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聖菜の修行編
最終試験
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翌日。
いつもの藤村家の道場ではなく、真美に指定されて聖菜が向かった先は南町の外れにある森林地帯であった。
昼間は森林浴も出来る散歩道として市民に人気のある場所だが、夜になると僅かな電灯に照らされるだけの闇世界になる。
夜道に女性が一人で通るにはかなり怖い道でもある。
夜になり、人がいなくなるのを待ってから真美が聖菜に声をかける。
「最終試験よ。ここにいる霊体を見事に仕留める事が出来れば合格。私の修行は終わりとする」
制限時間は夜が明けるまで。
それまでに霊体を倒さなければならない。
「持っている式神は自由に使っていいわ。ただし那由多はここで見学。あなたは助言しそうだからね」
「別に助言なんてしないけど。。わかったよ」
那由多は渋々承知する。
「さあ、行ってきなさい」
真美の掛け声を合図に聖菜は森の中を一歩ずつ前に進んで行った。
遊歩道のわずかな点灯以外、あたりは完全に暗闇に包まれている。
昼間は散歩する人や近道でここを往来する人が数多くいるが、夜になると気味が悪いだけでなく何かあった時に叫んでも助けがくる可能性がほぼないだけにほとんど人が通らない
聖菜は早く最終試験を終わらせたいという気持ちのせいか、無意識のうちに速歩きになっていた。
いつもは横についている那由多がいない事も不安な気持ちを増大させる。
暗闇は別に怖くはないが、いつどこで突然霊体が襲いかかって来るかわからないので常に身構えているため、まだ五分も歩いていないのに疲労感を感じていた。
さらに少し奥へと進んだいくと何か光るものが見えてきた。
灯りにしては変だと思い、近づいてみると木の枝から人魂のようなものが一つ、二つと現れては地面にポトリと落ちていく。
「これは? ここで死んだ人たちの霊体?」
その頃、森の外で待っている那由多は真美と会話を交わしていた。
「君も意地が悪いね。あれ準備したものなんかじゃないよね」
「ご名答。ここは以前から自殺者が絶えなくて宗像凛さんが除霊を依頼されていたんだけど、それを聖菜さんの修行用にするからと私に任せてもらったの。もちろん危険と思ったら助けに行くわ。でもこれくらい突破出来ないようでは狭間法元にはとても太刀打ち出来ないでしょう」
「なるほど」
最終試験は真美が準備したのではなく、元から自殺の名所と言われていた場所のお祓いであったのだ。
しかし真美が気をつけるよう忠告したという事はそれだけじゃないのであろう。
おそらくは何か凶悪な霊体が潜んでいる。
一方の聖菜は人魂が木から落ちるという現象を確認していた。
「これはおそらくここで死んだ人たちの骨が埋まってるのね。その人たちの無念や悲しさ、悔しさといったものを木が吸い取ってしまい、人魂が枝から落ちるという現象になっている」
この人魂は無念の死を遂げた人たちの嘆き。
このままやり過ごしても特に悪影響はないと判断し、聖菜は先へと進む事にする。
しくしく。
しばらく歩いていると鳴き声のような音が聴こえてくる。
ううう。
「何の音? 泣き声のように聴こえるけど」
聖菜は慎重に一歩一歩前に進んでいく。
いくつもの霊気を感じていてどれがこの泣き声の主なのかなかなか掴めない。
ようやく森の中腹まできたところで、霊気が一段と強く感じた。
「ここね。さっきから聞こえて来る泣き声の主」
そこには高校生くらいと思われる女の子の霊が立っていた。
ううう。。
「どうして泣いているの?」
聖菜の問いに女の子はやっと気がついてくれる人が来たとようやく涙を止める。
「あなたには私が見えるのですね」
「私は霊媒師だからあなたの姿も声もわかるわ」
「私は玲奈と言います。実は。。」
「話さなくてもいい。あなたの生前の記憶を辿らせてもらうから」
「わかりました」
聖菜は玲奈と手を繋ぐと念を感じ取って彼女の記憶を辿っていく。
