58 / 67
最終章 最後の戦い
神宮寺稀vs佐々木志穂 一
しおりを挟む
ハザマ真理教幹部。霊媒巫女志穂。
彼女の正体は神宮寺稀こと佐々木和花の父親である佐々木賢治の娘であった。
志穂は賢治の長女として生まれて金持ちの子供として何不自由なく育った。
欲しいものは何でも手に入ったし部屋には高級品のブランドバッグやペンダントが散乱しているほどであった。
しかし賢治が原因不明の自殺をしてから人生が一変する。
賢治が母以外に女を作っていた事が発覚し、母は嫌気がさして家を出て行ってしまった。
そして相手の女からの慰謝料の請求で家を始めとして家族の金目のものはみんな差し押さえられ、着の身着のままの状態でほぼ無一文で家から追い出されてしまう。
それまで贅沢三昧な暮らしをしてきた志穂にとって地獄の日々が始まった。
普段から金に物を言わせる高飛車な性格だったのも災いして、助けてくれる友人もいなかった。
弟は施設に預けられて何とかなったものの、志穂は自分の生活すらままならず、未成年であったがホステスとして雇ってもらい何とか食い繋いでいた。
志穂はどうしてこんな事になってしまったのか、父親を恨んでいた。
自殺したあとに他の女に手をつけていたのも発覚して母も自分たちを捨てて逃げて行った。
浮気の発覚を恐れて自殺したのならばどうしようもない男だと父親と同じ血が流れている事に憎悪すら感じた。
「あんたの父親はあんたの母と結婚する前にも他の女がいたんだよ。あちこちで女に手を出す節操のない人間だったわ」
その言葉に志穂は怒りが込み上げる。
言った人物にではない。自分の父親に対してだ。
「電車に飛び込んで自殺なんてするかな、自殺するほどの細い神経じゃないけと思っていたけど。まさか誰かに呪われた? そんなわけないか」
志穂は父親の事をとにかくお金持ちで贅沢をさせてくれる人という目で見ていた。
毎年のように海外旅行に連れて行ってくれたし、宿泊するのはいつも五つ星以上の高級ホテル。
外食はミシュランに掲載されているような高級店で美味しいものが食べられたし、誕生日ともなれば数十万円はするであろう高価なバッグや宝石をプレゼントしてくれた。
良い悪いで言えば良い父親だったし、大好きとまではいかなくても好きと言って良かった。
そんな父親が自殺するとは考え難かったのだ。
たとえ浮気をしていたとしても。
そんなある日、志穂は勤めていたキャバクラでホステスたちの話を立ち聞きしてしまった。
盗み聞きするつもりではなかったが、偶然にも聞こえてしまったのだ。
「まったく嫌な客なんだよ。人の足触ってにやにやしてさ。お触りは禁止だって言っているのに、ケチケチするな減るもんじゃあるまいしとか良いやがって。減るんだよ、私の忍耐と精神力が」
「嫌な客をこの世から排除する便利な道具なんてものがあればいいんだけどね。そんな物があったら誰も苦労しないし」
「恨み晴らし屋ってのがあるみたいだから、あながちそうとも言えないかもよ」
〔恨み晴らし屋?〕
志穂は聞き耳立てて彼女たちの会話を聞いていた。
「確か神宮寺稀と言ったかな。その人に依頼すれば確実に恨んだ相手を地獄に突き落とせるって有名な話だよ。都市伝説とかじゃなくてね」
〔神宮寺稀。。〕
「私の知り合いにも実際に嫌な会社の上司をしばらく仕事に出て来れなくしてもらった先輩がいたって聞いたよ」
「それ本当? 私も依頼してみようかな」
「本当だって。恐山で本格的な修行をして呪術を身につけたってプロフに書いてあったよ。それと、これはあくまでも噂なんだけど。。」
そう言ってそのホステスは聞かれたら困るという表情で少し声のボリュームを落として話す。
「なんでも手始めに恨みを晴らしたのが自分の父親だったとか。駅で電車に飛び込む自殺に見せかけて。。」
〔なんですって?〕
その言葉に志穂は驚きを隠せなかった。
それは自分の父親の事ではないのかと考えていた。
まさか。。でもそれが本当なら。。
「それ本当なの?」
「さあ、宣伝用の創作なんじゃない。いくらなんでもそれはないと思うよ」
「だよねー」
もし神宮寺稀という人物の呪術によって自殺に追い込まれたのであれば志穂が不審に思っていた事にも説明がついてしまう。
他人から見れば勝手な想像に過ぎないが、その話を聞いて志穂は稀が父親を殺したと完全に思うようになっていた。
それは事実である事に間違いはないが。
〔もしかして浮気もその神宮寺稀とかいう奴の仕業か。。〕
