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恋愛対象①
周助の視線の先……廊下の向こうには、ひとりの男の先輩の姿。
ずっと目で追いかけているのを俺は隣で見ていたけれど、視線を逸らして窓の外を見る。曇り空。
俺は周助が好き。でも周助が好きなのは俺じゃない。三年の、誰が見ても可愛い男の先輩。
中学一年で周助と出会った。別の小学校から上がった俺と周助は同じクラスになり、一回目の席替えで席が前後になって仲良くなった。
周助を好きになったきっかけは、よくある恋のパターンと言われればそれまでだけど、中二のとき、校外学習のアスレチックで、俺が木の段差を踏み外して足を捻りうずくまっていたら、おぶって集合場所まで連れて行ってくれたこと。ただでさえかっこよくてモテていた周助のその行動は目立って、男子は冷やかしたけれど周助はまったく気にせず、ただ俺を気遣ってくれた。
その日から俺の頭の中は周助でいっぱいになった。
男の友達を好きになったことに戸惑ったけれど、気持ちは止まらない。校外学習の件から周助は、女子からこれまで以上に騒がれるし告白される。これじゃすぐに彼女ができる、とひやひやした。でも、周助は告白をすべて断るので、俺はほっとしながら不思議に思った。
中三で周助から「俺は男しか好きになれない」と打ち明けられた。驚いたけれど、それ以上に胸が高鳴り、期待した。それなら、もしかしたら俺にもチャンスはあるかもしれない、と。
俺は女の子も好きになったことがあるけれど、そのときにはもう周助以外考えられなかった。
「こんなこと話せる友達は理津しかいない」
続いた言葉に、俺は恋愛対象じゃないんだ、と知った。
それでも周助の相談に乗れる友達でいられるなら……と、周助が男しか好きになれないと知る前から決めていた、卒業式に告白するつもりだった決意を打ち消してそばにいた。
同じ高校に進み、周助のことをどんどん好きになっていく。周助は相変わらずモテる。そして、俺が周助の友達なのも変わらない。
高二に上がり、夏休み前に周助が真っ赤な顔をして「三年の先輩を好きになった」と、こそっと話してきた。ショックだけど、隠さず話してくれたことは嬉しくて……複雑で。
応援したい……でも、できない。だからただ話を聞く。
周助は先輩に話しかけるでもなく、告白するでもなく、自分の存在も知らせず、ただ先輩の姿を見つめるだけ。それで満足だと寂しそうに笑う。絶対叶わないから、と。その気持ちは俺にもわかった。絶対叶わない恋、俺もしているから。
先輩は可愛い人。周助は可愛い男の人が好きなんだと知った。俺はどこからどう見ても平凡顔なので絶対恋愛対象にはなれない。だから、俺も見つめるだけ。先輩を見つめる周助を、ただ隣で。
いつものように先輩を見つめる周助を隣で見ているだけ。なんとなく先輩のほうを見ると、また違う男子生徒と仲良さそうにしている。先輩は交友関係が広いのか、色んな男子生徒と一緒にいる。たまに校門のところで他校の男子生徒と一緒にいることもある。
周助と俺の横を通っていく、たぶん三年生だと思う女子生徒三人がこそこそと囁き合っているのが耳に入った。
「岸田くん、また違う人といる」
「ほんと、人目気にしないよね」
「あの見た目なら選び放題だろうけど、誰とでも寝ちゃうっていうのはわからない」
周助を見ると、廊下の向こうを見て固まっている。その視線の先の岸田先輩は、さっきまで仲良さそうにじゃんけんをしていた男子生徒とキスをしている。唇を離した先輩は隣にいる別の男子生徒と笑いながらじゃんけんをして、男子生徒が勝つと、次にその生徒とキスをした。
うわ……! と思ってすぐ目を逸らす。どうしよう、と思ったけれど、ちょうど予鈴が鳴ったので、固まったままの周助の腕を引っ張って教室に戻る。
大人のじゃんけんを見てしまった……。今見たシーンがぐるぐる頭の中で回り、刺激が強くて倒れてしまいそうだった。
周助はショックのあまり力が入らないようだ。放課後の教室で机に伏せて唸っている。
「そんなー……」
「俺もびっくりした……」
しかもキスシーンまで見てしまった……。初キスもまだの俺には強刺激すぎる。しかも学校の廊下でなんて……思い出すとまだ頬が火照る。周助はうーうー言っている。
「……好きだったのに。まあ、片想いだけど……」
「……」
俺も好きだよ、片想いだけど。
なんだか胸がじりじりして、焦げていくようだった。苦しい。すーっと息を吸う。
「誰とでもするなんて……」
はぁ、と周助の大きな溜め息に、勇気を出して口を開く。
「……俺は、好きな人としかしないよ」
「え?」
周助が顔を上げて俺を見るので、俺もまっすぐ見つめ返す。
