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つながり⑰
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車道側を歩く秀星の隣にいるのが、なんだか落ちつかない。秀星はあの事故以来とにかく賢太を大切にしてくれるのだ。朝はわざわざ家まで迎えに来てくれるし、帰りも一緒だ。どんなに大丈夫だと言っても困った顔をされてしまうから、あまり我を張れない。
「俺が賢太といたいんだ。恋人を大切にするのはおかしくないだろ?」
「……うん」
恋人なんて、くすぐったい。でも賢太は秀星の気持ちに応えたのだから、たしかに秀星とつき合っているのだ。つき合っていてもスクールバッグを持ってくれるのは甘やかしすぎだ。
「自分で持つよ」
「いいから。一緒にいられるときはたくさん甘えてくれ」
「……甘える」
甘えるってなに?
ぐるぐると考えていたら家についた。今日も秀星が勉強を見てくれるので、ふたりで賢太の部屋に入る。
事故のせいで賢太は勉強が遅れ、学年末試験は予備試験になった。秀星はその試験のための勉強を教えてくれている。
「賢太は覚えがいいな。この調子なら予備試験も問題なさそうだ」
「よかったあ」
ほっとして表情を緩ませると、視線を感じた。じっと見られていて恥ずかしいが、目を逸らせない。
「賢太は来週の日曜日、予定はあるか?」
「ううん。ないよ」
アルバイトはしばらく休んだほうがいいということで、新年度まではなんの予定もない。ほみるの皆も心配してくれているから早く復帰したいのだが、親以上に秀星が渋い顔をするのだ。
「じゃあ出かけないか? 俺と賢太と、ついでに琉希と」
「ついでって」
思わず笑うと、秀星が苦々しい表情を作る。
「賢太とふたりでデートがいいけど、琉希も賢太に会いたがってるから」
「うん。行く」
「メインは俺と賢太なのを忘れるな」
頭を撫でられ、くすぐったくて目を細める。
「琉希は?」
「添えもの」
「またそんな言い方して」
秀星と琉希の関係もいい方向に向かっているようでほっとしている。祖母の腰の具合が落ちついてきたから、春休みには秀星も大曽根家に戻るらしい。賢太と同じように、これまでと違う毎日が秀星にも琉希にも訪れるに違いない。
「賢太」
少し低い声で呼ばれ、隣の秀星を見あげる。真剣な瞳と視線が絡み、手を握られた。
「秀星……」
「キスしたい」
「……」
「だめならそう言ってくれ」
そんなことを聞かれた経験がないので、どう答えたらいいかわからない。「どうぞ」ではおかしいし、「いいよ」だとなんだか「秀星がしたいならいいよ」みたいだ。
頭を悩ませていると、頬を撫でられた。大きな手は温かくて、自然と瞼がおりた。吐息が触れるように柔らかいものが重なり、離れる。目を開けると、綺麗な顔が至近距離にあった。
「秀星……好き」
「俺には負けるな。俺は賢太がなにより誰より好きだ」
「僕だって負けないよ」
変な意地の張り合いも楽しくて、額をつけてふたりで笑う。互いにすぐ目の前の距離で見つめ、唇が触れる。触れては離れを繰り返して、肩を抱かれる。
「賢太がいれば、できないことがないと思える」
「僕がいれば?」
「そう。だからずっと俺の隣にいてくれ。俺は賢太がいつでも笑顔でいられるようにするから」
まるでプロポーズのような言葉で、耳までぼうっと熱くなった。それでも先ほどの「甘えて」を実行しようと、秀星の肩に頭をのせる。髪を撫でてくれて目を閉じた。
大切な人が隣にいる。家族も大切に思える。新たな世界が拓けた今、自分がどうしていくべきか、考えないといけない。これまでのようにひとりで塞ぎ込む必要はないのだ。もっと広い視野を持ちたい。
「俺が賢太といたいんだ。恋人を大切にするのはおかしくないだろ?」
「……うん」
恋人なんて、くすぐったい。でも賢太は秀星の気持ちに応えたのだから、たしかに秀星とつき合っているのだ。つき合っていてもスクールバッグを持ってくれるのは甘やかしすぎだ。
「自分で持つよ」
「いいから。一緒にいられるときはたくさん甘えてくれ」
「……甘える」
甘えるってなに?
ぐるぐると考えていたら家についた。今日も秀星が勉強を見てくれるので、ふたりで賢太の部屋に入る。
事故のせいで賢太は勉強が遅れ、学年末試験は予備試験になった。秀星はその試験のための勉強を教えてくれている。
「賢太は覚えがいいな。この調子なら予備試験も問題なさそうだ」
「よかったあ」
ほっとして表情を緩ませると、視線を感じた。じっと見られていて恥ずかしいが、目を逸らせない。
「賢太は来週の日曜日、予定はあるか?」
「ううん。ないよ」
アルバイトはしばらく休んだほうがいいということで、新年度まではなんの予定もない。ほみるの皆も心配してくれているから早く復帰したいのだが、親以上に秀星が渋い顔をするのだ。
「じゃあ出かけないか? 俺と賢太と、ついでに琉希と」
「ついでって」
思わず笑うと、秀星が苦々しい表情を作る。
「賢太とふたりでデートがいいけど、琉希も賢太に会いたがってるから」
「うん。行く」
「メインは俺と賢太なのを忘れるな」
頭を撫でられ、くすぐったくて目を細める。
「琉希は?」
「添えもの」
「またそんな言い方して」
秀星と琉希の関係もいい方向に向かっているようでほっとしている。祖母の腰の具合が落ちついてきたから、春休みには秀星も大曽根家に戻るらしい。賢太と同じように、これまでと違う毎日が秀星にも琉希にも訪れるに違いない。
「賢太」
少し低い声で呼ばれ、隣の秀星を見あげる。真剣な瞳と視線が絡み、手を握られた。
「秀星……」
「キスしたい」
「……」
「だめならそう言ってくれ」
そんなことを聞かれた経験がないので、どう答えたらいいかわからない。「どうぞ」ではおかしいし、「いいよ」だとなんだか「秀星がしたいならいいよ」みたいだ。
頭を悩ませていると、頬を撫でられた。大きな手は温かくて、自然と瞼がおりた。吐息が触れるように柔らかいものが重なり、離れる。目を開けると、綺麗な顔が至近距離にあった。
「秀星……好き」
「俺には負けるな。俺は賢太がなにより誰より好きだ」
「僕だって負けないよ」
変な意地の張り合いも楽しくて、額をつけてふたりで笑う。互いにすぐ目の前の距離で見つめ、唇が触れる。触れては離れを繰り返して、肩を抱かれる。
「賢太がいれば、できないことがないと思える」
「僕がいれば?」
「そう。だからずっと俺の隣にいてくれ。俺は賢太がいつでも笑顔でいられるようにするから」
まるでプロポーズのような言葉で、耳までぼうっと熱くなった。それでも先ほどの「甘えて」を実行しようと、秀星の肩に頭をのせる。髪を撫でてくれて目を閉じた。
大切な人が隣にいる。家族も大切に思える。新たな世界が拓けた今、自分がどうしていくべきか、考えないといけない。これまでのようにひとりで塞ぎ込む必要はないのだ。もっと広い視野を持ちたい。
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