たった一つの居場所が失われても、細い糸を手繰り寄せて

青森りんご

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第二章:再起と新たな出会い

第九話 魔法具職人の工房

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 翌日、リリアは宿屋の仕事を半日で切り上げ、アレクセイの工房へと向かった。

 街の中心部から少し離れた場所にあるその建物は、周囲の家々とは異なり、頑丈な石造りで、扉には複雑な魔法陣が刻まれていた。

「ここが俺の工房だよ。まあ、あまりきれいじゃないけどな」

 そう言って、アレクセイは扉を押し開いた。

 中に入ると、壁一面に並ぶ魔法具や、机に広げられた設計図が目に飛び込んできた。奥には錬成用の魔法陣が描かれた円卓があり、棚には大小さまざまな魔石が並んでいる。

(すごい……!)

 リリアは思わず目を見張った。王宮では貴族たちが装飾品として魔法具を持っているのを見たことはあったが、こうして製作の現場を見るのは初めてだった。

「さて、まずは君の魔力量を測ろうか」

「魔力量?」

「そう。魔法を扱うには、個人の魔力量がどの程度なのか把握することが大事だ。こいつを握ってみてくれ」

 アレクセイが差し出したのは、手のひらサイズの青い水晶だった。

 リリアは言われるままにそれを手に取った。

 すると、次の瞬間――

「……なっ!?」

 水晶が一瞬にして眩い光を放ち、工房全体を青白く照らした。

 アレクセイの目が驚愕に見開かれる。

「お、おい……!? これは……」

「え? なにかおかしいですか?」

「おかしいどころじゃない!」

 アレクセイは信じられないものを見るようにリリアを見つめた。

「普通の魔導士なら、この水晶はほんのり光る程度だ。でも、君の場合――完全に光を満たしたどころか、割れる寸前だった」

「え……?」

「君……尋常じゃない魔力量を持ってるぞ」

 リリアは息を呑んだ。

 自分がある程度魔法が使えることは知っていた。けれど、こんなに強い魔力を持っていたなんて――。

(そんな……私が?)

 ふと、かつての王宮での記憶が蘇る。

 王太子エドワードは、リリアに魔法を学ぶ必要はないと言っていた。貴族の女性は魔法を使うよりも、王妃としての立ち振る舞いを学ぶべきだと。

 もしかすると、それは「私の魔力量に気づかせないため」だったのかもしれない。

 エドワードは、私がこれほどの魔力を持っていることを知っていた?

(いや……もう関係ない)

 リリアはそっと拳を握る。

 王宮を追放された自分にとって、過去のことなどどうでもいい。

 今、大切なのは――

(私はまだ、成長できる)

 これまで封じられていた自分の可能性が、ここで開かれていく。

 リリアは顔を上げ、アレクセイを見た。

「アレクセイさん、私に魔法具の作り方を教えてください」

 アレクセイは驚いたように目を瞬かせ、それから――

「……面白くなってきたな」

 ニヤリと笑った。

 こうして、リリアは魔法具職人としての道を歩み始めることになった。

 この決断が、やがて彼女をさらなる運命へと導いていく――。

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