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早く大人になりたいな
早く大人になりたいな①
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「二十歳まで待て」
「嫌だ!」
萬里さんの膝に乗っかるけど、萬里さんは俺を押しのけてソファから立ち上がってしまう。
「もう十八だよ! 成年年齢引き下げでもう成人だよ!」
「圭一、十八で酒は飲めるのか」
「……」
「煙草は?」
「………吸ったら怒るくせに」
「当たり前だ。たとえだ、たとえ」
俺が煙草を吸って萬里さんが怒らないはずない。
酒もどうなんだって感じなくらいに愛されてる自覚はある。
でも。
「じゃあ、せめて高校卒業にしてよ…」
「……」
「もう我慢の限界だよ…一年経っても手出してくれないなんて…」
萬里さんは付き合って一年経っても手を出してくれない。
いつも『二十歳になるまで待て』。
そんなに待てない!
欲求不満で干からびちゃったらどうするんだ。
去年告白したとき、萬里さんは二十四、俺は十七で高二だった。
この年齢差だけでも、付き合うのにめちゃくちゃ渋られた。
でも押しまくって押しまくって、ようやく付き合ってくれるってなったら、今度は手を出してくれない。
キスもまだ。
一年も付き合ってるのに!
萬里さんはスーツの似合うかっこいい大人の男性で、切れ長の涼しげな目元がすごく印象的な、欲目抜きにイケメンな会社員。
俺がバイトをしていたカフェの常連さんで、いつもコーヒーを飲みに来てくれていた。
疲れているときは甘いものを一緒に食べる。
でも甘過ぎるものは苦手。
レジの後に優しく微笑んで『ありがとう』って言ってくれるのがとてもとてもどきどきして、あっという間に好きになった。
それで告白。
連絡先を同時に渡そうとしたら玉砕。
それでも粘った。
仕事ほっぽってなにやってんだって店長には笑われたけど、俺には仕事より大切なことなんですって答えて萬里さんに告白告白告白。
しょうがないな、と連絡先を書いたメモを受け取ってくれて、その夜にメッセージが届いた。
『付き合うことはできないけど、友達でいいなら仲良くしよう。』
カタい!
カタ過ぎる。
そこがまたかっこいい。
それから友達になり、遊んだりメッセージで他愛のないやり取りをしたりしているうちになんとか強引に恋人に昇格して、今に至る。
萬里さん二十五、俺は十八。
もう成人なのに。
酒は飲めないし煙草も吸えないけど。
いや、やったら怒ることをたとえに出すのもおかしいんじゃないの?
「…萬里さんの意地悪」
「意地悪で結構。高校卒業まで手は出さない」
「!!」
「だからもう少し我慢しろ」
「わかった!!」
単純だ、俺。
でも嬉しい。
高校卒業ならあと半年くらいだから、そうしたら………。
「顔緩んでる」
ふに、と頬をつままれる。
こうするのは、萬里さんも機嫌がいいとき。
萬里さんも我慢してたりするのかな、とかちょっと考えたりして。
そうだったらいいな、なんて。
「送ってく」
「泊めてくれないの?」
「明日学校だろ。俺も仕事だ」
「はーい…」
寂しいな。
もっとくっついていたいのに。
萬里さんの運転する車で家まで送ってもらう。
ハンドルを握る萬里さんに見惚れる。
時々、不安になることがある。
萬里さんは俺で満足してくれているんだろうか。
キスもできない相手で不満はないんだろうか、って。
これだけかっこよければ相手に困らないだろうし、今まで彼女とか彼女とか彼女とかいただろう。
そういう人達と比べて、俺ってつまらなくないかな。
俺といると退屈だって思ったりしないかなとか考えてしまう。
だから俺は、萬里さんが知らなそうな珍しい話題をSNSで探して色んな会話をするけれど、萬里さんはなんでも『そんなことがあるのか』『すごいな』ってちゃんと聞いてくれる。
高三になってバイトはやめたから、学校帰りにちょっと遠出して珍しい食べ物とかドリンクとか買って萬里さんの家に行くとなんでも喜んでくれて俺も嬉しくなる。
でもやっぱり俺は萬里さんの中では“子ども”なんだろうなって思うと苦しい。
