9 / 34
第二章:再起と新たな出会い
第九話 魔法具職人の工房
しおりを挟む
翌日、リリアは宿屋の仕事を半日で切り上げ、アレクセイの工房へと向かった。
街の中心部から少し離れた場所にあるその建物は、周囲の家々とは異なり、頑丈な石造りで、扉には複雑な魔法陣が刻まれていた。
「ここが俺の工房だよ。まあ、あまりきれいじゃないけどな」
そう言って、アレクセイは扉を押し開いた。
中に入ると、壁一面に並ぶ魔法具や、机に広げられた設計図が目に飛び込んできた。奥には錬成用の魔法陣が描かれた円卓があり、棚には大小さまざまな魔石が並んでいる。
(すごい……!)
リリアは思わず目を見張った。王宮では貴族たちが装飾品として魔法具を持っているのを見たことはあったが、こうして製作の現場を見るのは初めてだった。
「さて、まずは君の魔力量を測ろうか」
「魔力量?」
「そう。魔法を扱うには、個人の魔力量がどの程度なのか把握することが大事だ。こいつを握ってみてくれ」
アレクセイが差し出したのは、手のひらサイズの青い水晶だった。
リリアは言われるままにそれを手に取った。
すると、次の瞬間――
「……なっ!?」
水晶が一瞬にして眩い光を放ち、工房全体を青白く照らした。
アレクセイの目が驚愕に見開かれる。
「お、おい……!? これは……」
「え? なにかおかしいですか?」
「おかしいどころじゃない!」
アレクセイは信じられないものを見るようにリリアを見つめた。
「普通の魔導士なら、この水晶はほんのり光る程度だ。でも、君の場合――完全に光を満たしたどころか、割れる寸前だった」
「え……?」
「君……尋常じゃない魔力量を持ってるぞ」
リリアは息を呑んだ。
自分がある程度魔法が使えることは知っていた。けれど、こんなに強い魔力を持っていたなんて――。
(そんな……私が?)
ふと、かつての王宮での記憶が蘇る。
王太子エドワードは、リリアに魔法を学ぶ必要はないと言っていた。貴族の女性は魔法を使うよりも、王妃としての立ち振る舞いを学ぶべきだと。
もしかすると、それは「私の魔力量に気づかせないため」だったのかもしれない。
エドワードは、私がこれほどの魔力を持っていることを知っていた?
(いや……もう関係ない)
リリアはそっと拳を握る。
王宮を追放された自分にとって、過去のことなどどうでもいい。
今、大切なのは――
(私はまだ、成長できる)
これまで封じられていた自分の可能性が、ここで開かれていく。
リリアは顔を上げ、アレクセイを見た。
「アレクセイさん、私に魔法具の作り方を教えてください」
アレクセイは驚いたように目を瞬かせ、それから――
「……面白くなってきたな」
ニヤリと笑った。
こうして、リリアは魔法具職人としての道を歩み始めることになった。
この決断が、やがて彼女をさらなる運命へと導いていく――。
街の中心部から少し離れた場所にあるその建物は、周囲の家々とは異なり、頑丈な石造りで、扉には複雑な魔法陣が刻まれていた。
「ここが俺の工房だよ。まあ、あまりきれいじゃないけどな」
そう言って、アレクセイは扉を押し開いた。
中に入ると、壁一面に並ぶ魔法具や、机に広げられた設計図が目に飛び込んできた。奥には錬成用の魔法陣が描かれた円卓があり、棚には大小さまざまな魔石が並んでいる。
(すごい……!)
リリアは思わず目を見張った。王宮では貴族たちが装飾品として魔法具を持っているのを見たことはあったが、こうして製作の現場を見るのは初めてだった。
「さて、まずは君の魔力量を測ろうか」
「魔力量?」
「そう。魔法を扱うには、個人の魔力量がどの程度なのか把握することが大事だ。こいつを握ってみてくれ」
アレクセイが差し出したのは、手のひらサイズの青い水晶だった。
リリアは言われるままにそれを手に取った。
すると、次の瞬間――
「……なっ!?」
水晶が一瞬にして眩い光を放ち、工房全体を青白く照らした。
アレクセイの目が驚愕に見開かれる。
「お、おい……!? これは……」
「え? なにかおかしいですか?」
「おかしいどころじゃない!」
アレクセイは信じられないものを見るようにリリアを見つめた。
「普通の魔導士なら、この水晶はほんのり光る程度だ。でも、君の場合――完全に光を満たしたどころか、割れる寸前だった」
「え……?」
「君……尋常じゃない魔力量を持ってるぞ」
リリアは息を呑んだ。
自分がある程度魔法が使えることは知っていた。けれど、こんなに強い魔力を持っていたなんて――。
(そんな……私が?)
ふと、かつての王宮での記憶が蘇る。
王太子エドワードは、リリアに魔法を学ぶ必要はないと言っていた。貴族の女性は魔法を使うよりも、王妃としての立ち振る舞いを学ぶべきだと。
もしかすると、それは「私の魔力量に気づかせないため」だったのかもしれない。
エドワードは、私がこれほどの魔力を持っていることを知っていた?
(いや……もう関係ない)
リリアはそっと拳を握る。
王宮を追放された自分にとって、過去のことなどどうでもいい。
今、大切なのは――
(私はまだ、成長できる)
これまで封じられていた自分の可能性が、ここで開かれていく。
リリアは顔を上げ、アレクセイを見た。
「アレクセイさん、私に魔法具の作り方を教えてください」
アレクセイは驚いたように目を瞬かせ、それから――
「……面白くなってきたな」
ニヤリと笑った。
こうして、リリアは魔法具職人としての道を歩み始めることになった。
この決断が、やがて彼女をさらなる運命へと導いていく――。
21
あなたにおすすめの小説
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
「お前を愛する事はない」を信じたので
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」
お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
家族の靴を磨いていた私が、実は【神の加護を磨き上げた聖女】だった件。隣国の冷徹皇帝に「君の献身は世界を救う」と誘拐、24 執着されています
唯崎りいち
恋愛
「お前は一生、靴でも磨いていろ」
家族に虐げられ、靴を磨き続けた私。
実はその靴、磨くたびに『神の加護』が宿る聖具になっていました。
噂を聞きつけた隣国の冷徹皇帝に、出会い頭にさらわれて――
「君は俺のものだ。24時間、指一本触れさせない」
靴を履かせてもらえず、移動は常に皇帝の腕の中!?
磨き上げた加護のせいで、皇帝の執着が神レベルに育ってしまう溺愛物語。
不器量で可愛げが無くて僻みっぽくて小賢しい私の話
あんど もあ
ファンタジー
王太子が真実の愛とか言って婚約破棄を宣言。廃太子と決まりました。おかげで妹の私に王太子になれと言われたのですが、不器量で可愛げが無くて僻みっぽくて小賢しくて政略結婚の役にも立たないと言われていた私がですか?
結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました
ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。
ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。
王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。
そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。
「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる