初恋迷子

すずかけあおい

文字の大きさ
7 / 13

初恋迷子⑦

しおりを挟む
「真弥、あーん」
 いつものように食べさせてくれる和惟にせつなくなる。和惟が言っていた、「幸せだけどせつなくなる」とはこういうことかもしれない。自分と同じ気持ちで好きになってほしくてつらい。
「真弥、本当にどうしたの?」
「え?」
「ここのところ、ずっと様子がおかしいよ」
「……」
 伝えたい。でも伝えて勘違いだったらと思うと怖い。
「和惟はどうして俺を甘やかしてくれるの?」
 こんなにいろいろとしてくれる理由が知りたい。幼馴染からという理由だったら立ち直れないけれど。
 小さい頃から変わらない優しさを真弥に向けてくれる和惟に、甘えすぎているのかもしれない。
「どうしてだろうね?」
 はぐらかすように微笑まれ、つきんと胸が痛む。教えてくれないということは、大きな理由はないのだろうか。真弥が特別だからではないのかも――。
「相変わらずだな」
 平松が来て、呆れた瞳を向けてくる。平松の姿を見るのは久しぶりだ。なにか用だろうか。
「村上、これ。ありがと」
「ああ、うん」
 平松は和惟に教科書を返す。いつの間に仲良くなったのか、全然気がつかなかった。真弥が平松に会うのは久しぶりだけれど、和惟は平松とよく会ったり話したりしているのかもしれない――心にもやが広がる。
「落書きしてないだろうね」
「しねえよ」
「どうだか。おまえは恩を仇で返すタイプだ」
「勝手なイメージを持つな」
 思ったことをずばずばと言う和惟は、真弥といるときとは違う。心のもやがどんどん深く濃くなっていく。お腹の奥が重くなるような苦しさまで覚え、ふたりから視線を逸らした。
 平松に和惟を取られたくない。和惟をひとり占めしたい。
 自分勝手な願いが次々起こる。わがままで、相手のためにならない気持ちが「好き」?
「……」
 違う。こんなのはただの子どもだ。こんな気持ちになるなら「好き」なんていらない。醜くて汚い気持ちは嫌だ。
 真弥はわずかに俯いて、和惟に気がつかれないように唇を噛んだ。

「真弥、今日はどうだった?」
 この質問はなんのためだろう。和惟がなにを知りたいのかがわからない。
「――『好き』なんていらない」
「誰かを好きになったの?」
 驚きに表情を変えた和惟に、真弥は首を左右に振る。こんな気持ちが自分の中にあるなんて思いたくない。
「誰を好きになったの? 教えて」
「なってない! 『好き』なんて嫌だ!」
 和惟を置いて、その場から逃げ出す。和惟が真弥を呼ぶ声が追いかけてきたが、振り返らなかった。
 走って帰宅し、部屋に飛び込む。
 和惟にこんな汚い気持ちを向けていることがばれたら嫌われる。「好き」なんていらない。和惟は真弥のように自分の気持ちにうしろめたさを感じている様子はないから、やはり和惟の「好き」と真弥の「好き」は違うのだ。
 和惟に嫌われなくない。もう「好き」なんていらない。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結・BL】春樹の隣は、この先もずっと俺が良い【幼馴染】

彩華
BL
俺の名前は綾瀬葵。 高校デビューをすることもなく入学したと思えば、あっという間に高校最後の年になった。周囲にはカップル成立していく中、俺は変わらず彼女はいない。いわく、DTのまま。それにも理由がある。俺は、幼馴染の春樹が好きだから。だが同性相手に「好きだ」なんて言えるはずもなく、かといって気持ちを諦めることも出来ずにダラダラと片思いを続けること早数年なわけで……。 (これが最後のチャンスかもしれない) 流石に高校最後の年。進路によっては、もう春樹と一緒にいられる時間が少ないと思うと焦りが出る。だが、かといって長年幼馴染という一番近い距離でいた関係を壊したいかと問われれば、それは……と踏み込めない俺もいるわけで。 (できれば、春樹に彼女が出来ませんように) そんなことを、ずっと思ってしまう俺だが……────。 ********* 久しぶりに始めてみました お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