早く大人になりたい。
年齢じゃなくて、萬里さんが“大人”って認めてくれる存在になりたい。
ちゃんと胸を張って隣に並びたい。
「なに考えてる?」
「え?」
「圭一が黙ってるってことはなにか馬鹿なこと考えてる証拠だからな」
「馬鹿なことじゃないし。重要なこと」
家が近付くのが嫌だ。
もっとゆっくりなスピードで走ってくれないかな。
むしろ停まってくれていい。
そばにいたい。
と思ったら車が停まった。
悪い考えが読まれたのかとどきっとしたら信号が赤だった。
「言ってみろ」
「…言わない」
「笑わないから」
そう言って微笑むから、俺は口を開いてしまう。
だってこの笑顔、すごく優しいんだ。
「……萬里さんは、俺でつまらなくないかなって思って」
「すごく楽しいが」
「そうなの?」
「年の差を気にして渋ったけど、付き合ってよかった、ずっと一緒にいたいと思うくらい圭一に惚れてるよ」
髪をくしゃくしゃと撫でられて、俺も心がほっこりする。
そうか、愛されてるとは思ったけど、そんなに好きでいてくれたんだ。
「へへ…」
「だから馬鹿なことは考えなくていい」
「うん。俺も萬里さんが大好き」
「お揃いだな」
「っ!!」
大人だと、こういう甘いことをさらっと言っちゃえるのかな。
やっぱり俺はまだまだ子どもだ。
だって照れちゃう…。
車が見慣れた一軒家の前に停まった。
「おやすみ、圭一」
「おやすみなさい、萬里さん」
ほんとは別れ際のキスとかしたらめちゃくちゃ恋人っぽいんだけどな。
でも、それって俺の考えが子どもなのかも。
大人の人って、もしかしてそんなことしない?
「どうした?」
「ううん、なんでもない」
ちょっと大人っぽく見えるように微笑んでみるけど、萬里さんの目にはどう映ってるだろう。
どきっとしてくれるといいな…。
…結果、萬里さんはなにも言わずに帰ってしまった。
やっぱり俺が大人っぽいことするなんて無理があるのかな。
でも。
「高校卒業まで短縮された!」
飛び上がりたいくらい嬉しい。
自分の部屋のベッドでじたばたする。
ああ、もう今すぐ半年経って欲しい。
受験だってもうどうでもいい……そう考えた瞬間に、頭の中で萬里さんが『めっ』という顔をする。
ごめんなさい…勉強頑張ります。
「嫌だ!」
萬里さんの膝に乗っかるけど、萬里さんは俺を押しのけてソファから立ち上がってしまう。
「もう十八だよ! 成年年齢引き下げでもう成人だよ!」
「圭一、十八で酒は飲めるのか」
「……」
「煙草は?」
「………吸ったら怒るくせに」
「当たり前だ。たとえだ、たとえ」
俺が煙草を吸って萬里さんが怒らないはずない。
酒もどうなんだって感じなくらいに愛されてる自覚はある。
でも。
「じゃあ、せめて高校卒業にしてよ…」
「……」
「もう我慢の限界だよ…一年経っても手出してくれないなんて…」
萬里さんは付き合って一年経っても手を出してくれない。
いつも『二十歳になるまで待て』。
そんなに待てない!
欲求不満で干からびちゃったらどうするんだ。
去年告白したとき、萬里さんは二十四、俺は十七で高二だった。
この年齢差だけでも、付き合うのにめちゃくちゃ渋られた。
でも押しまくって押しまくって、ようやく付き合ってくれるってなったら、今度は手を出してくれない。
キスもまだ。
一年も付き合ってるのに!
萬里さんはスーツの似合うかっこいい大人の男性で、切れ長の涼しげな目元がすごく印象的な、欲目抜きにイケメンな会社員。
俺がバイトをしていたカフェの常連さんで、いつもコーヒーを飲みに来てくれていた。
疲れているときは甘いものを一緒に食べる。
でも甘過ぎるものは苦手。
レジの後に優しく微笑んで『ありがとう』って言ってくれるのがとてもとてもどきどきして、あっという間に好きになった。
それで告白。
連絡先を同時に渡そうとしたら玉砕。
それでも粘った。
仕事ほっぽってなにやってんだって店長には笑われたけど、俺には仕事より大切なことなんですって答えて萬里さんに告白告白告白。
しょうがないな、と連絡先を書いたメモを受け取ってくれて、その夜にメッセージが届いた。
『付き合うことはできないけど、友達でいいなら仲良くしよう。』
カタい!
