たった一つの居場所が失われても、細い糸を手繰り寄せて

青森りんご

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第二章:再起と新たな出会い

第八話 謎の青年との出会い

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 リリアが宿屋で冷却魔法を使った翌日、思わぬ出来事が起こった。

「なあ、ミラのとこで魔法を使った女の子がいるって聞いたんだけど、本当か?」

 昼下がり、宿屋「風詠み亭」に、一人の青年が訪ねてきた。

 背の高いすらりとした体躯に、黒いコートを羽織っている。銀色の髪が日の光を受けて輝き、鋭い青い瞳がリリアをじっと見つめていた。

(……誰?)

 見知らぬ相手に警戒しつつも、リリアは表情を崩さずに応じた。

「はい、私ですけど……」

「やっぱり君か」

 青年はふっと微笑んだ。

「自己紹介が遅れたね。俺はアレクセイ。この街で魔法具職人をしてるんだ」

「魔法具職人……?」

 リリアは驚いた。昨日、ミラが「魔法具職人が出張中」と言っていたはずだ。しかし、目の前の青年は確かにその魔法具職人を名乗っている。

「驚いた顔をしてるな。確かに俺はずっと出張してたけど、昨夜戻ってきたんだ。それで、宿屋の魔法具の修理に来ようとしたら……もう大丈夫って聞いてさ」

「あ、それは……」

「君がやったんだろう?」

 アレクセイは興味深そうにリリアを見つめる。

「貴族の令嬢が魔法を習うことは珍しくないが、実際に魔法具の代わりに冷却魔法を施せるほどの魔力を持ってるなんて、普通はありえない」

「…………」

 リリアは言葉を失った。

 確かに、冷却魔法を維持するのは簡単なことではない。宮廷魔導士でもない限り、長時間魔法を持続させるのは難しいはずだった。

(しまった……目立ちすぎたかもしれない)

 追放された身の上、あまり注目を集めるのはよくない。リリアは慌てて言葉を選ぼうとした。

「私はただ、少し魔法をかじっただけで……」

「いや、そんなレベルじゃない」

 アレクセイはじっとリリアを見つめたあと、ふっと面白そうに笑った。

「君、俺のところで働かないか?」

「え?」

「俺の工房でさ。魔法の知識があるなら、魔法具作りを手伝えるだろう?」

「……どうして、私を?」

「面白いからさ」

 アレクセイは肩をすくめる。

「ここでただの宿屋の仕事をしてるより、魔法を活かせる仕事をしたほうがいいだろ? 君には、その才能がある」

 リリアは息を呑んだ。

 追放された身で、もう貴族ではない自分。けれど、新しい生き方を探すなら……魔法具職人という道も悪くないかもしれない。

(私の魔法……誰かの役に立つの?)

 エドワードに捨てられ、国を追われた自分が、今ここで新たな人生を選ぶことができる。

 リリアはゆっくりと頷いた。

「……よろしくお願いします」

 こうして、リリアは魔法具職人アレクセイの工房で働くことになった。

 この決断が、やがて彼女の運命を大きく変えていくことになる――。
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