霊媒巫女の奇妙な日常

葉月麗雄

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最終章 最後の戦い

神宮寺稀vs佐々木志穂 二

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その人物が近づいて来たのを稀は感じ取っていた。
稀だけでなくアシスタントの双子姉妹、瑠奈と莉乃にもわかる殺気のこもった気である。

「稀様、かなり邪悪な気が近づいて来ております」

「二人にも感じ取れるとなるとかなりの怨念ですわね。何者かしら」

「私たちが見て参ります」

「いや、この気はかなり強い。あなたたちでは格闘技で勝てても霊力では歯が立たないでしょう。慌てなくても向こうからやって来るのならここで待ちましょう」

稀にそう言われて二人は内心悔しかったが、従った。

乱暴に店のドアが開けられると入って来たのは稀と同じ歳くらいかと思われる女性であった。
憎しみのこもった目と表情に稀は厄介だなと思う。

「神宮寺稀とはお前か?」

志穂が稀に近づくと瑠奈と莉乃が稀の前に立ち進路をふさぐ。
だが、その二人の肩をポンと叩き、大丈夫という表情を見せて稀は前に出る。

「ええ。私が神宮寺稀ですが、あなたはどちら様かしら?」

「ハザマ真理教幹部、霊媒巫女の志穂」

「ハザマ真理教が私に何の用なのですかね。こちらにはあなたに来られる理由がわかりませんわ」

「そうか。じゃあ佐々木志穂と言えばわかるか? お前が呪いで殺した佐々木賢治の娘だ」

それを聞いて稀の言葉が止まる。
そして頭の中で記憶を辿ると、確かにあの男は四人家族でそのうちの一人は女の子だったなと思い出した。

「なるほど、思い出しましたわ。しかしここであの男が別々の女性に産ませた子供同士が対面するとは奇妙なものですわね」

「だまれ! お前は私の家族をバラバラにした。その恨みを晴らしてやる」

稀は自分が恨みを晴らした人間の関係者から恨まれるのはある程度想定していたが、同じ男を父に持ついわば義理の妹から恨まれるまではさすがに想定していなかった。

「稀様に指一本触れてみろ! 私たちがお前をぶちのめす」

「ほざくな。お前たち程度私には準備運動にもならん」

「なんだと!」

莉乃がその言葉に怒りをあらわにしてヌンチャクを取り出すが、稀に止められてぐっと耐えた。

「で? あなたがここに来たのは父親の仇打ち? それとも単なる顔見せかしら」

「父だけじゃない。お前のせいで私の家族は離散して私もこのザマだ。この恨みを晴らしに来た」

「このザマと言われても以前のあなたを知りませんわ」

稀は本当は少し知っていたがあえて知らぬふりをしていた。
金持ちのお嬢様がどん底に落ちたといっても稀や瑠奈と莉乃に比べたらまだいい方だ。

「問答無用。この世から消えて無くなれ」

志穂はいきなり霊弾を放ち、稀は防御結界を張って瑠奈と莉乃を守りつつ防御する。

「いきなり来ましたわね。瑠奈、莉乃。二人は下がっていなさい」

「稀様、私たちも戦います」

「彼女の霊力はかなり高いという事をわかっていますの? あなたたちでは今の霊弾すら跳ね返せない。私が合図するまで下がっていなさい」

「私たちはこのような時に稀様のお役に立てないのですか」

「そんな事を言うものではないですわ。あなたたちは別にやって頂く事があります。ここは役割が違うという事をわかって下さい」

「稀様。。」

瑠奈と莉乃はまだ納得しきれていない様子であったが、稀が戦う邪魔になるという事だけは何とか理解してくれたようで、瑠奈が莉乃の手を引いて下がってくれた。

「莉乃、ここは稀様を信じよう。稀様、どうかお気をつけて」

瑠奈の言葉に稀はうなづく。

「別れの挨拶は済んだようだな」

「誰と別れるのですか? 私はあなたに負けるつもりなどありませんわ」

志穂が怒りと怨嗟の目を稀に向けるが、稀はそれを平然と受け止める。
ふと稀が思い出して問いかけた。

「新屋敷水菜さんを呪いにかけたのはあなたね」

「あれはほんの挨拶代わりだ。あの女に呪いをかければ同業者であるお前が出てくると思っていた」

「私に文句があるのなら直接来て頂きたかったですわね」

「お前は相当凄腕の呪術師と聞いている。迂闊に近寄ればいらぬ被害を被る可能性があったからな。時が来るまで待っていたのよ」

「時? あなたが私を敵討ちと狙うのに時が必要なのかしら?」

「法元様が目覚める時だ。法元様のお力によって私はさらなるパワーアップを施された。今の私ならお前など赤子の手を捻るようなものよ」

それを聞いて稀は内心まさかと思ったが、考えている間も無く志穂の呪術が稀に向けられる。
スパークする電流のような志穂の呪術が稀に放たれる。

「くっ。。」

防御結界の上からでも体が電流を受けたように痺れる。

「まさかハザマ幼虫? いえ、恐山にいた時に蓮香から聞いた話ではハザマ幼虫は全て焼却処分されてそのデータは藤村雪乃という方が厳重に保管しているとの事。ならば志穂のパワーアップにはどんな仕掛けが。。」

稀はそう考えていたところで思い起こした。
志穂も全くの素人というわけではなく、稀と同じように霊能者としての才能があったという事だろうと。
忌々しいが、やはり同じ男から生まれた者同士と言ったところか。

「まだほんの小手調べよ。お前はじわじわと苦しめながらとどめを刺してやる」

〔侮っていた訳ではありませんが、予想以上に強い呪術を使う。私も本気で戦わないと危ないですわ〕

しかし。。
稀は何か違和感を感じていた。
確かに霊力は強い。しかもまだ底を見せていない。
なのにこの違和感は何だろう。
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