カタ過ぎる。
そこがまたかっこいい。
それから友達になり、遊んだりメッセージで他愛のないやり取りをしたりしているうちになんとか強引に恋人に昇格して、今に至る。
萬里さん二十五、俺は十八。
もう成人なのに。
酒は飲めないし煙草も吸えないけど。
いや、やったら怒ることをたとえに出すのもおかしいんじゃないの?
「…萬里さんの意地悪」
「意地悪で結構。高校卒業まで手は出さない」
「!!」
「だからもう少し我慢しろ」
「わかった!!」
単純だ、俺。
でも嬉しい。
高校卒業ならあと半年くらいだから、そうしたら………。
「顔緩んでる」
ふに、と頬をつままれる。
こうするのは、萬里さんも機嫌がいいとき。
萬里さんも我慢してたりするのかな、とかちょっと考えたりして。
そうだったらいいな、なんて。
「送ってく」
「泊めてくれないの?」
「明日学校だろ。俺も仕事だ」
「はーい…」
寂しいな。
もっとくっついていたいのに。
萬里さんの運転する車で家まで送ってもらう。
ハンドルを握る萬里さんに見惚れる。
時々、不安になることがある。
萬里さんは俺で満足してくれているんだろうか。
キスもできない相手で不満はないんだろうか、って。
これだけかっこよければ相手に困らないだろうし、今まで彼女とか彼女とか彼女とかいただろう。
そういう人達と比べて、俺ってつまらなくないかな。
俺といると退屈だって思ったりしないかなとか考えてしまう。
だから俺は、萬里さんが知らなそうな珍しい話題をSNSで探して色んな会話をするけれど、萬里さんはなんでも『そんなことがあるのか』『すごいな』ってちゃんと聞いてくれる。
高三になってバイトはやめたから、学校帰りにちょっと遠出して珍しい食べ物とかドリンクとか買って萬里さんの家に行くとなんでも喜んでくれて俺も嬉しくなる。
でもやっぱり俺は萬里さんの中では“子ども”なんだろうなって思うと苦しい。
早く大人になりたい。
年齢じゃなくて、萬里さんが“大人”って認めてくれる存在になりたい。
ちゃんと胸を張って隣に並びたい。
「なに考えてる?」
「え?」
「圭一が黙ってるってことはなにか馬鹿なこと考えてる証拠だからな」
「馬鹿なことじゃないし。重要なこと」
家が近付くのが嫌だ。
もっとゆっくりなスピードで走ってくれないかな。
むしろ停まってくれていい。
そばにいたい。
と思ったら車が停まった。
悪い考えが読まれたのかとどきっとしたら信号が赤だった。
「言ってみろ」
「…言わない」
「笑わないから」
そう言って微笑むから、俺は口を開いてしまう。
だってこの笑顔、すごく優しいんだ。
「……萬里さんは、俺でつまらなくないかなって思って」
「すごく楽しいが」
「そうなの?」
「年の差を気にして渋ったけど、付き合ってよかった、ずっと一緒にいたいと思うくらい圭一に惚れてるよ」
髪をくしゃくしゃと撫でられて、俺も心がほっこりする。
そうか、愛されてるとは思ったけど、そんなに好きでいてくれたんだ。
「へへ…」
「だから馬鹿なことは考えなくていい」
「うん。俺も萬里さんが大好き」
「お揃いだな」
「っ!!」
大人だと、こういう甘いことをさらっと言っちゃえるのかな。
やっぱり俺はまだまだ子どもだ。
だって照れちゃう…。
車が見慣れた一軒家の前に停まった。
「おやすみ、圭一」
「おやすみなさい、萬里さん」
ほんとは別れ際のキスとかしたらめちゃくちゃ恋人っぽいんだけどな。
でも、それって俺の考えが子どもなのかも。
大人の人って、もしかしてそんなことしない?
「どうした?」
「ううん、なんでもない」
ちょっと大人っぽく見えるように微笑んでみるけど、萬里さんの目にはどう映ってるだろう。
どきっとしてくれるといいな…。
…結果、萬里さんはなにも言わずに帰ってしまった。
やっぱり俺が大人っぽいことするなんて無理があるのかな。
でも。
「高校卒業まで短縮された!」
飛び上がりたいくらい嬉しい。
自分の部屋のベッドでじたばたする。
ああ、もう今すぐ半年経って欲しい。
受験だってもうどうでもいい……そう考えた瞬間に、頭の中で萬里さんが『めっ』という顔をする。
ごめんなさい…勉強頑張ります。
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