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第四章:改革と駆け引き
第二十六話 表と裏
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翌日、リリアは王宮からの「支援」について、ロイとアレクセイと共に話し合っていた。
「なるほどな……。支援という名の監視ってわけか」
ロイは腕を組み、深く息を吐いた。
「王宮が力ずくで排除しようとしないだけ、まだマシなのか……?」
「いや、むしろ厄介だ」
アレクセイが冷静に言葉を挟む。
「今までみたいに、正面から拒否すればいいわけじゃない。下手に拒めば、民衆に『王宮は歩み寄ろうとしているのに、リリアが頑なに拒んでいる』と見られかねない」
「それは避けたいわね」
リリアは静かに考え込む。
「だからこそ、私たちは王宮の提案を利用するべきだと思うの」
「……どういうことだ?」
「王宮の支援を“受けるふり”をするのよ。もちろん、すべてを明け渡すわけではなく、私たちの主導権を維持しながら」
「そんなことができるのか?」
「ええ。王宮も私を無理やり押さえつけるわけにはいかない。だからこそ、『支援』という形を取っている。なら、こちらも表向きは従う姿勢を見せつつ、本当に大事な部分は守るのよ」
ロイとアレクセイは顔を見合わせた。
「……確かに、悪くない手だな」
「でも、かなりの綱渡りになりそうだ」
「ええ。でも、このまま静観するよりは、こちらから動くほうがいいわ」
リリアは静かに笑う。
「王宮が本当に“改革”を望んでいるのか、それとも私を利用しようとしているのか――しっかり見極めてあげるわ」
こうして、リリアは王宮の支援を受ける方向で動き出した。
***
王宮の支援を受け入れると決めたリリアは、正式な返答を届けるために王宮を訪れた。
豪奢な玉座の間に通されると、そこにはエドワード王太子とミレイナ王太子妃、そして宰相補佐官ルドルフが待ち構えていた。
「リリア・フォン・アルセイン、公の場で会うのは久しぶりだな」
エドワードが皮肉めいた笑みを浮かべるが、リリアは穏やかに微笑みを返す。
「ええ、ご無沙汰しております、殿下」
「それで? 王宮の提案についての返答は?」
ルドルフが尋ねると、リリアはゆっくりと頷いた。
「ありがたくお受けいたしますわ。ただし、いくつか条件がございます」
「ほう、条件?」
「まず、研究の主導権は私が握ること。そして、支援を受ける代わりに、私が開発した魔法具の供給先は王宮の決定に完全に委ねるのではなく、民間にも公平に分配できるようにすること」
王宮の者たちの間に、一瞬の沈黙が流れる。
「……面白い」
エドワードが目を細める。
「だが、お前の研究が王宮の支援を受ける以上、それを王宮が管理するのは当然のことだと思うが?」
「そうですね。ですが、王宮がすべてを独占すれば、それは“改革”ではなく、“権力の温存”にしかなりませんわ」
リリアの言葉に、エドワードの表情がわずかに強張る。
「……随分と大胆なことを言うな」
「私は、ただ“正しきこと”を求めているだけです」
「ふむ……」
ルドルフが考え込むように唸る。
――リリアを完全に押さえつけるのは難しい。ならば、今は彼女に“協力するふり”をしながら、徐々に動きを制限していく方が得策か……?
