霊媒巫女の奇妙な日常

葉月麗雄

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最終章 最後の戦い

神宮寺稀vs佐々木志穂 一

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ハザマ真理教幹部。霊媒巫女志穂。

彼女の正体は神宮寺稀こと佐々木和花の父親である佐々木賢治の娘であった。
志穂は賢治の長女として生まれて金持ちの子供として何不自由なく育った。

欲しいものは何でも手に入ったし部屋には高級品のブランドバッグやペンダントが散乱しているほどであった。
しかし賢治が原因不明の自殺をしてから人生が一変する。

賢治が母以外に女を作っていた事が発覚し、母は嫌気がさして家を出て行ってしまった。
そして相手の女からの慰謝料の請求で家を始めとして家族の金目のものはみんな差し押さえられ、着の身着のままの状態でほぼ無一文で家から追い出されてしまう。

それまで贅沢三昧な暮らしをしてきた志穂にとって地獄の日々が始まった。
普段から金に物を言わせる高飛車な性格だったのも災いして、助けてくれる友人もいなかった。
弟は施設に預けられて何とかなったものの、志穂は自分の生活すらままならず、未成年であったがホステスとして雇ってもらい何とか食い繋いでいた。

志穂はどうしてこんな事になってしまったのか、父親を恨んでいた。
自殺したあとに他の女に手をつけていたのも発覚して母も自分たちを捨てて逃げて行った。

浮気の発覚を恐れて自殺したのならばどうしようもない男だと父親と同じ血が流れている事に憎悪すら感じた。


「あんたの父親はあんたの母と結婚する前にも他の女がいたんだよ。あちこちで女に手を出す節操のない人間だったわ」

その言葉に志穂は怒りが込み上げる。
言った人物にではない。自分の父親に対してだ。

「電車に飛び込んで自殺なんてするかな、自殺するほどの細い神経じゃないけと思っていたけど。まさか誰かに呪われた? そんなわけないか」

志穂は父親の事をとにかくお金持ちで贅沢をさせてくれる人という目で見ていた。
毎年のように海外旅行に連れて行ってくれたし、宿泊するのはいつも五つ星以上の高級ホテル。
外食はミシュランに掲載されているような高級店で美味しいものが食べられたし、誕生日ともなれば数十万円はするであろう高価なバッグや宝石をプレゼントしてくれた。
良い悪いで言えば良い父親だったし、大好きとまではいかなくても好きと言って良かった。

そんな父親が自殺するとは考え難かったのだ。
たとえ浮気をしていたとしても。

そんなある日、志穂は勤めていたキャバクラでホステスたちの話を立ち聞きしてしまった。
盗み聞きするつもりではなかったが、偶然にも聞こえてしまったのだ。

「まったく嫌な客なんだよ。人の足触ってにやにやしてさ。お触りは禁止だって言っているのに、ケチケチするな減るもんじゃあるまいしとか良いやがって。減るんだよ、私の忍耐と精神力が」

「嫌な客をこの世から排除する便利な道具なんてものがあればいいんだけどね。そんな物があったら誰も苦労しないし」

「恨み晴らし屋ってのがあるみたいだから、あながちそうとも言えないかもよ」

〔恨み晴らし屋?〕

志穂は聞き耳立てて彼女たちの会話を聞いていた。

「確か神宮寺稀と言ったかな。その人に依頼すれば確実に恨んだ相手を地獄に突き落とせるって有名な話だよ。都市伝説とかじゃなくてね」

〔神宮寺稀。。〕

「私の知り合いにも実際に嫌な会社の上司をしばらく仕事に出て来れなくしてもらった先輩がいたって聞いたよ」

「それ本当? 私も依頼してみようかな」

「本当だって。恐山で本格的な修行をして呪術を身につけたってプロフに書いてあったよ。それと、これはあくまでも噂なんだけど。。」

そう言ってそのホステスは聞かれたら困るという表情で少し声のボリュームを落として話す。

「なんでも手始めに恨みを晴らしたのが自分の父親だったとか。駅で電車に飛び込む自殺に見せかけて。。」

〔なんですって?〕

その言葉に志穂は驚きを隠せなかった。
それは自分の父親の事ではないのかと考えていた。
まさか。。でもそれが本当なら。。

「それ本当なの?」

「さあ、宣伝用の創作なんじゃない。いくらなんでもそれはないと思うよ」

「だよねー」

もし神宮寺稀という人物の呪術によって自殺に追い込まれたのであれば志穂が不審に思っていた事にも説明がついてしまう。
他人から見れば勝手な想像に過ぎないが、その話を聞いて志穂は稀が父親を殺したと完全に思うようになっていた。
それは事実である事に間違いはないが。

〔もしかして浮気もその神宮寺稀とかいう奴の仕業か。。〕

志穂はそこまで想像を膨らませていた。
実際に浮気に関しては賢治がやっていた事で呪術と何の関係もないが、恨み晴らしのためにやったと考えるとそう思えてしまうのだ。

少なくとも志穂にとって賢治は優しい父であり、浮気などするような人物ではなかった。
ここが稀と志穂の父親に対する見方の違いであった。

「神宮寺稀。。そいつが私たちをこんな目に」

志穂の怒りの矛先は父親の賢治から稀へと移っていった。
だが、稀に恨みを晴らそうにも相手は名うての呪術師。
狙った相手を確実に不幸に陥れるだけの力を持っている人間に迂闊に近づいたところで勝ち目はない。

自分もそれに対抗するだけの力を身につけなければ。
そう思っていたところにハザマ真理教の草刈愛梨と出会ったのだ。

「霊力を身につけたい。どうしたらいい?」

あまりのぶしつけで単刀直入な物言いに愛梨は追い返そうとした。

「お前程度が真理教に入信したところで霊力が身につくと思っているのか? さっさとママの元に帰ってオッパイでも飲んでいろ」

「私に両親はいない。ある人物に殺されたからな。そいつへ恨みを晴らすための力が欲しい。お願いだ。入信させてくれたらあんたに忠誠を誓う。私に力を与えてくれ」

〔両親がいない? 旧に態度が変わった志穂を怪訝に見ていたが、態度と口の利き方はともかく恨みを晴らす相手がいるというのは本当のようだ〕

愛梨は少し考えていた。
こいつは使えそうだと。

この先法元様が復活して十五年前の奴らを皆殺しにするには一人でも使えそうな側近を増やしておくのも悪くはない。
法元様も認めて下さるだろう。

愛梨はそう考えて志穂に入信を許可した。

「よかろう。恨みを晴らすためというところが気に入った。入信を許可する代わりに約束通り私に忠誠を誓い側近になってもらうぞ」

「感謝する。そして。。」

志穂は膝を地面について愛梨に平伏する。

「これより私は貴方さまに忠誠を誓います」

こうして志穂はハザマ真理教へ入信して愛梨の側近として行動するようになった。
教団の修行は聖菜や稀がやったものと同等のやり方であった。
志穂は稀と同じ血が流れているのか、霊力が他の信者よりも遥かに高く、成長も早かった。
一年後には愛梨が自らの右腕と認めるまでになっていた。
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