「だから、……俺じゃ、だめ?」
ずっと目で追いかけているのを俺は隣で見ていたけれど、視線を逸らして窓の外を見る。曇り空。
俺は周助が好き。でも周助が好きなのは俺じゃない。三年の、誰が見ても可愛い男の先輩。
中学一年で周助と出会った。別の小学校から上がった俺と周助は同じクラスになり、一回目の席替えで席が前後になって仲良くなった。
周助を好きになったきっかけは、よくある恋のパターンと言われればそれまでだけど、中二のとき、校外学習のアスレチックで、俺が木の段差を踏み外して足を捻りうずくまっていたら、おぶって集合場所まで連れて行ってくれたこと。ただでさえかっこよくてモテていた周助のその行動は目立って、男子は冷やかしたけれど周助はまったく気にせず、ただ俺を気遣ってくれた。
その日から俺の頭の中は周助でいっぱいになった。
男の友達を好きになったことに戸惑ったけれど、気持ちは止まらない。校外学習の件から周助は、女子からこれまで以上に騒がれるし告白される。これじゃすぐに彼女ができる、とひやひやした。でも、周助は告白をすべて断るので、俺はほっとしながら不思議に思った。
中三で周助から「俺は男しか好きになれない」と打ち明けられた。驚いたけれど、それ以上に胸が高鳴り、期待した。それなら、もしかしたら俺にもチャンスはあるかもしれない、と。
俺は女の子も好きになったことがあるけれど、そのときにはもう周助以外考えられなかった。
「こんなこと話せる友達は理津しかいない」
続いた言葉に、俺は恋愛対象じゃないんだ、と知った。
それでも周助の相談に乗れる友達でいられるなら……と、周助が男しか好きになれないと知る前から決めていた、卒業式に告白するつもりだった決意を打ち消してそばにいた。
同じ高校に進み、周助のことをどんどん好きになっていく。周助は相変わらずモテる。そして、俺が周助の友達なのも変わらない。
高二に上がり、夏休み前に周助が真っ赤な顔をして「三年の先輩を好きになった」と、こそっと話してきた。ショックだけど、隠さず話してくれたことは嬉しくて……複雑で。
応援したい……でも、できない。だからただ話を聞く。
周助は先輩に話しかけるでもなく、告白するでもなく、自分の存在も知らせず、ただ先輩の姿を見つめるだけ。それで満足だと寂しそうに笑う。絶対叶わないから、と。その気持ちは俺にもわかった。絶対叶わない恋、俺もしているから。
先輩は可愛い人。周助は可愛い男の人が好きなんだと知った。俺はどこからどう見ても平凡顔なので絶対恋愛対象にはなれない。だから、俺も見つめるだけ。先輩を見つめる周助を、ただ隣で。
いつものように先輩を見つめる周助を隣で見ているだけ。なんとなく先輩のほうを見ると、また違う男子生徒と仲良さそうにしている。先輩は交友関係が広いのか、色んな男子生徒と一緒にいる。たまに校門のところで他校の男子生徒と一緒にいることもある。
周助と俺の横を通っていく、たぶん三年生だと思う女子生徒三人がこそこそと囁き合っているのが耳に入った。
「岸田くん、また違う人といる」
「ほんと、人目気にしないよね」
「あの見た目なら選び放題だろうけど、誰とでも寝ちゃうっていうのはわからない」
周助を見ると、廊下の向こうを見て固まっている。その視線の先の岸田先輩は、さっきまで仲良さそうにじゃんけんをしていた男子生徒とキスをしている。唇を離した先輩は隣にいる別の男子生徒と笑いながらじゃんけんをして、男子生徒が勝つと、次にその生徒とキスをした。
うわ……! と思ってすぐ目を逸らす。どうしよう、と思ったけれど、ちょうど予鈴が鳴ったので、固まったままの周助の腕を引っ張って教室に戻る。
大人のじゃんけんを見てしまった……。今見たシーンがぐるぐる頭の中で回り、刺激が強くて倒れてしまいそうだった。
周助はショックのあまり力が入らないようだ。放課後の教室で机に伏せて唸っている。
「そんなー……」
「俺もびっくりした……」
しかもキスシーンまで見てしまった……。初キスもまだの俺には強刺激すぎる。しかも学校の廊下でなんて……思い出すとまだ頬が火照る。周助はうーうー言っている。
「……好きだったのに。まあ、片想いだけど……」
「……」
俺も好きだよ、片想いだけど。
なんだか胸がじりじりして、焦げていくようだった。苦しい。すーっと息を吸う。
「誰とでもするなんて……」
はぁ、と周助の大きな溜め息に、勇気を出して口を開く。
「……俺は、好きな人としかしないよ」
「え?」
周助が顔を上げて俺を見るので、俺もまっすぐ見つめ返す。
「だから、……俺じゃ、だめ?」
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