「私は神町玲奈(かんまちれいな)」
南町の高校学校に通う十五歳。
あの日は、たまたま友達と約束があって夜遅くにこの木漏れ日の森まできた。
回り道もあったけど、この森を通り抜ければ十分で帰れるので暗くて怖かったけど、急いでかけ抜ければいいやと小走りした。
森の中腹に差し掛かったところで、目の前で一人の男の人がうずくまっていて、どうしたんだろう?と声をかけようと近づいたらいきなり立ち上がった。
手にはかなり大きなナイフ。
明らかにおかしい挙動。
男は私に向かって襲い掛かってきた。
(逃げなきゃ)
そう頭では思っていたけど、身体が動かなかった。
私は男の持っていた刃渡り二十センチほどのナイフで胸をひと突きされた。
「あ。。」
一瞬だった。
傷はおそらく心臓にまで達したと思う。
男は私を刺すとにやりと嫌な笑いを浮かべた。
私の視界には地面に流れる自分の血と横になった景色が映っていた。
『私。。死ぬんだ。。』
そう思いながら徐々に意識がなくなっていった。
こうして私は十五歳の短い生涯を終えた」
聖菜は記憶を見てショックを隠しきれない。
怒りが込み上げて来るのを何とか堪えていた。
「玲奈さんを殺したのは誰?」
「わからない。でも男だったのは間違いない。お願いします。そいつをここに連れて来て下さい。じゃないと私は成仏出来ずにここで地縛霊になってしまう」
「わかったわ。もうしばらく辛抱して。必ず始末して来るから」
聖菜は霊力を集中させる。
さっきから感じていた玲奈の悲しげな気の他にもう一つ邪心に満ちた霊気の存在。
それはここから二百メートルほど離れたところにいた。
おそらく玲奈を殺害したと思われる男の霊がそこにうずくまっていた。
聖菜は冷ややかな目で男の霊を睨みつける。
「なるほど。ここで死んだ地縛霊というわけね。あんたがなぜここで死んだのかには興味がない。何であの子を殺したの?」
まったく何の反応も示さず、冷徹な目で睨みつける聖菜に男の霊はこいつには泣き落としは通じぬと見て本性をあらわした。
「俺がここから逃走するのに金が必要だったからだ。金をどうしようか考えていた時に鴨がネギ背負って来たと言うわけだ」
「そんな理由であの子を手に掛けたの」
聖菜は直感した。
こいつが最終試験で浄化すべき霊体だと。
「お前も道連れにしてやる」
「地獄であの子に懺悔しろ」
聖菜が霊力を集中させると神楽が赤い光を放つ。
邪念に満ちた男の霊は半分白骨化し、腐肉が骨や顔に残っている醜い姿を晒していた。
だが、それだけではなく聖菜には男の背後に大蛇の霊が見えていた。
「厄介ね。低級な動物霊にまで取り憑かれている」
男の霊は霊力で作られた包丁を手に持ち、聖菜に斬りかかって来るが、真美に比べたらスピードも遅く威力も弱い。
これまでの真美との修行の成果は確実に出ていた。
この男は七年前に南町で起きた連続殺人の犯人であった。
生前は粗暴で言葉使いも悪く、ろくに職にもつかずにその日暮らしの生活をしていた。
己の身から出た錆であったのだが、それを世の中のせいだと責任転嫁し、無差別に通り魔殺人を行い、八人もの何の関係もない人たちを包丁で次々と刺していった。
警察に追われた男は身を隠すために深夜この森の中に入り、身を潜めていたところに運悪く玲奈が近道だという事でここを通った。
そして男は逃走資金を調達するために包丁で玲奈を刺した。
しかし、思わぬ事故に遭う。
暗闇で足元が見えなかったところで岩に足が引っ掛かり、転倒したところに木の枝があったため、枝が右目に突き刺さった。
激痛に叫び、転げ回ったが病院に行く訳にも行かず、刺さった枝を無理矢理引き抜いたので大出血を起こし、そのまま失血死した。
遺体は玲奈と共に翌朝散歩中の通行人に発見されたが、どちらも地縛霊としてこの場に残る事となったのだ。
そうしているうちに男の背後から大蛇の霊が聖菜に攻撃を仕掛けて来た。
いや、大蛇に見えただけでよく見ると小さな蛇の霊がいくつも折り重なり一つの巨大な蛇の姿となっていた。
「動物霊なら神楽を使わなくても結界で十分に防げる。ここはあの男を抑えなければ」