志穂はそこまで想像を膨らませていた。
実際に浮気に関しては賢治がやっていた事で呪術と何の関係もないが、恨み晴らしのためにやったと考えるとそう思えてしまうのだ。
少なくとも志穂にとって賢治は優しい父であり、浮気などするような人物ではなかった。
ここが稀と志穂の父親に対する見方の違いであった。
「神宮寺稀。。そいつが私たちをこんな目に」
志穂の怒りの矛先は父親の賢治から稀へと移っていった。
だが、稀に恨みを晴らそうにも相手は名うての呪術師。
狙った相手を確実に不幸に陥れるだけの力を持っている人間に迂闊に近づいたところで勝ち目はない。
自分もそれに対抗するだけの力を身につけなければ。
そう思っていたところにハザマ真理教の草刈愛梨と出会ったのだ。
「霊力を身につけたい。どうしたらいい?」
あまりのぶしつけで単刀直入な物言いに愛梨は追い返そうとした。
「お前程度が真理教に入信したところで霊力が身につくと思っているのか? さっさとママの元に帰ってオッパイでも飲んでいろ」
「私に両親はいない。ある人物に殺されたからな。そいつへ恨みを晴らすための力が欲しい。お願いだ。入信させてくれたらあんたに忠誠を誓う。私に力を与えてくれ」
〔両親がいない? 旧に態度が変わった志穂を怪訝に見ていたが、態度と口の利き方はともかく恨みを晴らす相手がいるというのは本当のようだ〕
愛梨は少し考えていた。
こいつは使えそうだと。
この先法元様が復活して十五年前の奴らを皆殺しにするには一人でも使えそうな側近を増やしておくのも悪くはない。
法元様も認めて下さるだろう。
愛梨はそう考えて志穂に入信を許可した。
「よかろう。恨みを晴らすためというところが気に入った。入信を許可する代わりに約束通り私に忠誠を誓い側近になってもらうぞ」
「感謝する。そして。。」
志穂は膝を地面について愛梨に平伏する。
「これより私は貴方さまに忠誠を誓います」
こうして志穂はハザマ真理教へ入信して愛梨の側近として行動するようになった。
教団の修行は聖菜や稀がやったものと同等のやり方であった。
志穂は稀と同じ血が流れているのか、霊力が他の信者よりも遥かに高く、成長も早かった。
一年後には愛梨が自らの右腕と認めるまでになっていた。
彼女の正体は神宮寺稀こと佐々木和花の父親である佐々木賢治の娘であった。
志穂は賢治の長女として生まれて金持ちの子供として何不自由なく育った。
欲しいものは何でも手に入ったし部屋には高級品のブランドバッグやペンダントが散乱しているほどであった。
しかし賢治が原因不明の自殺をしてから人生が一変する。
賢治が母以外に女を作っていた事が発覚し、母は嫌気がさして家を出て行ってしまった。
そして相手の女からの慰謝料の請求で家を始めとして家族の金目のものはみんな差し押さえられ、着の身着のままの状態でほぼ無一文で家から追い出されてしまう。
それまで贅沢三昧な暮らしをしてきた志穂にとって地獄の日々が始まった。
普段から金に物を言わせる高飛車な性格だったのも災いして、助けてくれる友人もいなかった。
弟は施設に預けられて何とかなったものの、志穂は自分の生活すらままならず、未成年であったがホステスとして雇ってもらい何とか食い繋いでいた。
志穂はどうしてこんな事になってしまったのか、父親を恨んでいた。
自殺したあとに他の女に手をつけていたのも発覚して母も自分たちを捨てて逃げて行った。
浮気の発覚を恐れて自殺したのならばどうしようもない男だと父親と同じ血が流れている事に憎悪すら感じた。
「あんたの父親はあんたの母と結婚する前にも他の女がいたんだよ。あちこちで女に手を出す節操のない人間だったわ」
その言葉に志穂は怒りが込み上げる。
言った人物にではない。自分の父親に対してだ。
「電車に飛び込んで自殺なんてするかな、自殺するほどの細い神経じゃないけと思っていたけど。まさか誰かに呪われた? そんなわけないか」
志穂は父親の事をとにかくお金持ちで贅沢をさせてくれる人という目で見ていた。
毎年のように海外旅行に連れて行ってくれたし、宿泊するのはいつも五つ星以上の高級ホテル。
外食はミシュランに掲載されているような高級店で美味しいものが食べられたし、誕生日ともなれば数十万円はするであろう高価なバッグや宝石をプレゼントしてくれた。
良い悪いで言えば良い父親だったし、大好きとまではいかなくても好きと言って良かった。
そんな父親が自殺するとは考え難かったのだ。
たとえ浮気をしていたとしても。
