Epic

すずかけあおい

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Epic①

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 寂しいのはキライ。



 放課後の空き教室。

「あっ…や、そこ…だめ…」

 腰を掴まれ、奥まで熱いものでいっぱいになる。加減なく突かれると心にぽっかり空いた穴も塞がれて寂しさが消えていく。

「も、イッ…あ…っ!」

 限界に身体がびくびくと震える。相手も小さく身体を震わせて達する。くたりと力が抜けた時の、この満たされた感じ。かえでの求めるものはこの充足感。これだけが寂しさを忘れさせてくれる。



 制服を適当に整える。T高校に進学して正解だった。ここは校舎が大きくて空き教室がたくさんあるからセックスする場所に悩む事がない。よく知らない相手を家に連れ込むなんて嫌だしホテルも制服では入れない。楓が男を家に連れ込んだところで、無関心な親は何も言わないだろうけれど。
…なんて、中学三年時点の楓には、まさか自分がこんな風になっているなんて想像もできなかったけれど。

『義務教育を終えたらあなたの身体はあなたのものだから好きに使いなさい』

 親はいつでも楓にそう言って聞かせた。
義務教育を終えた途端に両親は楓に冷たくなった。それまではそれが親の義務だったからか、成績がよければ褒めてくれたし、一緒に買い物や食事に行く事もあった。中学卒業までは親の温もりがあったのに。高校に上がってからは口も利かない。大好きだった美味しい母の手料理も楓の分が用意される事はなくなった。月に一度、一か月分の生活費という意味だと思うが、いくらかのお金が口座に振り込まれる。一緒に住んでいるのに直接渡される事はない。ただ家の中に存在している事だけは認識している程度の関わり。

 最初は楓も戸惑った。両親が大好きだったから。でも楓がどうやっても温もりは戻ってこなかった。だから諦めて寂しさを埋める方法を考えた。顔立ちが可愛らしく生まれた事で、方法はすぐに見つかった。

男に抱かれる。

楓の身体で満足して射精する相手がいる事で自分が必要とされているようで心が満たされる。プラス楓も気持ちいい。最高の方法だった。

恩田おんだちゃん」
「…苗字で呼ぶのはやめてって言った」

 冷たい両親と同じ姓。胸が苦しくなるから楓は苗字で呼ばれたくない。

「ごめんごめん、楓ちゃん。来週もいい?」
「いいけど」
「ありがと。じゃまた来週」

 次週の約束をして今日の相手は去って行く。そういえば名前はなんだっただろうか。聞いたけれど忘れてしまった。でも名前なんて必要ない。身体があればそれで事足りるのだから。

 晩御飯をコンビニで購入する。またあの家に帰るのか、と少し憂鬱になるが他に帰る場所もない。なるべくゆっくり歩いて家への道のりを進む。また一日が終わりに近づく。
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