聖菜は襲い掛かる蛇の霊を一切無視して男に向かって走り出す。
聖菜の周りには加護の結界が張られていてこの程度の低級霊なら近寄ることは出来ないし、結界に当たれば浄化されて消えていく。
蛇の霊体は聖菜の結果に当たって次々と霧のように霧散していった。
すると男の霊は闇の中に姿を隠すように消えていった。
「姿が消えた。逃げたの? いや、地縛霊ならこの場から他の場所には行けない。闇に紛れて攻撃してくる可能性がある」
この暗闇なら夜叉が適任。
聖菜は式札を取り出して術を唱える。
「涅槃(ねはん)より甦れ夜叉。我が命に従い霊体を撃ち倒せ」
聖菜の術により式神夜叉が現れる。
「夜叉見参」
「夜叉、この暗闇のどこかに潜んでいる霊体を見つけ出して」
「かしこまりました」
暗闇での攻撃を得意とする夜叉にとって闇に紛れている霊を見つけ出すなど造作もない事だった。
「ご主人様、見つけました」
夜叉がそう言うなり、男の隠れていた場所を指で指し示すと聖菜は神楽に霊力を込める。
すると神楽の赤い光が暗闇から男の姿をくっきりと映し出した。
「暗闇に紛れて攻撃しようとしても無駄よ」
男は再び包丁で斬りつけてくるが、鍛えられた聖菜の目には単調で緩慢な動きで容易に避ける事が出来た。
この前、戦って勝てなかった女子高生の霊体よりも確かに強いとは思うが、今の聖菜にとってはそれほどでもないと余裕すら感じられる。
真美との三ヶ月に及ぶ修行は聖菜の持っている力を飛躍的に向上させていた。
「そろそろケリをつけさせてもらう」
普通なら神楽で斬り倒して浄化させるところだが、この男を彼女の元に連れて行かなくてはならない。
聖菜は修行で身につけた新たな技を発動させる。
「格子糸」
実戦で初めて格子糸を使った。
真美との修行で今まで使えなかった技が使えるようになっていたからだ。
格子糸に絡まれた男の霊体は身動きが取れなくなった。
「何だ? この糸は。動けねえ。。」
「格子糸は霊を絡めとる術。あんたに逃げる術はない」
聖菜は格子糸を丸めて袋状にし、男の霊を地縛していた木から引き剥がすと、玲奈のいる場所まで連れて行った。
いつもの藤村家の道場ではなく、真美に指定されて聖菜が向かった先は南町の外れにある森林地帯であった。
昼間は森林浴も出来る散歩道として市民に人気のある場所だが、夜になると僅かな電灯に照らされるだけの闇世界になる。
夜道に女性が一人で通るにはかなり怖い道でもある。
夜になり、人がいなくなるのを待ってから真美が聖菜に声をかける。
「最終試験よ。ここにいる霊体を見事に仕留める事が出来れば合格。私の修行は終わりとする」
制限時間は夜が明けるまで。
それまでに霊体を倒さなければならない。
「持っている式神は自由に使っていいわ。ただし那由多はここで見学。あなたは助言しそうだからね」
「別に助言なんてしないけど。。わかったよ」
那由多は渋々承知する。
「さあ、行ってきなさい」
真美の掛け声を合図に聖菜は森の中を一歩ずつ前に進んで行った。
遊歩道のわずかな点灯以外、あたりは完全に暗闇に包まれている。
昼間は散歩する人や近道でここを往来する人が数多くいるが、夜になると気味が悪いだけでなく何かあった時に叫んでも助けがくる可能性がほぼないだけにほとんど人が通らない
聖菜は早く最終試験を終わらせたいという気持ちのせいか、無意識のうちに速歩きになっていた。
いつもは横についている那由多がいない事も不安な気持ちを増大させる。
暗闇は別に怖くはないが、いつどこで突然霊体が襲いかかって来るかわからないので常に身構えているため、まだ五分も歩いていないのに疲労感を感じていた。
さらに少し奥へと進んだいくと何か光るものが見えてきた。
灯りにしては変だと思い、近づいてみると木の枝から人魂のようなものが一つ、二つと現れては地面にポトリと落ちていく。
「これは? ここで死んだ人たちの霊体?」
その頃、森の外で待っている那由多は真美と会話を交わしていた。
「君も意地が悪いね。あれ準備したものなんかじゃないよね」
