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第48話

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――エリーゼ視点――

 上級公爵の味方貴族からの情報によると、私たちの仕掛けた奇襲攻撃は大成功を収めたようだ。ソフィアをはじめ、連中は皆私たちの完璧な作戦の前に慌てふためいているという。全くざまぁみろ。

「さすがは上級公爵様ぁ!私は初めから信じていましたわぁ!」

「ぐふふ。そうであろう?そうであろう?ぐふふふ」

 …気持ちの悪い笑みを浮かべる上級公爵。…あの女を追い落とすために仕方のない事とは言っても、こいつに尻尾を振るのはなかなかに背筋が凍る思いだ。

「調査団の強制執行認可さえおりれば、いつでも奴らのところへ乗り込めるぞ!そうなればやつらもおしまいだ!っはははは!!!」

 高らかにそう笑いながら、自身のグラスに注がれたお酒を口に運ぶ公爵。

「そうなった時、次の皇帝の椅子に座るの、は?」

 私はそう言いながら、彼のグラスに追加のお酒を注ぐ。

「っははは!!もう決まったな!!自身が妃と認めた女が反逆罪を画策したなど、もうシュルツもおしまいだ!そしてそんなやつを推挙したアノッサもな!っはははは!!!」

 上級公爵派の貴族は多い。前のようにこの人がしくじったとしても、きっと彼らがバックアップしてくれることだろう。彼らには今回のために、相当な賄賂をばらまいてやったのだ。そして今後の働き次第では、もっとやってやるとも言ってある。…上級公爵位ともなると、本当にお金には困らないのね。
 …などと考えていたら、下心が見え見えの彼の手が私の肩を這う。

「…エリーゼ、今夜は前祝いだ。二人で朝まで、愛し合おうじゃないか…!!」

 …彼が耳元でそうささやいてくる。…私は必死に震えを抑え、彼の機嫌を損ねないように細心の注意を図る。

「もう、公爵様ったらぁ…」

 その時、遠目に私たちを見つめるお兄様の姿が目に入った。私はお兄様と話をするため、一旦上級公爵をこの場からどかせる。

「…グロス様、先に寝室に行っていてくださるかしら?」

 …これから私と寝られることを確信した彼は、より一層上機嫌になる。

「了解だとも!待っているよ!」

 部屋を後にする彼を見届けた後、私はお兄様の元へと歩み寄る。

「お兄様?どうされたのですか?そんなお顔をされて」

「…」

 何も言わず、どこか不安気な表情のお兄様。きっと、これからの事が不安なのでしょうね。私は彼の両肩にやさしく手を添え、言い聞かせを始める。

「お兄様、私は上級公爵様と結ばれて、この帝国の誰よりも幸せな人生を送るんですのよ?私の兄であるお兄様も、欲しいものは何でも手に入るし、権力だって思いのまま。上級公爵様も早く私と結ばれたいと、毎日のようにお話になりますわ」

 これほど魅力的な立場となれるというのに、それでもどこか不安気表情のお兄様。

「これは他でもない、私たちのためなの。お兄様、分かりますよね?」

「…それでエリーゼ、ソフィアたちをどうやって追い落とすんだ?」

 そうか、お兄様の不安な点はそれだったのか。私はその不安を取り去るため、嘘偽りなく説明する。

「上級公爵様は、相手が一切弁明できないように準備資料外から責め立てると言っていましたわ。相手がどんな対策をしてこようとも、すべては無駄。つまり、私たちの勝利はもう決まっているのです。だから安心してくださいませ?」
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