そして何もなかった

平 昌綱

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クラスTシャツと交渉

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7月の2週目、ようやく期末テストが終わった。長かったテスト期間を乗り越え、ようやく文化祭の準備に本腰を入れることができる。僕はすぐに動き出し、まずはクラスTシャツの手配に取りかかった。毎年、2年生のクラスTシャツはサッカーユニフォーム風のデザインが人気で、今年もその流れに沿う形になりそうだった。

 僕は一から見積もりを取り、20社に連絡して最安のところを探し、デザインの自由度が高い会社を必死に見つけ出した。費用を抑えつつ、クラス全員が納得できるデザインにするために、妥協点を探る必要があった。全員の意見を聞きながら進めるのは思った以上に大変で、すでに神経をすり減らしていたが、それでも「ここでいいところを見せるんだ」という思いが僕を突き動かしていた。

 ところが、最初のトラブルが起きた。デザインのアンケートを取ってみると、男子の大半は白を基調としたユニフォームを希望していた。清潔感があって爽やかだから、という理由だった。しかし、女子からは強い反対の声が上がった。「透けるのが嫌だ」とのことだった。

 クラス全体の意見をまとめるのは容易ではなかった。男子たちは「白がかっこいい」と主張し、女子たちは「そんなの絶対に嫌だ」と譲らない。間に立つ僕は、どうすれば双方が納得できるのか頭を抱えた。

 何度も話し合いを重ね、最終的に青を基調としたユニフォームにすることで妥協点を見つけた。しかし、この交渉の過程で、僕はどうしても自分の力だけでは足りないことを痛感した。男子の意見を説得し、女子の不満を抑え、全体の意見をまとめるには、僕一人ではどうにもならなかった。

 そこで、僕は思い切って青子に相談することにした。クラスは違っても、彼女なら何かアドバイスをくれるかもしれないと思ったからだ。青子は話を聞くと、「それなら赤子に頼んでみたら?」と提案してくれた。

 赤子は気が強く、クラスの女子たちの中心的な存在だった。彼女が動けば、女子たちの意見をうまくまとめてくれるかもしれない。青子が赤子に話をしてくれたおかげで、赤子は快く引き受けてくれ、女子たちを説得してくれた。

 後から聞いた話だが、実は青子も裏で僕をサポートしてくれていたらしい。彼女なりにクラスTシャツの件を気にかけてくれていたのだ。でも、その時の僕はそんなことに気づく余裕がなかった。ただ、なぜか心のどこかで彼女の存在を感じていた。そして、僕はなんとかこの難局を乗り越えることができた。

 文化祭の準備はまだ始まったばかりだったが、この経験を通じて、僕は少しだけ成長した気がした。自分ひとりで何とかしようとするのではなく、人を頼ることの大切さを知った。そして、青子の存在の大きさを改めて実感した。

 「まだ、彼女との関係は終わっていないのかもしれない」

 そんな思いが、静かに胸の中で芽生え始めていた。
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