「ご名答。ここは以前から自殺者が絶えなくて宗像凛さんが除霊を依頼されていたんだけど、それを聖菜さんの修行用にするからと私に任せてもらったの。もちろん危険と思ったら助けに行くわ。でもこれくらい突破出来ないようでは狭間法元にはとても太刀打ち出来ないでしょう」
「なるほど」
最終試験は真美が準備したのではなく、元から自殺の名所と言われていた場所のお祓いであったのだ。
しかし真美が気をつけるよう忠告したという事はそれだけじゃないのであろう。
おそらくは何か凶悪な霊体が潜んでいる。
一方の聖菜は人魂が木から落ちるという現象を確認していた。
「これはおそらくここで死んだ人たちの骨が埋まってるのね。その人たちの無念や悲しさ、悔しさといったものを木が吸い取ってしまい、人魂が枝から落ちるという現象になっている」
この人魂は無念の死を遂げた人たちの嘆き。
このままやり過ごしても特に悪影響はないと判断し、聖菜は先へと進む事にする。
しくしく。
しばらく歩いていると鳴き声のような音が聴こえてくる。
ううう。
「何の音? 泣き声のように聴こえるけど」
聖菜は慎重に一歩一歩前に進んでいく。
いくつもの霊気を感じていてどれがこの泣き声の主なのかなかなか掴めない。
ようやく森の中腹まできたところで、霊気が一段と強く感じた。
「ここね。さっきから聞こえて来る泣き声の主」
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ううう。。
「どうして泣いているの?」
聖菜の問いに女の子はやっと気がついてくれる人が来たとようやく涙を止める。
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「私は霊媒師だからあなたの姿も声もわかるわ」
「私は玲奈と言います。実は。。」
「話さなくてもいい。あなたの生前の記憶を辿らせてもらうから」
「わかりました」
聖菜は玲奈と手を繋ぐと念を感じ取って彼女の記憶を辿っていく。
「私は神町玲奈(かんまちれいな)」
南町の高校学校に通う十五歳。
あの日は、たまたま友達と約束があって夜遅くにこの木漏れ日の森まできた。
回り道もあったけど、この森を通り抜ければ十分で帰れるので暗くて怖かったけど、急いでかけ抜ければいいやと小走りした。
森の中腹に差し掛かったところで、目の前で一人の男の人がうずくまっていて、どうしたんだろう?と声をかけようと近づいたらいきなり立ち上がった。
手にはかなり大きなナイフ。
明らかにおかしい挙動。
男は私に向かって襲い掛かってきた。
(逃げなきゃ)
そう頭では思っていたけど、身体が動かなかった。
私は男の持っていた刃渡り二十センチほどのナイフで胸をひと突きされた。
「あ。。」
一瞬だった。
傷はおそらく心臓にまで達したと思う。
男は私を刺すとにやりと嫌な笑いを浮かべた。
私の視界には地面に流れる自分の血と横になった景色が映っていた。
『私。。死ぬんだ。。』
そう思いながら徐々に意識がなくなっていった。
こうして私は十五歳の短い生涯を終えた」
聖菜は記憶を見てショックを隠しきれない。
怒りが込み上げて来るのを何とか堪えていた。
「玲奈さんを殺したのは誰?」
「わからない。でも男だったのは間違いない。お願いします。そいつをここに連れて来て下さい。じゃないと私は成仏出来ずにここで地縛霊になってしまう」
「わかったわ。もうしばらく辛抱して。必ず始末して来るから」
聖菜は霊力を集中させる。
さっきから感じていた玲奈の悲しげな気の他にもう一つ邪心に満ちた霊気の存在。
それはここから二百メートルほど離れたところにいた。
おそらく玲奈を殺害したと思われる男の霊がそこにうずくまっていた。
聖菜は冷ややかな目で男の霊を睨みつける。
「なるほど。ここで死んだ地縛霊というわけね。あんたがなぜここで死んだのかには興味がない。何であの子を殺したの?」
まったく何の反応も示さず、冷徹な目で睨みつける聖菜に男の霊はこいつには泣き落としは通じぬと見て本性をあらわした。
