キミのすべては俺のもの

すずかけあおい

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(12)かわいいキミ②

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◇◆◇

「掃除でもして待ってる」

侑大が出勤するのを玄関で見送る。

「せっかく休みなんだから久しぶりに飲みにでも行ってくれば?」

火照りが醒めて冷静になったと言うか、“黛さん”モードが入った侑大が言う。
ちょっと寂しい。

「ひとりで行っていいの?」
「俺が帰ってくるまでに要も帰ってくるならいい」
「わかった」
「行ってくる」
「ん、行ってらっしゃい」

ひとつキスをして侑大がドアを開ける。
階段を下りていく足音を聞きながらドアを閉めて鍵をかけた。

侑大が勧めてくれたから久々にひとりで飲みに行こうかな。

◇◆◇

侑大と付き合うきっかけになったバーに着いて入口のドアを開ける。

「あれ、要? 久しぶり」

ママの万里まさとさんが声をかけてくれる。

「お久しぶりです」
「侑大は?」
「侑大は仕事だから今日は俺ひとりです。いいですか?」
「もちろん。奥空いてるから座って」
「ありがとう」

あれ。
この席、侑大とここで初めて会った時と同じ席だ。
なんだか懐かしい。

「ボトル残ってましたっけ」
「これくらい」

さっとキープボトルを出してくれる万里さん。
いつもながら素早い。

「じゃあ入れます」

侑大と付き合う前はひとりでこの店に来るのは当たり前だったのに、今では侑大が隣にいないのがとても不思議な感じ。
前に侑大が言っていたけれど、侑大の隣に俺がいるのが侑大にとって自然なように、俺の隣に侑大がいるのが俺にとっての自然になっているのを実感する。

「侑大とうまくいってるみたいでよかった」
「はい、おかげさまで」
「要もだけど、侑大もいつもひとりで飲んでたし」
「そうなんですか?」
「ふたりともなんか壁作ってた感じだったから。だからふたりが付き合い始めた時はびっくりした」
「はは…確かに」

ぽつぽつ話をしながら色々な事を思い出す。
確かに俺はここに来てはひとりで飲んでばかりだった。
また誰かを好きになって好きになり過ぎたらと思うと怖くて誰かと飲む事なんてできなかった。
だからと言って他に行く店もなくていつもここに来ていた。
そんな俺をいつでも温かく迎えてくれていたのが万里さんだった。
この前の幼なじみの事とか、侑大もたくさん傷を抱えていたんだろうなと思うと抱き締めたくなった。

万里さんが水割りを作ってくれる、流れるような手つきを見ながらぼんやり侑大の事を考える。
さっきまで一緒にいたのに、もう会いたい。
今日も店は忙しいかな。
変なお客さんに絡まれたりしてないかな。
そんな事ばかり頭に浮かぶ。

あまり飲んでまた侑大をいじめてしまうとよくないのでほどほどに飲んでバーを出る。
ちゃんと侑大が帰ってくる前に帰宅できた。
ちょうど入れ違いにほなみが出かけて行った。
彼女と飲みに行くとの事で上機嫌だった。

早く侑大に会いたいな。
ベッドに横になってタブレットで侑大の写真を見ていたら瞼が重たくなってきた。
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