で一気に水槽が割れて大量の培養液が溢れ出る。
それは雪乃の踵まで浸かるほどの量であった。

「傀は一度死んでも蘇る能力があるのか。あるいはまだ死んでいなかったのか」

「ヨクモ。。ワタシヲコンナメニ。。」

おそらくはハザマ学園の生徒と思われる女生徒が怨嗟の念を雪乃にぶつけてきた。
それとほぼ同時に猛烈な勢いで突進してハンマーのような拳打を雪乃に放つ。

「ちっ!」

雪乃は軽く舌打ちをしてその拳をかわすと同時に刀を抜き、女生徒の首に峰打ちの一撃を喰らわす。
女生徒は自分の突っ込んだ勢いと雪乃の剣の威力で五メートルほど飛ばされて壁に激突した。

これで動かなくなってくれればいいが、そんな生易しい相手じゃないだろうな。
壁に亀裂が入るほどの勢いであったが、女生徒の傀は何事もなかったかのように立ち上がり、再び雪乃を睨みつける。

「ワタシヲ。。モトノスガタニモドセ。。」

「そうしてやりたいが、その前に君が大人しくなってくれない事にはどうにも出来ないな」

「モドセエエエエ!」

女生徒は雪乃を敵だと認識して襲いかかって来る。
速くて重い攻撃は剣の達人である雪乃でも避けるのは容易ではなかった。
何しろアクリルを打ち砕く破壊力の拳である。

雪乃はやむを得ず刀を峰打ちから刃の方へ持ち替えた。
女生徒の右の拳打を避けると雪乃は剣を振り下ろし、右腕を斬り落とす。

「USBからの情報ではハザマ幼虫の力で斬り落とした腕や足はすぐに再生する。だがこちらの体制を立て直すための時間稼ぎくらいにはなるだろう」

雪乃の推測通り、斬り落とされた腕は約十秒ほどで再生した。

「再生まで十秒といったところか。問題はここからだな」

いくら体を斬っても再生してしまうとなると倒すには幼虫がいる脳を直接攻撃するしかない。
雪乃は宗像凛が傀を倒すのに頭を攻撃しているという情報も得ていた。
だが、出来れば元の姿に戻してあげたい。
雪乃はどうしようか考えていた。

「ウアアアア」

女生徒は怒りから幽体が離脱し、幽体が雪乃に襲いかかる。

「考えている暇はないか」

雪乃が中段に構えると霧氷剣の青い光が放たれる。
それと同時に向かって来た幽体に目にも止まらぬ連撃を浴びせた。
雪乃は美里や凛と違い、剣の達人である。
同じ能力を持ち、同じ聖剣を使っていても剣速と威力が違った。

幽体は瞬時に一文字斬り、袈裟斬り、真っ向斬りという三方向からの連撃で斬り刻まれるとまるでフェードアウトするように消えていった。
雪乃はさらに一歩踏み込んで女生徒の懐に入り込むと剣の柄で眉間を打ち付ける。

「ガ。。」

頭を攻撃されて女生徒が怯むと雪乃は咄嗟に髪を結いで眼鏡をかけ、陽神美夕の姿になった。
学園の生徒なら美夕の姿を見て落ち着いてくれるかも知れないと考えたからだ。

「元の姿に戻してあげるから大人しくして」

「せ。。んせい。。」

陽神美夕の姿になった雪乃を見て女生徒は安心したのか、ようやく大人しくなった。
それと同時に傀から元の姿に戻った。

「あなたは黒澤真美。。」

雪乃はその女生徒に見覚えがあった。

「先生。。助けて。。」

「もう大丈夫。あなたは私が必ず助ける」

雪乃は真美の体を抱きしめると真美はそのまま気を失ってしまう。

「こんな目に遭う子たちをもう作りたくない。狭間法元は必ず私が倒す」

その後、蓮香を呼び出して真美の体から幼虫が取り出された。
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