「俺がここから逃走するのに金が必要だったからだ。金をどうしようか考えていた時に鴨がネギ背負って来たと言うわけだ」
「そんな理由であの子を手に掛けたの」
聖菜は直感した。
こいつが最終試験で浄化すべき霊体だと。
「お前も道連れにしてやる」
「地獄であの子に懺悔しろ」
聖菜が霊力を集中させると神楽が赤い光を放つ。
邪念に満ちた男の霊は半分白骨化し、腐肉が骨や顔に残っている醜い姿を晒していた。
だが、それだけではなく聖菜には男の背後に大蛇の霊が見えていた。
「厄介ね。低級な動物霊にまで取り憑かれている」
男の霊は霊力で作られた包丁を手に持ち、聖菜に斬りかかって来るが、真美に比べたらスピードも遅く威力も弱い。
これまでの真美との修行の成果は確実に出ていた。
この男は七年前に南町で起きた連続殺人の犯人であった。
生前は粗暴で言葉使いも悪く、ろくに職にもつかずにその日暮らしの生活をしていた。
己の身から出た錆であったのだが、それを世の中のせいだと責任転嫁し、無差別に通り魔殺人を行い、八人もの何の関係もない人たちを包丁で次々と刺していった。
警察に追われた男は身を隠すために深夜この森の中に入り、身を潜めていたところに運悪く玲奈が近道だという事でここを通った。
そして男は逃走資金を調達するために包丁で玲奈を刺した。
しかし、思わぬ事故に遭う。
暗闇で足元が見えなかったところで岩に足が引っ掛かり、転倒したところに木の枝があったため、枝が右目に突き刺さった。
激痛に叫び、転げ回ったが病院に行く訳にも行かず、刺さった枝を無理矢理引き抜いたので大出血を起こし、そのまま失血死した。
遺体は玲奈と共に翌朝散歩中の通行人に発見されたが、どちらも地縛霊としてこの場に残る事となったのだ。
そうしているうちに男の背後から大蛇の霊が聖菜に攻撃を仕掛けて来た。
いや、大蛇に見えただけでよく見ると小さな蛇の霊がいくつも折り重なり一つの巨大な蛇の姿となっていた。
「動物霊なら神楽を使わなくても結界で十分に防げる。ここはあの男を抑えなければ」
聖菜は襲い掛かる蛇の霊を一切無視して男に向かって走り出す。
聖菜の周りには加護の結界が張られていてこの程度の低級霊なら近寄ることは出来ないし、結界に当たれば浄化されて消えていく。
蛇の霊体は聖菜の結果に当たって次々と霧のように霧散していった。
すると男の霊は闇の中に姿を隠すように消えていった。
「姿が消えた。逃げたの? いや、地縛霊ならこの場から他の場所には行けない。闇に紛れて攻撃してくる可能性がある」
この暗闇なら夜叉が適任。
聖菜は式札を取り出して術を唱える。
「涅槃(ねはん)より甦れ夜叉。我が命に従い霊体を撃ち倒せ」
聖菜の術により式神夜叉が現れる。
「夜叉見参」
「夜叉、この暗闇のどこかに潜んでいる霊体を見つけ出して」
「かしこまりました」
暗闇での攻撃を得意とする夜叉にとって闇に紛れている霊を見つけ出すなど造作もない事だった。
「ご主人様、見つけました」
夜叉がそう言うなり、男の隠れていた場所を指で指し示すと聖菜は神楽に霊力を込める。
すると神楽の赤い光が暗闇から男の姿をくっきりと映し出した。
「暗闇に紛れて攻撃しようとしても無駄よ」
男は再び包丁で斬りつけてくるが、鍛えられた聖菜の目には単調で緩慢な動きで容易に避ける事が出来た。
この前、戦って勝てなかった女子高生の霊体よりも確かに強いとは思うが、今の聖菜にとってはそれほどでもないと余裕すら感じられる。
真美との三ヶ月に及ぶ修行は聖菜の持っている力を飛躍的に向上させていた。
「そろそろケリをつけさせてもらう」
普通なら神楽で斬り倒して浄化させるところだが、この男を彼女の元に連れて行かなくてはならない。
聖菜は修行で身につけた新たな技を発動させる。
「格子糸」
実戦で初めて格子糸を使った。
真美との修行で今まで使えなかった技が使えるようになっていたからだ。
格子糸に絡まれた男の霊体は身動きが取れなくなった。
「何だ? この糸は。動けねえ。。」
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