4 / 10
きみとずっと④
しおりを挟む
翌日も水沢と一緒にパンを食べた。
「あー、また水沢と食べてる」
「うん。いいでしょ」
「な、水沢転校するってほんと?」
「……本当だ」
仲村の友だちが寄ってくると、昨日と違って水沢も話に加わっている。でも、緊張気味に頬が強張っているし、あまり楽しそうではない。自分とふたりで話しているときとは大違いだ。
友だちが去ると、水沢は深い息を吐き出した。
「疲れた。人と話すのは疲れる」
首や肩を動かして、力を抜いている姿に首をかしげる。
「俺と話すのも疲れる?」
もしそうならば、あまり話しかけないほうがいいかもしれない。若干の不安とともに水沢に問うと、相手はふいと視線を逸らした。
「……仲村は別」
「よかった」
仲村がほっとすると、水沢は目を逸らしたまま口をもごもごと動かした。なにか言おうか言うまいか、悩んでいるように見える。
「どうしたの?」
「……」
水沢は綺麗な形の唇を開いて閉じて、そのまま引き結んだ。小さく首を左右に振って、ひとつ息を吐き出している。そのままなんとなく無言になって、ふたりでパンを食べる。
水沢はもうすぐ引っ越してしまう。長く一緒にいられないのだと思ったら、時間がもったいなく感じた。
「明日遊ぼうよ」
「え?」
「休みだし。あ、なにか用事ある?」
「ない、けど」
唇を結んだあとに頷いてくれたので、オーケーということだ。早速張り切って行き先を相談する。水沢はどういうところが好きなのだろう。
「水沢はどこ行きたい?」
「公園」
「公園?」
「そう。公園が好き」
ゲームセンターとか映画とか、そういう答えを想像していた。スマートフォンを出して、近くの大きな公園を検索する。
「せっかくだから、めちゃくちゃ大きい公園に行こうよ」
そんなところが近くにあるのかはわからないが、できるだけ大きいところのほうが水沢が喜びそうだ。
スマートフォンで公園を調べていると、視線を感じて顔をあげる。水沢がじっと見ていた。
「仲村って珍しいな」
「なんで?」
そんなに変わったところがあるだろうか。自分ではわからないし、特段珍しさなんてない平凡な存在だと思っていた。
「なんかわからないけど、普通と違う」
「どういう意味?」
「うん、なんだろうな」
言った水沢も不思議そうにしているので、ふたりで首をかしげた。
水沢は、ときどきよくわからない。
「あー、また水沢と食べてる」
「うん。いいでしょ」
「な、水沢転校するってほんと?」
「……本当だ」
仲村の友だちが寄ってくると、昨日と違って水沢も話に加わっている。でも、緊張気味に頬が強張っているし、あまり楽しそうではない。自分とふたりで話しているときとは大違いだ。
友だちが去ると、水沢は深い息を吐き出した。
「疲れた。人と話すのは疲れる」
首や肩を動かして、力を抜いている姿に首をかしげる。
「俺と話すのも疲れる?」
もしそうならば、あまり話しかけないほうがいいかもしれない。若干の不安とともに水沢に問うと、相手はふいと視線を逸らした。
「……仲村は別」
「よかった」
仲村がほっとすると、水沢は目を逸らしたまま口をもごもごと動かした。なにか言おうか言うまいか、悩んでいるように見える。
「どうしたの?」
「……」
水沢は綺麗な形の唇を開いて閉じて、そのまま引き結んだ。小さく首を左右に振って、ひとつ息を吐き出している。そのままなんとなく無言になって、ふたりでパンを食べる。
水沢はもうすぐ引っ越してしまう。長く一緒にいられないのだと思ったら、時間がもったいなく感じた。
「明日遊ぼうよ」
「え?」
「休みだし。あ、なにか用事ある?」
「ない、けど」
唇を結んだあとに頷いてくれたので、オーケーということだ。早速張り切って行き先を相談する。水沢はどういうところが好きなのだろう。
「水沢はどこ行きたい?」
「公園」
「公園?」
「そう。公園が好き」
ゲームセンターとか映画とか、そういう答えを想像していた。スマートフォンを出して、近くの大きな公園を検索する。
「せっかくだから、めちゃくちゃ大きい公園に行こうよ」
そんなところが近くにあるのかはわからないが、できるだけ大きいところのほうが水沢が喜びそうだ。
スマートフォンで公園を調べていると、視線を感じて顔をあげる。水沢がじっと見ていた。
「仲村って珍しいな」
「なんで?」
そんなに変わったところがあるだろうか。自分ではわからないし、特段珍しさなんてない平凡な存在だと思っていた。
「なんかわからないけど、普通と違う」
「どういう意味?」
「うん、なんだろうな」
言った水沢も不思議そうにしているので、ふたりで首をかしげた。
水沢は、ときどきよくわからない。
0
あなたにおすすめの小説
あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
死ぬほど嫌いな上司と付き合いました
三宅スズ
BL
社会人3年目の皆川涼介(みながわりょうすけ)25歳。
皆川涼介の上司、瀧本樹(たきもといつき)28歳。
涼介はとにかく樹のことが苦手だし、嫌いだし、話すのも嫌だし、絶対に自分とは釣り合わないと思っていたが‥‥
上司×部下BL
僕の恋人は、超イケメン!!
刃
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?
ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる
cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。
「付き合おうって言ったのは凪だよね」
あの流れで本気だとは思わないだろおおお。
凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?
αとβじゃ番えない
庄野 一吹
BL
社交界を牽引する3つの家。2つの家の跡取り達は美しいαだが、残る1つの家の長男は悲しいほどに平凡だった。第二の性で分類されるこの世界で、平凡とはβであることを示す。
愛を囁く二人のαと、やめてほしい平凡の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる