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キスして②
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翌日学校に着くとすぐに楓磨に捕まり、校舎裏に連れていかれた。話なんてないと言っているのに腕を掴んで離してくれず、引きずるように連れていかれる。楓磨の頬は薄く痣になっていて少し申し訳ない気持ちになる。でも悪いのは楓磨だ。
校舎裏に着くと同時に土下座をされた。無視して教室に戻りたいのに、そこまでする楓磨に同情心が湧く。
「本当にごめんなさい。反省してます」
「……」
ふざけてキスをして、「反省している」で済むわけがない。同情は禁物だ。
楓磨に背を向ける。
「二度と声かけないで」
「……もう友達じゃない?」
「うん」
そのまま楓磨を置いて教室へ足を向ける。
可哀想かな、と胸が少しちくちく痛むけれど、でもここで俺が許したらだめな気がする。振り向かずにまっすぐ教室に向かった。
楓磨はもう話しかけてこなかった。俺はひとりで本を読む。視線を感じるけれど無視する。本を読んでいればひとりでも楽しいから、それでいい。
友達なんてもういらない。
楓磨と口をきかなくなって二週間が経った。楓磨はまだ俺を見ているけれど、そろそろ休憩も終わって新しい彼女を作るだろうし、そうしたら俺ばかり見ているわけにはいかなくなる。これで完全に終われる。そう考えてちくんと胸が痛む。
楓磨が女子に声をかけられてふたりで教室を出ていくのが視界の隅に映った。次の彼女か、とため息をつく。本当にどうしようもない男だ、そう思いながらも心の奥には楓磨が嫌いになり切れない自分がいる。
高一の初めに出会い、いつも声をかけて仲良くしてくれた。女子を紹介しよう、と余計なことを言うかと思えば、敦弥は真面目でいいなあ、などと言って羨望の眼差しを向ける。
楓磨は不真面目なのではなく、人がよすぎるだけ。告白してきた女子が傷つくのが可哀想だからとつき合って、結局女子から振られる。毎回、「楓磨くん、なんか違う」と言われるらしい。
勝手な理想を押しつけられて夢を見られるのもたまったものではないだろう。それでも楓磨は相手を責めずに「ごめんね」と言う。どこまでも馬鹿だ。
軽いわけではないのに軽く見られ、遊んでいるわけでもないのに遊び人扱いされて。
交友関係が広いようでいて、近づく女子は楓磨の見た目のよさにみんな彼女の座を狙い、男子はみんな楓磨に近づく女子を狙っている。心を許せる存在はいないようで、俺の前でだけほっとした顔をする。楓磨は可哀想なやつだ。
「……」
きつく言いすぎただろうか。俺ももう少し柔軟な考え方をしたほうがいいのかもしれない。だからと言って楓磨のしたことを許す気にもなれない。
楓磨が教室に戻ってきた。一緒に出ていった女子はいない。楓磨ひとりだ。
自分の席に座った楓磨が頬杖をつく。視線の先は前方の窓。なんとなくその窓のほうを見ると、窓に映る楓磨と目が合った。
まさか楓磨は俺を見ている?
楓磨は寂しそうな目をしている。それでも話しかけてこないのは本当に反省しているから、だろう。
なんだか良心がちくちく痛む。俺が良心を痛める必要はないのだけれど、それでも胸が痛むのは俺が楓磨を大切に思っているからではないか。
声をかけてみようか。それできちんと反省しているならば許してあげたい。キスひとつで大切な友達を失うのは俺もつらい。
俺が椅子から立ちあがるのと同時に先程楓磨と一緒に出ていった女子が泣きながら戻ってきた。その女子と仲良くしている集団が慌てた様子で女子を囲む。女子は「楓磨くんに振られた」と言っていて、俺は耳を疑った。楓磨が告白してきた子を振るなんて初めてだ。なにかあったのかと楓磨を見ると目が合った。
「楓磨くん、なんで振ったの!?」
女子を囲んでいたうちのひとりが声を荒げる。
「好きな人できたから」
楓磨は申し訳なさそうな顔をしているけれど、強い視線で俺を見たまま答える。まっすぐな視線にどきりとしてしまう。どうして楓磨に「どきり」なんだ、と自分に疑問を持つ。
楓磨は質問攻めにあっているけれど、それ以上は答えなかった。ただずっと俺を見ていた。
声をかけるタイミングを考える。さりげなく話しかけられたらいいのだが、いい考えが浮かばない。なんでもなく話しかけたとしても楓磨は無視をしたりしないだろう。けれど妙に緊張してしまい、二の足を踏んでしまう。
楓磨と話さなくなって三週間が経っている。なんと話しかけたらいいかわからない。
