たった一つの居場所が失われても、細い糸を手繰り寄せて

青森りんご

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第四章:改革と駆け引き

第二十五話 王宮からの提案

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 王宮からの使者が訪れたのは、リリアが新たな魔法具の改良に取り組んでいる最中だった。

 屋敷の応接室に通されたのは、王宮の高官の一人、宰相補佐官ルドルフ。品の良い笑みを浮かべながら、彼はリリアに向かって穏やかに口を開いた。

「リリア様、ご活躍は私どもも聞き及んでおります。殿下も、あなたの努力を高く評価しておられますよ」

 リリアは冷静に微笑みを返した。

「それは光栄ですわ。ですが、わざわざ私の元へいらしたということは、何か御用があるのでしょう?」

「ええ、もちろん。実は――王宮として、あなたの魔法具の研究を正式に支援したいと考えております」

 ルドルフの言葉に、リリアは目を細めた。

「王宮の支援、ですか?」

「はい。あなたの研究を王宮の管理下に置き、より多くの人々に届けるのです。研究施設や資金も提供しましょう。もちろん、安全性の確認のため、王宮の医師団と共同で研究を進める形になりますが」

 リリアは内心で苦笑した。

 ――つまり、王宮の監視下に置かれ、自由に研究をさせないということね。

「ありがたいお申し出ですが、少し考えさせていただいてもよろしいでしょうか?」

「もちろんですとも」

 ルドルフは余裕のある態度を崩さない。

「ですが、あまり時間をかけるのはお勧めしません。王宮としても、改革には迅速な対応が求められますので」

 そう言い残し、彼は静かに立ち上がった。

「良いお返事をお待ちしておりますよ、リリア様」

 彼が去った後、リリアは深く息を吐いた。

「……思った通りね」

「王宮が動き出したな」

 傍らにいたアレクセイが、鋭い目つきで言った。

「お前を自由にさせるつもりはない。だが、力ずくで排除するのもリスクが高い。だから、“支援”という形で縛ろうとしている」

「ええ。ここで私が受け入れれば、すべて王宮の思い通りになるでしょうね」

「どうする?」

 リリアはゆっくりと微笑んだ。

「決まっているわ。王宮の思惑に乗るつもりはない。でも……この機会を利用しない手はないわ」

「……?」

「“支援を受けるふりをして”彼らの本音を探りましょう」

 彼女の瞳には、確かな決意が宿っていた。

 王宮の支配に屈するつもりはない。むしろ、彼らの動きを逆手に取るつもりだった。

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