となりの笑顔

すずかけあおい

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となりの笑顔⑬

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「あけましておめでとう、今年もよろしく」
 元旦に初詣へ行こうと誘われて待ち合わせ場所につくと、空井はすでに待っていた。いつも会っている人への新年の挨拶が照れくさい。
 よく晴れた空の下、空井と歩いているだけでどきどきする。青い空が新年を明るいものにしてくれる気がして、胸内にも青空が広がる心地よさだ。
「寒くないか?」
「うん、大丈夫」
 新年から優しい空井は、いつかのように宇野のマフラーを巻き直してくれた。ついでとばかりに頬を軽くつねられ、意地悪だと思いながらも心がむずむずする。
 人がたくさんいる神社につき、ふたり並んで拝礼をする。空井がずっと笑顔でいられますように、とお願いをした。悩んで悩んで、自分のことより空井のことを祈りたいと思ったから、この願いごとに決めた。空井が笑顔でいてくれることが、なによりも嬉しい。
「おみくじ引く?」
「俺はいい。宇野は引いてこいよ」
「なんで? 空井っておみくじとか好きじゃない?」
 空井は首を横に振って微笑む。
「俺は絶対大凶だってわかるから、引く必要ないんだよ」
「えっ」
 笑顔の優しさと言っていることの不吉さがアンバランスで、思わず大きな声をあげてしまった。
「な、なんで? そんなことないって。引いてみようよ」
 宇野が慌てると、空井はますます微笑みを深くした。
「いいんだよ。宇野とつき合えたことで一生分の幸運使ったから、この先ずっと大凶でも嬉しいくらいだ」
「僕はやだよ!」
 大凶では、空井が笑顔でいられないかもしれない。空井よりも宇野のほうが怖がっていると、空井はおかしそうに噴き出した。笑われても、空井がこの先ずっと大凶なんて絶対嫌だ。
「じゃあ、僕が大吉引いて空井にあげる。そしたら空井と僕で大吉半分こできるよ!」
 なかなかいいアイデアだ。意気込む宇野に、空井は目を丸くしてまたも噴き出した。
「大吉半分こって、斬新だな」
「いいの! 行ってくる!」
 大吉大吉……と心で呟きながらおみくじを引く。出た札にあからさまにがっかりすると、いつの間にか隣に空井がいた。
「小吉」
「……たくさんお願いしたのに」
 空井が笑顔でいられなかったらどうしよう。不安がやってきた宇野に、空井はからっと笑う。おみくじかけにおみくじを結びながら、まだ大吉が諦められない。でもおみくじは二度引けない。
「いいじゃん、小吉半分こ。宇野と半分こできること自体が幸せだから、俺にとっては大吉よりすごい」
「……そうだけど」
 でもやはり大吉のほうがよかったと思ってしまうのは、欲深いのだろうか。
「俺が一番嬉しいのは、宇野が俺のことを考えてくれたことなんだよ」
 心底嬉しそうに笑う空井に、早くも願いごとが叶っていると思えた。空井が笑顔でいてくれるなら、大吉でも小吉でも大凶でもいい。来たとき以上に心を弾ませて神社をあとにした。
「どこか行ってもいいけど、元旦じゃどこも休みだよな」
「そうだよね」
 それでもすぐに帰るのはもったいないし、もう少し空井と一緒にいたい。足を止めた宇野の隣で、空井も立ち止まった。
「俺んち来るか?」
「行く」
 即答した宇野に、空井は数度目をまたたいた。返事が早すぎたかもしれない。もう少し一緒にいたいと思ったことがばれただろう。隠しているわけではなくても、心の内を知られるのは恥ずかしい。
 電車に乗って空井の自宅最寄り駅で降りた。途中でコンビニに寄って、新年だからと奮発して麦茶と極上肉まんを買う。もちろん空井も同じものを買った。ずっと食べてみたかったから楽しみだ。
「お邪魔します」
「気遣わなくていいから」
 空井の家につくと、リビングにいるご両親に挨拶をしてから二階にあがった。空井の部屋は、字と同じく特徴的だ。大きな本棚があるが、なんでも本棚に並べてある。教科書も漫画もペンケースも、ボックスティッシュも本棚に並べられていて、たぶん空井としては配置の意味があるのだろうと考えている。宇野にはわからないけれど。
 グレーのラグの上に茶色の木製ローテーブルがあり、その前に座る。向かい合って座ると思っていたら、空井は宇野の隣に腰をおろした。先ほど歩いていたときと同じ距離なのに、変にどきどきする。緊張を悟られないように話題を探し、コンビニで買った極上肉まんの存在を思い出した。
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