そうだ。挨拶なら軽く話しかけられる。明日は「おはよう」と言ってみよう。そうしたらまた以前の関係に戻れるかもしれない。
その夜は緊張しすぎてなかなか寝つけなかった。
校舎裏に着くと同時に土下座をされた。無視して教室に戻りたいのに、そこまでする楓磨に同情心が湧く。
「本当にごめんなさい。反省してます」
「……」
ふざけてキスをして、「反省している」で済むわけがない。同情は禁物だ。
楓磨に背を向ける。
「二度と声かけないで」
「……もう友達じゃない?」
「うん」
そのまま楓磨を置いて教室へ足を向ける。
可哀想かな、と胸が少しちくちく痛むけれど、でもここで俺が許したらだめな気がする。振り向かずにまっすぐ教室に向かった。
楓磨はもう話しかけてこなかった。俺はひとりで本を読む。視線を感じるけれど無視する。本を読んでいればひとりでも楽しいから、それでいい。
友達なんてもういらない。
楓磨と口をきかなくなって二週間が経った。楓磨はまだ俺を見ているけれど、そろそろ休憩も終わって新しい彼女を作るだろうし、そうしたら俺ばかり見ているわけにはいかなくなる。これで完全に終われる。そう考えてちくんと胸が痛む。
楓磨が女子に声をかけられてふたりで教室を出ていくのが視界の隅に映った。次の彼女か、とため息をつく。本当にどうしようもない男だ、そう思いながらも心の奥には楓磨が嫌いになり切れない自分がいる。
高一の初めに出会い、いつも声をかけて仲良くしてくれた。女子を紹介しよう、と余計なことを言うかと思えば、敦弥は真面目でいいなあ、などと言って羨望の眼差しを向ける。
楓磨は不真面目なのではなく、人がよすぎるだけ。告白してきた女子が傷つくのが可哀想だからとつき合って、結局女子から振られる。毎回、「楓磨くん、なんか違う」と言われるらしい。
勝手な理想を押しつけられて夢を見られるのもたまったものではないだろう。それでも楓磨は相手を責めずに「ごめんね」と言う。どこまでも馬鹿だ。
軽いわけではないのに軽く見られ、遊んでいるわけでもないのに遊び人扱いされて。
交友関係が広いようでいて、近づく女子は楓磨の見た目のよさにみんな彼女の座を狙い、男子はみんな楓磨に近づく女子を狙っている。心を許せる存在はいないようで、俺の前でだけほっとした顔をする。楓磨は可哀想なやつだ。
「……」
きつく言いすぎただろうか。俺ももう少し柔軟な考え方をしたほうがいいのかもしれない。だからと言って楓磨のしたことを許す気にもなれない。
楓磨が教室に戻ってきた。一緒に出ていった女子はいない。楓磨ひとりだ。
自分の席に座った楓磨が頬杖をつく。視線の先は前方の窓。なんとなくその窓のほうを見ると、窓に映る楓磨と目が合った。
まさか楓磨は俺を見ている?
楓磨は寂しそうな目をしている。それでも話しかけてこないのは本当に反省しているから、だろう。
なんだか良心がちくちく痛む。俺が良心を痛める必要はないのだけれど、それでも胸が痛むのは俺が楓磨を大切に思っているからではないか。
声をかけてみようか。それできちんと反省しているならば許してあげたい。キスひとつで大切な友達を失うのは俺もつらい。
俺が椅子から立ちあがるのと同時に先程楓磨と一緒に出ていった女子が泣きながら戻ってきた。その女子と仲良くしている集団が慌てた様子で女子を囲む。女子は「楓磨くんに振られた」と言っていて、俺は耳を疑った。楓磨が告白してきた子を振るなんて初めてだ。なにかあったのかと楓磨を見ると目が合った。
「楓磨くん、なんで振ったの!?」
女子を囲んでいたうちのひとりが声を荒げる。
「好きな人できたから」
楓磨は申し訳なさそうな顔をしているけれど、強い視線で俺を見たまま答える。まっすぐな視線にどきりとしてしまう。どうして楓磨に「どきり」なんだ、と自分に疑問を持つ。
楓磨は質問攻めにあっているけれど、それ以上は答えなかった。ただずっと俺を見ていた。
声をかけるタイミングを考える。さりげなく話しかけられたらいいのだが、いい考えが浮かばない。なんでもなく話しかけたとしても楓磨は無視をしたりしないだろう。けれど妙に緊張してしまい、二の足を踏んでしまう。
楓磨と話さなくなって三週間が経っている。なんと話しかけたらいいかわからない。
そうだ。挨拶なら軽く話しかけられる。明日は「おはよう」と言ってみよう。そうしたらまた以前の関係に戻れるかもしれない。
その夜は緊張しすぎてなかなか寝つけなかった。
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