上 下
13 / 67

第13話

しおりを挟む
「とりあえず、詳しい話は中で」

 伯爵に招かれるまま、私たちはお屋敷の中へ足を踏み入れた。そういえば、他の貴族の家に上がるのは初めてかもしれない。私は少し新鮮味を感じながら、伯爵の後ろを進んだ。

「タイミングが良かった。実は今、私の友人が来ているんだ。2人にも紹介しよう」

「は、はいっ」

 友人の方が居られる時に来てしまったとは、何とタイミングの悪い…と思ったけれど、私たちに紹介するとはどういうことだろう…?
 と考えを巡らせていたら、目的の部屋に到着したようだ。伯爵が扉を開け、次いで私たちが部屋に入る。
 部屋にはすでに、2人の男性がいた。2人とも、伯爵と同じくらいの年齢に見える。どうやら本当に友人の方のようだ。

「紹介しよう。ワトソンとクリックだ。こっちの2人は、ソフィアさんとそのお付きのターナーさんだ」

 ワトソンさんとクリックさんは、はじめましてと丁寧に会釈をされた。私たち2人も、同じように返す。
 全員が席に着いた後、伯爵が口を開いた。

「ソフィアさんは、公爵とご婚約の予定だった。しかし、それは破談となった」

「こ、公爵の!?」

「な、なんと…」

 それを聞いて2人とも驚いた後、私を見つめる。その視線は、敵を見つめるときのそれであった。まあ、無理もないか…

「大丈夫だよ、2人とも。ソフィアさんは深い訳ありだ。私たちは皆、あの兄妹の被害者なんだよ」

 今度は私たちが驚く。ワトソンさんとクリックさんは、ただの友人ではないようだ。

「私が、説明しよう」

 伯爵はそう言い、私たちの事情を説明してくれた。私が侯爵の元婚約者であり、公爵がきがぐれに婚約を持ちかけてきたこと、私が2人に虐め抜かれていたこと、そしてその果てに婚約を破棄し、ついさっき公爵を蹴り上げたこと。
 2人は驚きを隠せなかったようだが、最終的には私たちの事情を理解してくれたようだった。

「次に、ワトソンとクリックの話だ」

 そこから伯爵は、2人の事情の説明を始めた。要約すると、2人とも伯爵位の貴族だったが、あの兄妹に不当な証拠をでっち上げられ、国に貴族位を剥奪されてしまったらしい…あの兄妹を地獄に落としたいという2人の気持ちは、私に引けを取らないかもしれない…

「あいつら…絶対に地獄に落としてやる…」

 憎しみをあらわにした表情で、ワトソンさんはつぶやいた。それに次ぎ、クリックさんも口を開く。

「私だけじゃない…私を信じ、慕ってくれた臣下達を皆…路頭に迷わせてしまった…」

 クリックさんは今にも泣きそうな表情だ。私は反射的に2人に言った。

「…このまま終わらせていいはずがありません。あの2人には、相応の罰が下されなければなりません…」

 皆が、私に注目する。私は皆を鼓舞する様に、声をかける。

「必ず、あの兄妹をぶっ潰してやりましょう!」

 その気合と共に、私たちは作戦会議を始めた。それぞれの持ち寄った情報を互いに精査し、フランツ公爵とエリーゼの弱点を整理していく…
 この作業は朝まで続いたのだった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

妻が遺した三つの手紙

恋愛 / 完結 24h.ポイント:198pt お気に入り:43

仲良しな天然双子は、王族に転生しても仲良しで最強です♪

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,867pt お気に入り:309

【完結】貴方の後悔など、聞きたくありません。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:646pt お気に入り:2,797

片思いの相手に偽装彼女を頼まれまして

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,669pt お気に入り:16

【しあわせ】を分けてあげて

児童書・童話 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

処理中です...