そして何もなかった

平 昌綱

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新クラスと決意

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  新しいクラスになり、僕は環境の変化を肌で感じていた。男子40人、女子8人。比率だけ見れば圧倒的に男子の多いクラスだったが、実際の力関係は女子の方が上だった。彼女たちは全員気が強く、物怖じしない性格で、クラスの雰囲気を支配していた。その中でも特に存在感を放っていたのが赤子──青子の友達で、僕のことを「おい工藤」と必ず「おい」をつけて呼ぶ猛者だ。

 赤子は強引で少し荒っぽいが、頼れる存在だった。言いたいことははっきり言うし、やるべきことは容赦なく押し付けてくるが、不思議と嫌な感じはしなかった。むしろ、困ったときに助けてくれることの方が多かった。2年生のときに一番世話になったのは、間違いなく彼女だった。感謝していたけれど、素直に「ありがとう」と伝えるのは少し気恥ずかしかった。

 一方、青子とはクラスが分かれ、最初のうちはお互い慣れるまでDMで話していた。主に新しいクラスへの不安や、共通の友達であるRのことについて話すことが多かった。でも、時間が経つにつれてお互いの生活に慣れ、話す頻度は減っていった。6月ごろには、ほとんど連絡を取らなくなっていた。僕はその変化をどこか寂しく感じていたが、どうすることもできなかった。

 そんなとき、文化祭の準備が始まった。クラスではそれぞれが役割を持ち、だんだんと団結していく雰囲気が生まれていた。しかし、僕にとってこの文化祭は単なる行事ではなかった。

 「ここでいいところを見せて、もう一度青子にアタックしよう」

 そんな決意を胸に、僕は文化祭の準備に全力を注ぐことにした。同時に、期末テストも控えていたため、勉強もおろそかにできなかった。どちらも全力で取り組みながら、僕は自分自身を追い込んでいった。

 文化祭の準備は想像以上にハードだった。装飾の手伝い、準備の調整、役割分担。僕は積極的に動き、クラスの中心にいることを意識した。昼休みも放課後も準備に明け暮れ、家に帰る頃にはクタクタになっていた。さらに期末テストの勉強もあり、寝る時間を削って机に向かう日々が続いた。徹夜が増え、体は限界を迎えつつあった。それでも、僕の頭の中には彼女のことしかなかった。

 「どうすれば、もう一度僕のことを意識してもらえるのか」

 ただそればかりを考えていた。

 しかし、文化祭が近づくにつれ、僕は次第に違和感を覚え始めた。僕の努力は本当に彼女のためなのか? それとも、ただ自分が認められたいだけなのか? 「青子のため」という大義名分のもとで、僕は自分に酔っているのではないか。そんな疑問が頭をよぎるようになった。

 クラスの中での僕の立ち位置は確かに変わりつつあった。赤子をはじめとするクラスメイトとも関わる機会が増え、少しずつ自分の居場所を築いているように感じていた。青子がいなくても、僕はここで生きていけるのではないか。そう思う自分もいた。

 それでも、心のどこかで彼女に振り向いてほしい気持ちは消えなかった。文化祭本番が近づく中で、僕は自分の気持ちの揺れを持て余していた。果たして、僕の努力は報われるのか。そして、青子との関係はどうなっていくのか。

 文化祭の幕が上がるとき、僕の答えもまた見えてくるのかもしれない。
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