そして何もなかった

平 昌綱

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すれ違う心と見えない壁

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高校生は、思春期の真っ只中にいる。何気ない一言に深く傷ついたり、小さな仕草に胸が高鳴ったりする時期だ。季節の移ろいも、そんな繊細な心に影響を与える。秋から冬へと変わる11月、雨が雪へと変わる頃、僕たちの関係もまた大きく揺れ動いていた。

その頃、僕たちにはそれぞれ好きな人ができた。青子はクラスメイトの誰かに、僕は他のクラスの誰かに。自然と電話の話題も変わっていった。これまではクラスの出来事や宿題、日常の何気ないことを話していたのに、いつしか恋愛の話が中心になっていった。今日話せたこと、次はどうやって距離を縮めるか――そんなことを毎日のように話していた。

最初はそれでよかった。お互いの話を聞き合うことで、恋愛の悩みを共有し、励まし合う関係が築けたような気がしていた。でも、次第に僕たちの間に何かモヤモヤとしたものが漂い始めた。それは、言葉にはできない感情だった。どこか噛み合わない。心の奥底で、何かが変わり始めているのを感じた。

クラスでの会話が減り、電話もしなくなった。電話をかけても沈黙が増え、ぎこちない空気が漂うばかりだった。そして、とうとう八つ当たりのような言い合いが増え始めた。些細なことで口論になり、つまらないことで言葉をぶつけ合う。最悪の時には、彼女が僕をインスタのフォロワーから外す事態にまで発展してしまった。

「何で外したんだよ?」と聞きたかったけれど、聞けなかった。自分でも、どうしてこうなったのか分からなかった。僕たちは何も話し合えないまま、ただ険悪な空気が続くだけだった。

今振り返ってみると、あの時の僕たちはお互いに無理をしていたのだと思う。青子も、僕も。自分の感情を隠し、傷つかないように距離を取ることで、相手と自分を守ろうとしていた。でも、その距離が逆にお互いを追い詰めていたのだ。

青子がどんな気持ちでいたのか、僕には分からない。ただ、僕自身が抱えていた感情は今でも覚えている。好きな人との距離が縮まらない焦りや不安。そして、青子と話すたびに感じる微妙な違和感。それが何なのか、当時は分からなかったけれど、今思えば、それは彼女が僕に向けていたほんの少しの期待を僕が受け止められなかったことへの苛立ちだったのかもしれない。

険悪な関係は約1ヶ月続いた。その間、僕は彼女のために何もできなかった。ただ見ているだけだった。関係が悪化するたびに「どうすればいいんだろう」と悩んだ。けれど、その答えを見つける勇気も、彼女と正面から向き合う覚悟もなかった。

もし、あの時もう少し素直になれていたなら。彼女のモヤモヤに気づき、僕自身の悩みも正直に話せていたなら。きっと関係は違ったものになっていたのかもしれない。でも、僕たちはお互いに壁を作り、その壁が手に負えないほど厚くなったと気づいた時には、もう遅かった。

雪が降り始める頃、僕たちはようやく少しだけ話せるようになった。きっかけは些細なことだったけれど、その時、ふと青子が「最近、話してなかったね」と呟いた。その一言に、僕はどこかほっとした。

壁を完全に壊すことはできなかったけれど、少しずつその隙間を埋めるように話を重ねていった。結局、好きな人との関係も青子との関係も、どちらもうまくいかなかったけれど、あの時の曖昧な思い出は今でも心に残っている。

僕たちは結局、何も言葉にできなかったけれど、それが高校生らしい不器用さだったのだと思う。
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