そんな計算が、王宮の面々の頭を巡る。
だが、それはリリアも承知の上だった。
「王宮にとっても、これは悪い話ではないはずですわ」
リリアは優雅に微笑む。
「表向き、王宮は民を思って支援を行う姿勢を見せられる。私も、王宮の支援を受けながら改革を進められる。これは、お互いにとって“利益のある取引”ではなくて?」
「……なるほど」
ミレイナが感心したように呟いた。
「ここまで堂々と交渉するとは思わなかったわ。でも、確かに、今ここで強引に押さえつければ、王宮が“改革を妨害した”という印象を与えかねない……」
「……よかろう」
エドワードはしばらく考え込んだ後、渋々と頷いた。
「お前の条件、ひとまずは受け入れよう」
「ありがとうございます、殿下」
リリアは優雅に一礼する。
こうして、彼女は表向きは王宮の支援を受け入れながらも、実質的な主導権を保持する形で改革を進めることになった。
しかし、王宮がこのまま大人しくしているとは思えない。
リリアは心の奥で、静かに戦いの準備を整えていた――。
「なるほどな……。支援という名の監視ってわけか」
ロイは腕を組み、深く息を吐いた。
「王宮が力ずくで排除しようとしないだけ、まだマシなのか……?」
「いや、むしろ厄介だ」
アレクセイが冷静に言葉を挟む。
「今までみたいに、正面から拒否すればいいわけじゃない。下手に拒めば、民衆に『王宮は歩み寄ろうとしているのに、リリアが頑なに拒んでいる』と見られかねない」
「それは避けたいわね」
リリアは静かに考え込む。
「だからこそ、私たちは王宮の提案を利用するべきだと思うの」
「……どういうことだ?」
「王宮の支援を“受けるふり”をするのよ。もちろん、すべてを明け渡すわけではなく、私たちの主導権を維持しながら」
「そんなことができるのか?」
「ええ。王宮も私を無理やり押さえつけるわけにはいかない。だからこそ、『支援』という形を取っている。なら、こちらも表向きは従う姿勢を見せつつ、本当に大事な部分は守るのよ」
ロイとアレクセイは顔を見合わせた。
「……確かに、悪くない手だな」
「でも、かなりの綱渡りになりそうだ」
「ええ。でも、このまま静観するよりは、こちらから動くほうがいいわ」
リリアは静かに笑う。
「王宮が本当に“改革”を望んでいるのか、それとも私を利用しようとしているのか――しっかり見極めてあげるわ」
こうして、リリアは王宮の支援を受ける方向で動き出した。
***
王宮の支援を受け入れると決めたリリアは、正式な返答を届けるために王宮を訪れた。
豪奢な玉座の間に通されると、そこにはエドワード王太子とミレイナ王太子妃、そして宰相補佐官ルドルフが待ち構えていた。
「リリア・フォン・アルセイン、公の場で会うのは久しぶりだな」
エドワードが皮肉めいた笑みを浮かべるが、リリアは穏やかに微笑みを返す。
「ええ、ご無沙汰しております、殿下」
「それで? 王宮の提案についての返答は?」
ルドルフが尋ねると、リリアはゆっくりと頷いた。
「ありがたくお受けいたしますわ。ただし、いくつか条件がございます」
「ほう、条件?」
「まず、研究の主導権は私が握ること。そして、支援を受ける代わりに、私が開発した魔法具の供給先は王宮の決定に完全に委ねるのではなく、民間にも公平に分配できるようにすること」
王宮の者たちの間に、一瞬の沈黙が流れる。
「……面白い」
エドワードが目を細める。
「だが、お前の研究が王宮の支援を受ける以上、それを王宮が管理するのは当然のことだと思うが?」
「そうですね。ですが、王宮がすべてを独占すれば、それは“改革”ではなく、“権力の温存”にしかなりませんわ」
リリアの言葉に、エドワードの表情がわずかに強張る。
「……随分と大胆なことを言うな」
「私は、ただ“正しきこと”を求めているだけです」
「ふむ……」
ルドルフが考え込むように唸る。
――リリアを完全に押さえつけるのは難しい。ならば、今は彼女に“協力するふり”をしながら、徐々に動きを制限していく方が得策か……?
そんな計算が、王宮の面々の頭を巡る。
だが、それはリリアも承知の上だった。
「王宮にとっても、これは悪い話ではないはずですわ」
リリアは優雅に微笑む。
「表向き、王宮は民を思って支援を行う姿勢を見せられる。私も、王宮の支援を受けながら改革を進められる。これは、お互いにとって“利益のある取引”ではなくて?」
「……なるほど」
ミレイナが感心したように呟いた。
「ここまで堂々と交渉するとは思わなかったわ。でも、確かに、今ここで強引に押さえつければ、王宮が“改革を妨害した”という印象を与えかねない……」
「……よかろう」
エドワードはしばらく考え込んだ後、渋々と頷いた。
「お前の条件、ひとまずは受け入れよう」
「ありがとうございます、殿下」
リリアは優雅に一礼する。
こうして、彼女は表向きは王宮の支援を受け入れながらも、実質的な主導権を保持する形で改革を進めることになった。
しかし、王宮がこのまま大人しくしているとは思えない。
リリアは心の奥で、静かに戦いの準備を整えていた――。
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