雪色のラブレター

hamapito
BL
俺が遠くに行っても、圭は圭のまま、何も変わらないから。――それでよかった、のに。 そばにいられればいい。 想いは口にすることなく消えるはずだった。 高校卒業まであと三か月。 幼馴染である圭への気持ちを隠したまま、今日も変わらず隣を歩く翔。 そばにいられればいい。幼馴染のままでいい。 そう思っていたはずなのに、圭のひとことに抑えていた気持ちがこぼれてしまう。 翔は、圭の戸惑う声に、「忘れて」と逃げてしまい……。

【R18+BL】甘い鎖~アイツの愛という名の鎖に、縛られ続けたオレは……~

hosimure
BL
オレの1つ年上の幼馴染は、強いカリスマを持つ。 同性でありながら、アイツは強くオレを愛する。 けれど同じ男として、オレは暗い感情をアイツに持ち続けていた。 だがそれと同時にオレ自身もアイツへの気持ちがあり、そのはざまで揺れ続けていた。 ★BL小説&R18です。

キミとキスの練習がしたい 〜親友から迫られる俺の話〜

キトー
BL
  幼馴染で親友の卓が「キスの練習をしよう」と言い出した。 なんだかんだで流されながらどんどん行為はエスカレートして……。 気分転換に勢いに任せて書いた文章です(笑) ギャグだと思ってお読み下さい。 5話で完結です。 ※ほぼ全てにキスまたはそれ以上の描写が含まれています。ネタバレを避ける為注意表記はいたしませんのでご了承下さい。 ※ムーンライトノベルズにも投稿しています。

平凡な僕が優しい彼氏と別れる方法

あと
BL
「よし!別れよう!」 元遊び人の現爽やか風受けには激重執着男×ちょっとネガティブな鈍感天然アホの子 昔チャラかった癖に手を出してくれない攻めに憤った受けが、もしかしたら他に好きな人がいる!?と思い込み、別れようとする……?みたいな話です。 攻めの女性関係匂わせや攻めフェラがあり、苦手な人はブラウザバックで。    ……これはメンヘラなのではないか?という説もあります。 pixivでも投稿しています。 攻め:九條隼人 受け:田辺光希 友人:石川優希 ひよったら消します。 誤字脱字はサイレント修正します。 また、内容もサイレント修正する時もあります。 定期的にタグ整理します。ご了承ください。 批判・中傷コメントはお控えください。 見つけ次第削除いたします。

素直に同棲したいって言えよ、負けず嫌いめ!ー平凡で勉強が苦手な子が王子様みたいなイケメンと恋する話ー

美絢
BL
 勉強が苦手な桜水は、王子様系ハイスペックイケメン幼馴染である理人に振られてしまう。にも関わらず、ハワイ旅行に誘われて彼の家でハウスキーパーのアルバイトをすることになった。  そこで結婚情報雑誌を見つけてしまい、ライバルの姫野と結婚することを知る。しかし理人は性的な知識に疎く、初夜の方法が分からないと告白される。  ライフイベントやすれ違いが生じる中、二人は同棲する事ができるのだろうか。【番外はじめました→ https://www.alphapolis.co.jp/novel/622597198/277961906】

【完結】かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい

日向汐
BL
番外編はTwitter(べったー)に載せていきますので、よかったらぜひ🤲 ⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆ 過保護なかわいい系美形の後輩。 たまに見せる甘い言動が受けの心を揺する♡ そんなお話。 ⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆ 【攻め】 雨宮千冬(あめみや・ちふゆ) 大学1年。法学部。 淡いピンク髪、甘い顔立ちの砂糖系イケメン。 甘く切ないラブソングが人気の、歌い手「フユ」として匿名活動中。 【受け】 睦月伊織(むつき・いおり) 大学2年。工学部。 黒髪黒目の平凡大学生。ぶっきらぼうな口調と態度で、ちょっとずぼら。恋愛は初心。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

処理中です...