そんなある日、志穂は勤めていたキャバクラでホステスたちの話を立ち聞きしてしまった。
盗み聞きするつもりではなかったが、偶然にも聞こえてしまったのだ。
「まったく嫌な客なんだよ。人の足触ってにやにやしてさ。お触りは禁止だって言っているのに、ケチケチするな減るもんじゃあるまいしとか良いやがって。減るんだよ、私の忍耐と精神力が」
「嫌な客をこの世から排除する便利な道具なんてものがあればいいんだけどね。そんな物があったら誰も苦労しないし」
「恨み晴らし屋ってのがあるみたいだから、あながちそうとも言えないかもよ」
〔恨み晴らし屋?〕
志穂は聞き耳立てて彼女たちの会話を聞いていた。
「確か神宮寺稀と言ったかな。その人に依頼すれば確実に恨んだ相手を地獄に突き落とせるって有名な話だよ。都市伝説とかじゃなくてね」
〔神宮寺稀。。〕
「私の知り合いにも実際に嫌な会社の上司をしばらく仕事に出て来れなくしてもらった先輩がいたって聞いたよ」
「それ本当? 私も依頼してみようかな」
「本当だって。恐山で本格的な修行をして呪術を身につけたってプロフに書いてあったよ。それと、これはあくまでも噂なんだけど。。」
そう言ってそのホステスは聞かれたら困るという表情で少し声のボリュームを落として話す。
「なんでも手始めに恨みを晴らしたのが自分の父親だったとか。駅で電車に飛び込む自殺に見せかけて。。」
〔なんですって?〕
その言葉に志穂は驚きを隠せなかった。
それは自分の父親の事ではないのかと考えていた。
まさか。。でもそれが本当なら。。
「それ本当なの?」
「さあ、宣伝用の創作なんじゃない。いくらなんでもそれはないと思うよ」
「だよねー」
もし神宮寺稀という人物の呪術によって自殺に追い込まれたのであれば志穂が不審に思っていた事にも説明がついてしまう。
他人から見れば勝手な想像に過ぎないが、その話を聞いて志穂は稀が父親を殺したと完全に思うようになっていた。
それは事実である事に間違いはないが。
〔もしかして浮気もその神宮寺稀とかいう奴の仕業か。。〕
志穂はそこまで想像を膨らませていた。
実際に浮気に関しては賢治がやっていた事で呪術と何の関係もないが、恨み晴らしのためにやったと考えるとそう思えてしまうのだ。
少なくとも志穂にとって賢治は優しい父であり、浮気などするような人物ではなかった。
ここが稀と志穂の父親に対する見方の違いであった。
「神宮寺稀。。そいつが私たちをこんな目に」
志穂の怒りの矛先は父親の賢治から稀へと移っていった。
だが、稀に恨みを晴らそうにも相手は名うての呪術師。
狙った相手を確実に不幸に陥れるだけの力を持っている人間に迂闊に近づいたところで勝ち目はない。
自分もそれに対抗するだけの力を身につけなければ。
そう思っていたところにハザマ真理教の草刈愛梨と出会ったのだ。
「霊力を身につけたい。どうしたらいい?」
あまりのぶしつけで単刀直入な物言いに愛梨は追い返そうとした。
「お前程度が真理教に入信したところで霊力が身につくと思っているのか? さっさとママの元に帰ってオッパイでも飲んでいろ」
「私に両親はいない。ある人物に殺されたからな。そいつへ恨みを晴らすための力が欲しい。お願いだ。入信させてくれたらあんたに忠誠を誓う。私に力を与えてくれ」
〔両親がいない? 旧に態度が変わった志穂を怪訝に見ていたが、態度と口の利き方はともかく恨みを晴らす相手がいるというのは本当のようだ〕
愛梨は少し考えていた。
こいつは使えそうだと。
この先法元様が復活して十五年前の奴らを皆殺しにするには一人でも使えそうな側近を増やしておくのも悪くはない。
法元様も認めて下さるだろう。
愛梨はそう考えて志穂に入信を許可した。
「よかろう。恨みを晴らすためというところが気に入った。入信を許可する代わりに約束通り私に忠誠を誓い側近になってもらうぞ」
「感謝する。そして。。」
志穂は膝を地面について愛梨に平伏する。
「これより私は貴方さまに忠誠を誓います」
こうして志穂はハザマ真理教へ入信して愛梨の側近として行動するようになった。
教団の修行は聖菜や稀がやったものと同等のやり方であった。
志穂は稀と同じ血が流れているのか、霊力が他の信者よりも遥かに高く、成長も早かった。
一年後には愛梨が自らの右腕と認めるまでになっていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる