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つながり⑳
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ぼうっとしながらベッドに腰かける。きちんと秀星と話さないといけない。明日学校で話そう、と決めたらスマートフォンの通知音が鳴った。確認すると、秀星からのメッセージだった。
『今、ちょっと出られるか?』
もしかして、と急いで階段をおりて玄関に向かう。ドアを開けると暗がりの中に秀星が立っていた。
「悪い。少し話したくて」
「ううん。大丈夫」
「賢太にどうしても伝えたいことがあったから、また来たんだ」
髪を撫でられ、心臓がとくんと鳴った。甘い疼きと優しい拍動は、秀星のそばにいるといつでも起こる。
「ごめんな。もっと賢太の気持ちに寄り添うべきだった」
「え?」
「賢太は不安になったよな。俺と離れること」
嘘はつきたくなくて静かに首肯すると、秀星は眉をさげた。
「俺も寂しくないわけじゃない。賢太のそばにいたいんだ」
「うん……」
「でも志望校は変えない」
つきん、と胸が痛んで、それでもきちんと話を聞かないといけない、と秀星の目を見つめ返す。薄茶色の瞳が柔らかく細められるのが、屋外灯の明かりに照らされた。
「俺、公認心理士になりたいんだ」
「公認心理士?」
「そう。俺がつらくてひとりでいたときに賢太が寄り添って支えてくれたように、誰かの悩みに寄り添いたい」
秀星のやりたいことを聞くのははじめてで、聞いているだけでどきどきする。それは賢太までわくわくするような、心の弾みだった。
「賢太がくれた夢だ。だから絶対に叶えたい」
力強い声は迷いがない。胸がきゅんと疼いて、抱きつきたい気持ちそのままに秀星に手を伸ばす。突進するように抱きついた賢太を抱き留めてくれた秀星が、頬にそっとキスを落とした。
「賢太に寂しい思いをさせるかもしれない。それでも賢太がくれた夢を追いかけたい」
「うん……うん」
「自分勝手でごめんな」
広い胸に頭をぐりぐりと押しつけるように首を横に振る。顔をあげて秀星を見あげると、秀星こそ寂しそうに眉をさげている。
「自分勝手なんかじゃない。僕も応援させて。絶対応援したい」
もう一度抱きついてから身体を離す。互いに手を取って見つめ合った。
「実はまた声が聞こえたんだ。琉希の声」
「琉希から聞いた。それでいても立ってもいられなくなってすぐに来たんだ」
「ごめん。琉希から言われた。秀星に本音をちゃんと全部言わないとだめって」
琉希が考えるには、秀星ではなく琉希の心の声が聞こえたのは、賢太は秀星が相手だと隠しごとをするから。秀星に嫌われたくなくていい子のふりをするから、それを止めるために自分が選ばれたのかも、と琉希は言っていた。もし本当にそうだったら、神様はすごい。真実はわからないけれど、賢太も琉希の推測が合っているように思う。
秀星の手を握り、もう一度「ごめん」と呟く。
「秀星に嫌われたくなくて我慢してたら、本当に嫌われちゃうよね」
「俺が賢太を嫌うことはないけど、傷つくのはたしかだな」
「うん。だからちゃんと本当のこと言うね」
ひとつ深呼吸をして秀星の顔をまっすぐに見る。目が合って少し怯んだけれど、勇気を出して口を開いた。
「秀星にそばにいてほしい。離れるなんて嫌だ。だけど」
「だけど?」
「秀星の夢を応援したい。だから頑張って」
頷いてくれた秀星が柔らかく微笑んだ。その優しい表情に胸が鳴る。秀星が好きで仕方がない自分が恥ずかしいけれど、素直になれることは素敵なことだ。ひとりで閉じこもる必要はない。まっすぐに気持ちを伝えるほうがずっといい。
「秀星が好きだよ」
春の夜風が頬を撫でる。濃紺の空に星がまたたき、手を取り合う秀星と賢太を見守ってくれた。
『今、ちょっと出られるか?』
もしかして、と急いで階段をおりて玄関に向かう。ドアを開けると暗がりの中に秀星が立っていた。
「悪い。少し話したくて」
「ううん。大丈夫」
「賢太にどうしても伝えたいことがあったから、また来たんだ」
髪を撫でられ、心臓がとくんと鳴った。甘い疼きと優しい拍動は、秀星のそばにいるといつでも起こる。
「ごめんな。もっと賢太の気持ちに寄り添うべきだった」
「え?」
「賢太は不安になったよな。俺と離れること」
嘘はつきたくなくて静かに首肯すると、秀星は眉をさげた。
「俺も寂しくないわけじゃない。賢太のそばにいたいんだ」
「うん……」
「でも志望校は変えない」
つきん、と胸が痛んで、それでもきちんと話を聞かないといけない、と秀星の目を見つめ返す。薄茶色の瞳が柔らかく細められるのが、屋外灯の明かりに照らされた。
「俺、公認心理士になりたいんだ」
「公認心理士?」
「そう。俺がつらくてひとりでいたときに賢太が寄り添って支えてくれたように、誰かの悩みに寄り添いたい」
秀星のやりたいことを聞くのははじめてで、聞いているだけでどきどきする。それは賢太までわくわくするような、心の弾みだった。
「賢太がくれた夢だ。だから絶対に叶えたい」
力強い声は迷いがない。胸がきゅんと疼いて、抱きつきたい気持ちそのままに秀星に手を伸ばす。突進するように抱きついた賢太を抱き留めてくれた秀星が、頬にそっとキスを落とした。
「賢太に寂しい思いをさせるかもしれない。それでも賢太がくれた夢を追いかけたい」
「うん……うん」
「自分勝手でごめんな」
広い胸に頭をぐりぐりと押しつけるように首を横に振る。顔をあげて秀星を見あげると、秀星こそ寂しそうに眉をさげている。
「自分勝手なんかじゃない。僕も応援させて。絶対応援したい」
もう一度抱きついてから身体を離す。互いに手を取って見つめ合った。
「実はまた声が聞こえたんだ。琉希の声」
「琉希から聞いた。それでいても立ってもいられなくなってすぐに来たんだ」
「ごめん。琉希から言われた。秀星に本音をちゃんと全部言わないとだめって」
琉希が考えるには、秀星ではなく琉希の心の声が聞こえたのは、賢太は秀星が相手だと隠しごとをするから。秀星に嫌われたくなくていい子のふりをするから、それを止めるために自分が選ばれたのかも、と琉希は言っていた。もし本当にそうだったら、神様はすごい。真実はわからないけれど、賢太も琉希の推測が合っているように思う。
秀星の手を握り、もう一度「ごめん」と呟く。
「秀星に嫌われたくなくて我慢してたら、本当に嫌われちゃうよね」
「俺が賢太を嫌うことはないけど、傷つくのはたしかだな」
「うん。だからちゃんと本当のこと言うね」
ひとつ深呼吸をして秀星の顔をまっすぐに見る。目が合って少し怯んだけれど、勇気を出して口を開いた。
「秀星にそばにいてほしい。離れるなんて嫌だ。だけど」
「だけど?」
「秀星の夢を応援したい。だから頑張って」
頷いてくれた秀星が柔らかく微笑んだ。その優しい表情に胸が鳴る。秀星が好きで仕方がない自分が恥ずかしいけれど、素直になれることは素敵なことだ。ひとりで閉じこもる必要はない。まっすぐに気持ちを伝えるほうがずっといい。
「秀星が好きだよ」
春の夜風が頬を撫でる。濃紺の空に星がまたたき、手を取り合う秀星と賢太を見守ってくれた。
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