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(6)残酷な優しさ ◇侑大視点◇④
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◇◆◇
「楽しかったです。ちょっと切なかったけど」
「なんか、かえってごめん…」
逆に傷つける結果になってしまった。
俺は間違っていた。
「謝らないでください。それでも最高の思い出になりました。ありがとうございます」
「…ごめん」
「切なくて苦しいのも、黛さんを好きって気持ちだから、俺はそれも大切にしたいんです」
「うん…」
わかる。
どんな感情も、その人が好きな思いから生まれるものだから。
その全てを大切にしたい気持ちはものすごくよくわかる。
「早く彼氏さんと仲直りできるといいですね。というかしてください」
「…わかった、ありがとう」
そんな会話をしながら更衣室を出てデシャップ前に行くと要がいた。
「おはようございます。よろしくお願いします、笹倉さん、黛さん」
要、ごめん。
早くきちんと話がしたい。
多分避けられているんだろう。
要はコースターや湯呑みの片づけをして俺と笹倉さんから距離を置いている。
苦しい。
でもこれは間違いなく俺が悪い。
個室からの呼び出しがあり、笹倉さんが向かうと要とふたりきりになった。
「…要」
要の手に触れようとしたら避けられた。
心臓が嫌な音を立てる。
「…仕事中ですから。黛さん」
「……すみません、…安藤さん」
もしかしたらもう“侑大”と呼んでくれないかもしれない。
もう二度と、要の優しい視線に捕まえてもらう事ができないかもしれない。
「楽しかったみたいですね」
「え」
「笹倉さんと」
「あ…」
「よかったですね」
笑って見せる要の表情に固まる。
俺は今日、ふたりの人にこんな顔をさせた。
こんな、見ているだけで苦しくなるような笑顔をさせているのは、俺だ。
◇◆◇
朝五時のバーフロアの営業終了後の片づけを終えて着替えながらひとつ息を吐く。
俺は要との部屋に帰っていいのだろうか。
いや、他に帰るところなんてないんだけど、でも要はもう俺に帰ってきて欲しくないと思っているんじゃないだろうか。
もやもやと考えていても仕方ないのでおとなしく電車に揺られて自宅に帰る。
要は寝ているようだ。
いつもなら要の寝ているベッドに潜り込んで一緒に寝るけれど今はそんな事はできない。
「あ、ゴミ出さないと」
ゴミ袋を持ってぼんやりしながら玄関に向かったところで腕を掴まれた。
要が泣き出しそうな顔で俺を見ている。
抱き締められると要の身体がすごく熱い。
慌てて顔を覗き込む。
気がつかなかった。
自分の事ばかりで要の不調に気づけなかった悔しさに苦しくなった。
ゴミ出しに行こうとしただけだと言うと要はその場に座り込んで目を閉じた。
「え? 要?」
寝ている。
ゴミ出しは後回しにして要を要の部屋のベッドに運んで寝かせた。
『ごめん、侑大…』
「俺のほうこそごめん、要…ほんとにごめん」
要の優しさに涙が止まらない。
要が大切で愛おしくて、いつまでも涙が止まらなかった。
◇◆◇
「俺、要に、一緒にいるのは絆されてるだけじゃないのかって言われて、かなり落ち込んだしすげー傷ついたんだけど。しかも無理して一緒にいなくていいとか言われたし」
「………ごめん」
「だからお預け」
なんとなく冗談で言ってみただけなんだけど、要は禁欲を受け入れた。
冗談のつもりだったのに。
そして自動的に俺も禁欲生活を二週間ちょっと送る事になってしまった。
「楽しかったです。ちょっと切なかったけど」
「なんか、かえってごめん…」
逆に傷つける結果になってしまった。
俺は間違っていた。
「謝らないでください。それでも最高の思い出になりました。ありがとうございます」
「…ごめん」
「切なくて苦しいのも、黛さんを好きって気持ちだから、俺はそれも大切にしたいんです」
「うん…」
わかる。
どんな感情も、その人が好きな思いから生まれるものだから。
その全てを大切にしたい気持ちはものすごくよくわかる。
「早く彼氏さんと仲直りできるといいですね。というかしてください」
「…わかった、ありがとう」
そんな会話をしながら更衣室を出てデシャップ前に行くと要がいた。
「おはようございます。よろしくお願いします、笹倉さん、黛さん」
要、ごめん。
早くきちんと話がしたい。
多分避けられているんだろう。
要はコースターや湯呑みの片づけをして俺と笹倉さんから距離を置いている。
苦しい。
でもこれは間違いなく俺が悪い。
個室からの呼び出しがあり、笹倉さんが向かうと要とふたりきりになった。
「…要」
要の手に触れようとしたら避けられた。
心臓が嫌な音を立てる。
「…仕事中ですから。黛さん」
「……すみません、…安藤さん」
もしかしたらもう“侑大”と呼んでくれないかもしれない。
もう二度と、要の優しい視線に捕まえてもらう事ができないかもしれない。
「楽しかったみたいですね」
「え」
「笹倉さんと」
「あ…」
「よかったですね」
笑って見せる要の表情に固まる。
俺は今日、ふたりの人にこんな顔をさせた。
こんな、見ているだけで苦しくなるような笑顔をさせているのは、俺だ。
◇◆◇
朝五時のバーフロアの営業終了後の片づけを終えて着替えながらひとつ息を吐く。
俺は要との部屋に帰っていいのだろうか。
いや、他に帰るところなんてないんだけど、でも要はもう俺に帰ってきて欲しくないと思っているんじゃないだろうか。
もやもやと考えていても仕方ないのでおとなしく電車に揺られて自宅に帰る。
要は寝ているようだ。
いつもなら要の寝ているベッドに潜り込んで一緒に寝るけれど今はそんな事はできない。
「あ、ゴミ出さないと」
ゴミ袋を持ってぼんやりしながら玄関に向かったところで腕を掴まれた。
要が泣き出しそうな顔で俺を見ている。
抱き締められると要の身体がすごく熱い。
慌てて顔を覗き込む。
気がつかなかった。
自分の事ばかりで要の不調に気づけなかった悔しさに苦しくなった。
ゴミ出しに行こうとしただけだと言うと要はその場に座り込んで目を閉じた。
「え? 要?」
寝ている。
ゴミ出しは後回しにして要を要の部屋のベッドに運んで寝かせた。
『ごめん、侑大…』
「俺のほうこそごめん、要…ほんとにごめん」
要の優しさに涙が止まらない。
要が大切で愛おしくて、いつまでも涙が止まらなかった。
◇◆◇
「俺、要に、一緒にいるのは絆されてるだけじゃないのかって言われて、かなり落ち込んだしすげー傷ついたんだけど。しかも無理して一緒にいなくていいとか言われたし」
「………ごめん」
「だからお預け」
なんとなく冗談で言ってみただけなんだけど、要は禁欲を受け入れた。
冗談のつもりだったのに。
そして自動的に俺も禁欲生活を二週間ちょっと送る事になってしまった。
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