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上級糖度
上級糖度⑥
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「……獅堂さんのこと、知りたい」
「そうだな。僕ももっと央季を知りたいから、教えてほしい」
頷いて、力強い腕に身体を委ねる。優しいにおいを、今まで知らなかった。
「獅堂さんって仕事なにしてんの?」
近づきすぎることが怖くて、今まで聞けなかった。獅堂を知ってのめり込んで、抜け出せなくなるのが嫌だった。とっくに抜け出せなくなっていたことに、自分でも気がついていなかった。
「店舗経営だよ。luminousというケーキ屋を知ってる?」
「高級パティスリーじゃん。え、獅堂さんてパティシエなの?」
首を横に振った獅堂が央季の手を取り、互い違いに指を組む。急に近くなった距離感にどきどきして止まらない。心臓が壊れそうだ。
「高校の頃の友人がパティシエなんだ。でも経営に関してのことがまったくだめでね。僕が共同経営という形で数字関連のことを引き受けたんだ」
「獅堂さんって頭よさそうだもんね。すげ、……すごい」
気が抜けていつもの口調になってしまい、慌てて言い直す。それでも獅堂は呆れた顔なんて微塵も見せず、ただ微笑んでいる。
「そういえば前にそこのケーキ買ってきてくれたよね」
「ああ。覚えていてくれたんだな」
えらいな、とまた頭を撫でられる。不思議と子ども扱いされている感じがなくて、むしろひどく甘やかされている気分になる。
「央季をひと目見て、どこか素直そうじゃないところも優しそうなところも、全部思いきり可愛がりたいと思った。一緒にいればいるほど、央季が好きになっていくんだ」
「獅堂さんが……俺を」
「そうだよ。僕が央季を好きなんだ」
「……俺だって好きだし」
負けたくなくて唇を尖らせると、獅堂は破顔して指の腹で唇をふにふにと押してきた。優しい手つきに、とろんと甘い空気になる。
「央季」
綺麗な顔が近づいてきて瞼をおろすと、柔らかいものが重なった。すぐに離れていった温もりを追いかけるように、獅堂のうなじに手をまわして引き寄せる。
「獅堂、さん」
顔を離した獅堂は「まいったな」と苦笑する。がっつきすぎだろうか。
「可愛すぎて我慢ができなくなりそうだ」
その意味を理解して頬がぼっと熱くなった。火照るという表現を超えるほど熱い頬を隠すように、少し俯く。獅堂はやはり穏やかな手つきで頭を撫でてくれた。
「……俺、けっこう一途だよ」
「そうだな。でも経験はありそうだ」
「……」
それは、ともごもごと口ごもると、獅堂はおかしそうに声をあげて笑う。
「いじめるつもりはないんだ。でも、嫉妬はするかな」
「嫉妬?」
「彼女? 彼氏? いつ?」
「……中学のとき、彼女がいたけど」
獅堂は片眉をぴくりとあげ、自身の唇を指で撫でる。どこか思案した表情を浮かべたあと、少し首をかしげた。
「じゃあ央季にいろいろと教えてもらおうかな」
「え?」
「……帰り、遅くなってもかまわないか?」
指先で頬をなぞられ、ぞくんと背筋に甘い感覚が走る。言葉の意味がわからないほど鈍感ではない。
「がっついていると思われるかもしれないけど、可愛い央季を知りたいのをずっと我慢してたんだ。だからもっと央季のことを教えてほしい。僕は未熟な大人だから、央季がリードしてくれ」
「……っ」
かああっと頬がいっそう熱くなり、目が見られない。そんな央季のうなじを捕まえて、またキスをされる。
「教えて? キスはどうやるんだ?」
「そんなの……知ってるくせに」
「わからないな。ほら、央季」
至近距離で綺麗な唇が動いている。おずおずと央季から唇を合わせてすぐに離れるが、獅堂は不満そうだ。
「央季を知りたいんだ。もっとちゃんとキスを教えてくれ」
ほら、と瞼をおろした獅堂に、どきどきしながらもう一度口づける。勇気を出して舌で獅堂の唇を舐めたら、なぜか央季がぞくぞくした。唇が薄く開いたけれど、獅堂相手に央季がリードするなんて、どう考えても無理だ。
「もう無理っ、獅堂さんの意地悪」
ソファの上で膝をかかえると、獅堂がくくっと声を殺して笑った。やはりからかっていたのだ。
「それじゃ、ベッドで教えてもらおうかな」
「え、まだそれ続くの?」
「当たり前だよ。リードしてもらわないと、僕にはわからない」
「……」
獅堂さん、ずるい。
