囲いの中で

すずかけあおい

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欲望のままに

欲望のままに④

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「…?」

頬を触られて目を覚ます。
目の前に尚紀の顔。
暗いからよくわからないけれど、瞳が揺れているように見える。

「尚紀…?」
「衛介、キスしていい?」
「どうした? なにかあったか?」
「キスしたい」

唇が重なる。
尚紀からのキス…それだけで心が躍る。
ぞくぞくとなにかが背筋を駆け上がっていった。
熱が滾る。

「どれだけ飲んだんだ」

さっきのキスとは違う、だいぶ濃いアルコールのにおいがする。

「冷蔵庫に入ってるだけ飲んだ」
「……飲み過ぎだ」

六本パックを買ってきて俺が一本、そのとき尚紀も一本飲んでいたから、残り四本は入っていたはず。
全部飲んだのか…これだから尚紀は放っておけない。
と思っていたらなぜか尚紀が布団を捲って隣に横になる。
まずい。
今、近付かれたら下半身の熱がバレる。

「酔ってるんだ。早く部屋に戻れ」
「なんでそういう冷たいこと言うの? 俺の誕生日だよ?」
「尚紀…」

尚紀にぎゅっと抱きつかれて、心臓が激しく脈打つ。
首元に頬をすり寄せられて昂る熱が沸き上がる。

―――抱きたい。

「ねえ、衛介…抱いてよ。さっきの続き、して」
「……」
「衛介…」

もう一度顔を近付けてくる尚紀。
その吐息に混じるアルコールのにおいにはっとして避ける。

「酔ってすることじゃない」

水を取りに行こうと起き上がり、ベッドから出る。
ドタドタッと音がしたので、尚紀がベッドから落ちたのかもと照明をつける。

「いたた…」

やっぱり…。

「大丈夫か? 酔ってるんだから気を付けろ」
「ごめん…」

尚紀が俺をじっと見るので、つい目を逸らしてしまう。
まっすぐで澄んだ瞳は、いつでも俺の汚れを見抜こうとする。
それを覗かれるのが怖い。

尚紀が勢いよく抱きついてくるので抱き留める。
尚紀の香り。
ずっと嗅いできたけれど、こんなに魅惑的で色気を含んでいたか。

「おい」
「衛介…」
「どうした?」
「えいすけぇ…っ」

そのまま尚紀が泣き出すので、背中をぽんぽんと叩く。
そのリズムと共に俺の気持ちも楽になっていく。
尚紀には俺がいないとだめだ。
俺には尚紀がいないとだめだ。

「尚紀?」
「衛介が、俺と一緒にいるの、洗脳するためじゃないよな? 好きだからだよな?」
「……」
「好きって言って…っ」

可愛い尚紀。
まだ混乱しているのか。

洗脳じゃない、愛だ。
ただ尚紀が愛しいだけなんだ。

「好きだよ」
「……もっと…」
「好きだ、尚紀。尚紀だけ好きだ」

俺が言うことで尚紀が満足して安心するなら、声が嗄れても喉が潰れても言い続ける。
尚紀が好きだ。
なによりも誰よりも、愛しくて可愛くて、抱きたいのに抱けないくらい大切で。

失う恐怖を知りたくない。
それから逃げるためだけに尚紀を箱詰めにしてきた。
もしかしたら解放してやるべきなのかもしれない。
でも、こんな風に求められたら……。

「…ねえ、衛介」

なにかを秘めた尚紀の瞳に脳が痺れる。

「どうした?」

頬を撫でてやると、その手をぎゅっと握られた。
その力強さに捕まる。

「なんでもない」

口元に笑みを浮かべて俺に擦り寄る尚紀。
髪を撫でながら俺も尚紀を抱き締める。

明日、絶対に…世界が崩れても尚紀を抱こう。
俺の欲望のままに。
尚紀の欲望のままに―――。
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