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初恋迷子⑧
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和惟となんとなく気まずくなっている。彼は真弥が好きになった相手を知りたがるが、言えるはずがない。全部自分が和惟を好きになったことが悪いのだ。落ち込みがどんどんひどくなっていく。
昼休みになり、和惟がいない。お弁当を机に置いて、和惟を探して教室を出て足が止まった。和惟は隣の教室の前で平松と話をしていた。真弥のいる位置に背を向けた状態の和惟は、どんな表情をしているのだろう。
途端胸に黒いものが広がった。俺以外に笑わないで、誰も和惟に近づかないで――そんな自分勝手なことを考える自分が嫌になる。
平松が真弥に気がつき、和惟になにか声をかけた。和惟が振り向き、その優しい表情を見たら胸が締めつけられるように痛んだ。
「あーん」
「……」
お弁当を食べさせてくれるけれど、口を開けるのもつらい。口角を強引にあげても、すぐに唇がへの字にさがる。不機嫌さを丸出しの自分も情けなくて、ますます暗い気持ちになる。
「真弥、なにかあった?」
「……平松と仲いいね」
汚い気持ちが滑り出て、慌てて口を手で押さえる。言ってはいけないのに言ってしまった。
「なんで平松?」
「そういうの、気に入らない」
和惟は不思議そうにしているけれど、先ほどだってその前だって楽しそうに話をしていた。和惟が真弥以外に言葉を発するのさえ気に入らない。
「どういう意味?」
「……」
「真弥、教えて?」
「……和惟が好きだから」
驚きを隠さない和惟の表情がどんどん緩んでいく。嬉しそうに目尻をさげた和惟に、真弥は疑念をいだく。どうしてそんなに嬉しそうにしているのかわからない。
「俺のは恋愛の意味で、和惟の『好き』とは違うけど」
これは言っておかないと、とつけ足すと、和惟は首を横に振った。動きにあわせて栗色の髪が揺れる。
「違わないよ。俺だって恋愛感情で真弥が好きだ」
今度は真弥が驚いた。和惟は真弥のように真っ黒な気持ちにならないのだろうか。気持ちが通じていて喜ぶべきなのかもしれないけれど、喜べるわけがない。
「俺は『好き』なんていらない。こんなの嫌だ」
「どうして?」
「……言ったら和惟は俺を嫌いになるから、言わない」
和惟が平松といると、どろどろとした汚泥のような醜く重い感情が心で渦巻く。平松だけではない。和惟が真弥以外の誰かといると気にいらないなんて、そんな子どもみたいなわがままは言えるはずがない。
「俺が真弥を嫌いになんてなるはずない。大丈夫だから言ってみて」
「……もやもやしたり、お腹が苦しくなったり心が真っ黒になったりして、つらい」
和惟の言葉を信じて心の内を告げると、和惟は蕩けそうな笑みを浮かべた。頬も目尻も緩んでいて、満面に「嬉しい」と書いてある。
「じゃあ、ゆっくり『好き』を好きになっていこう? 真弥は俺が好きなんだね?」
「――うん」
「そっかあ。真弥の初恋になれたんだ」
頭を撫でられ、心が跳びはねる。和惟が真弥を見ていて真弥と話していてくれれば優しい気持ちになれるのに、真弥以外だとだめだ。すぐに心が黒く染まる。恋とはもっと甘酸っぱくて可愛い感情ではないのか。
「俺が好きなのかあ」
こくり、とひとつ頷く。申し訳ない気持ちでいっぱいだ。こんなに汚い心を好きになれる日なんて、絶対に来ない。
昼休みになり、和惟がいない。お弁当を机に置いて、和惟を探して教室を出て足が止まった。和惟は隣の教室の前で平松と話をしていた。真弥のいる位置に背を向けた状態の和惟は、どんな表情をしているのだろう。
途端胸に黒いものが広がった。俺以外に笑わないで、誰も和惟に近づかないで――そんな自分勝手なことを考える自分が嫌になる。
平松が真弥に気がつき、和惟になにか声をかけた。和惟が振り向き、その優しい表情を見たら胸が締めつけられるように痛んだ。
「あーん」
「……」
お弁当を食べさせてくれるけれど、口を開けるのもつらい。口角を強引にあげても、すぐに唇がへの字にさがる。不機嫌さを丸出しの自分も情けなくて、ますます暗い気持ちになる。
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「……平松と仲いいね」
汚い気持ちが滑り出て、慌てて口を手で押さえる。言ってはいけないのに言ってしまった。
「なんで平松?」
「そういうの、気に入らない」
和惟は不思議そうにしているけれど、先ほどだってその前だって楽しそうに話をしていた。和惟が真弥以外に言葉を発するのさえ気に入らない。
「どういう意味?」
「……」
「真弥、教えて?」
「……和惟が好きだから」
驚きを隠さない和惟の表情がどんどん緩んでいく。嬉しそうに目尻をさげた和惟に、真弥は疑念をいだく。どうしてそんなに嬉しそうにしているのかわからない。
「俺のは恋愛の意味で、和惟の『好き』とは違うけど」
これは言っておかないと、とつけ足すと、和惟は首を横に振った。動きにあわせて栗色の髪が揺れる。
「違わないよ。俺だって恋愛感情で真弥が好きだ」
今度は真弥が驚いた。和惟は真弥のように真っ黒な気持ちにならないのだろうか。気持ちが通じていて喜ぶべきなのかもしれないけれど、喜べるわけがない。
「俺は『好き』なんていらない。こんなの嫌だ」
「どうして?」
「……言ったら和惟は俺を嫌いになるから、言わない」
和惟が平松といると、どろどろとした汚泥のような醜く重い感情が心で渦巻く。平松だけではない。和惟が真弥以外の誰かといると気にいらないなんて、そんな子どもみたいなわがままは言えるはずがない。
「俺が真弥を嫌いになんてなるはずない。大丈夫だから言ってみて」
「……もやもやしたり、お腹が苦しくなったり心が真っ黒になったりして、つらい」
和惟の言葉を信じて心の内を告げると、和惟は蕩けそうな笑みを浮かべた。頬も目尻も緩んでいて、満面に「嬉しい」と書いてある。
「じゃあ、ゆっくり『好き』を好きになっていこう? 真弥は俺が好きなんだね?」
「――うん」
「そっかあ。真弥の初恋になれたんだ」
頭を撫でられ、心が跳びはねる。和惟が真弥を見ていて真弥と話していてくれれば優しい気持ちになれるのに、真弥以外だとだめだ。すぐに心が黒く染まる。恋とはもっと甘酸っぱくて可愛い感情ではないのか。
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こくり、とひとつ頷く。申し訳ない気持ちでいっぱいだ。こんなに汚い心を好きになれる日なんて、絶対に来ない。
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