獅堂がわからないはずがない。それでもこんなふうに甘えてくれるようなやり取りが嬉しい。期待に応えられるかはわからないが、頑張らないと、と獅堂の手を引いた。
「そうだな。僕ももっと央季を知りたいから、教えてほしい」
頷いて、力強い腕に身体を委ねる。優しいにおいを、今まで知らなかった。
「獅堂さんって仕事なにしてんの?」
近づきすぎることが怖くて、今まで聞けなかった。獅堂を知ってのめり込んで、抜け出せなくなるのが嫌だった。とっくに抜け出せなくなっていたことに、自分でも気がついていなかった。
「店舗経営だよ。luminousというケーキ屋を知ってる?」
「高級パティスリーじゃん。え、獅堂さんてパティシエなの?」
首を横に振った獅堂が央季の手を取り、互い違いに指を組む。急に近くなった距離感にどきどきして止まらない。心臓が壊れそうだ。
「高校の頃の友人がパティシエなんだ。でも経営に関してのことがまったくだめでね。僕が共同経営という形で数字関連のことを引き受けたんだ」
「獅堂さんって頭よさそうだもんね。すげ、……すごい」
気が抜けていつもの口調になってしまい、慌てて言い直す。それでも獅堂は呆れた顔なんて微塵も見せず、ただ微笑んでいる。
「そういえば前にそこのケーキ買ってきてくれたよね」
「ああ。覚えていてくれたんだな」
えらいな、とまた頭を撫でられる。不思議と子ども扱いされている感じがなくて、むしろひどく甘やかされている気分になる。
「央季をひと目見て、どこか素直そうじゃないところも優しそうなところも、全部思いきり可愛がりたいと思った。一緒にいればいるほど、央季が好きになっていくんだ」
「獅堂さんが……俺を」
「そうだよ。僕が央季を好きなんだ」
「……俺だって好きだし」
負けたくなくて唇を尖らせると、獅堂は破顔して指の腹で唇をふにふにと押してきた。優しい手つきに、とろんと甘い空気になる。
「央季」
綺麗な顔が近づいてきて瞼をおろすと、柔らかいものが重なった。すぐに離れていった温もりを追いかけるように、獅堂のうなじに手をまわして引き寄せる。
「獅堂、さん」
顔を離した獅堂は「まいったな」と苦笑する。がっつきすぎだろうか。
「可愛すぎて我慢ができなくなりそうだ」
その意味を理解して頬がぼっと熱くなった。火照るという表現を超えるほど熱い頬を隠すように、少し俯く。獅堂はやはり穏やかな手つきで頭を撫でてくれた。
「……俺、けっこう一途だよ」
「そうだな。でも経験はありそうだ」
「……」
それは、ともごもごと口ごもると、獅堂はおかしそうに声をあげて笑う。
「いじめるつもりはないんだ。でも、嫉妬はするかな」
「嫉妬?」
「彼女? 彼氏? いつ?」
「……中学のとき、彼女がいたけど」
獅堂は片眉をぴくりとあげ、自身の唇を指で撫でる。どこか思案した表情を浮かべたあと、少し首をかしげた。
「じゃあ央季にいろいろと教えてもらおうかな」
「え?」
「……帰り、遅くなってもかまわないか?」
指先で頬をなぞられ、ぞくんと背筋に甘い感覚が走る。言葉の意味がわからないほど鈍感ではない。
「がっついていると思われるかもしれないけど、可愛い央季を知りたいのをずっと我慢してたんだ。だからもっと央季のことを教えてほしい。僕は未熟な大人だから、央季がリードしてくれ」
「……っ」
かああっと頬がいっそう熱くなり、目が見られない。そんな央季のうなじを捕まえて、またキスをされる。
「教えて? キスはどうやるんだ?」
「そんなの……知ってるくせに」
「わからないな。ほら、央季」
至近距離で綺麗な唇が動いている。おずおずと央季から唇を合わせてすぐに離れるが、獅堂は不満そうだ。
「央季を知りたいんだ。もっとちゃんとキスを教えてくれ」
ほら、と瞼をおろした獅堂に、どきどきしながらもう一度口づける。勇気を出して舌で獅堂の唇を舐めたら、なぜか央季がぞくぞくした。唇が薄く開いたけれど、獅堂相手に央季がリードするなんて、どう考えても無理だ。
「もう無理っ、獅堂さんの意地悪」
ソファの上で膝をかかえると、獅堂がくくっと声を殺して笑った。やはりからかっていたのだ。
「それじゃ、ベッドで教えてもらおうかな」
「え、まだそれ続くの?」
「当たり前だよ。リードしてもらわないと、僕にはわからない」
「……」
獅堂さん、ずるい。
獅堂がわからないはずがない。それでもこんなふうに甘えてくれるようなやり取りが嬉しい。期待に応えられるかはわからないが、頑張らないと、と獅堂の手を引いた。
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