DONKAN

すずかけあおい

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DONKAN①

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「あ、朋春ともはるくん」
 いつもの学校帰り、改札を出たところで向かいの家の朋春を見つけた。呼びかけるとゆっくりと振り返った彼が表情を和らげる。相変わらず恰好いい。
 ひとつ上の朋春は外見がとても整っている。よく告白されているらしく、学校では女子たちがいつも彼の噂をしている。
 朋春は幹人みきとの憧れで、好きな人だ。恰好いい彼に対して――比べることなんておこがましいくらい自分は地味だし男だから、この気持ちは隠している。彼が知ったらきっと迷惑だと思うだろう。
「幹人」
 手招きをしてくれるので小走りで駆け寄って隣に並び、ふたりで駅を出る。
「転ばないようにね」
「子どもじゃないから、大丈夫だよ」
 特に彼と並んでいると、見た目がつり合っていないことがはっきりわかる。落ち込むこともできないくらいに次元が違う。それでも朋春は幹人を可愛がってくれていた――少し前までは。
「幹人、どうした?」
 ぼんやりと考えごとをしていたら背の高い彼が幹人の顔を覗き込んできた。慌てて足を止めると、朋春も不思議そうに立ち止まった。
「どうかした?」
 そう、彼は少し前から、優しいのにどこかおかしいのだ。
「ううん。朋春くんといられるのが嬉しいなと思って」
 気持ちをそのまま伝えたら、やはり朋春は顔を背けた。こうやってちょっとしたことを拒絶される。
「……ごめん。僕なんかにそんなこと言われても嬉しくないよね」
 気を悪くさせたことを反省する。
「そんなことない。幹人がそう言ってくれると、なにより嬉しい」
 口ではそんなふうに言っていても幹人を見てくれない。しかも、はあ、と深いため息まで吐き出している。心臓が嫌な音を立てて、スクールバッグの持ち手をぎゅっと握った。
「ごめん。こういうこと、言わないようにするね」
「うん、そうだね。我慢が大変だから」
「我慢?」
「こっちの話」
 なんだろう、と思うが教えてくれそうにない。もう一度息を吐いた朋春がようやく幹人を見てくれた。
 大好きな朋春からの拒絶は正直つらい。彼は幹人を嫌っている。それならそうと言ってくれたらいいのに言ってくれず、微妙な距離を保つ。それが逆につらいことを、彼はきっと知らない。
「帰ったら朋春くんのところに遊びに行ってもいい?」
 勇気を出して聞いてみると、朋春は渋い顔をした。
「えっと、……今日はちょっと」
 今日は、ではなく、今日も、だ。今年幹人が高校に入ってから、遊びに行っていいか聞くと、毎回こう言われる。嫌なわけではない、とは言っていたから、嫌ではなくてもきっと迷惑なのだ。
「ごめん」
 足もとに視線を落として朋春から目を逸らす。
 不毛な片想いだとわかっている。中途半端な優しさは逆につらい。朋春が幹人を可愛がってくれていたのは、もう過去だ。
「嫌なわけじゃないんだ」
 今日もそう言うけれど、それならどうして遊んでくれないのだろう。最近の朋春はよくわからない。


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