38 / 116
一章 契約と回帰
三十四話
しおりを挟む
ダンジョン用の装備に着替えるため男女で分かれたあと、ソラ・ボッケ・マルコの3人は男子側の簡易更衣スペースに移動した。
テントの布越しに外のざわめきが聞こえるなか、ソラはアイテムボックスから丁寧に荷物を広げ、ひとつひとつ確認していく。
まず取り出したのは、ハーデン先生から受け取った革製の胸当て・籠手・脛当てだ。
バトルウルフの皮が朝日を受けて白く輝く。
「……よし、サイズは問題なし。」
胸当てのバックルを締めると、身体に吸い付くようにフィットした。
革の匂いと、微かに残る油の香りがする。ソラはそれだけで心が少し落ち着くのを感じた。
腰にギルドで買った小型バッグを装着。肩にはいつものように、クロが入った肩掛けのカバンを掛ける。
さらにアイテムボックスから鉄剣を呼び出し、鞘を腰に固定した。
――よし、これで大丈夫。
胸の奥に微かな緊張感と高揚感が同時に湧き上がる。
おいソラ、お前まだ終わらんのか。」
ぶっきらぼうにボッケが声をかけてきた。
すでに着替えを終えたボッケは、上半身を覆う鉄鎧に、ヘルメット、重厚な鉄の脛当てを装備していた。
その巨体にこの鎧が加わると、まるで岩のような迫力がある。
「……すげぇなボッケ。ほんとうに頼りになりそうだ。」
「当たり前だ。前に出るのは私の役目だ。」
と言いながらも、どこか照れくさそうに鼻を鳴らす。
盾と剣を持った姿は、まさに前衛の壁そのものだった。
一方のマルコは、控えめとは程遠い存在感を放っていた。
青いローブには細かな金糸の刺繍が施され、布の揺れとともにキラキラと光る。
そして手には短く細い杖を持ち、鏡を覗くように自分の服の確認をしている。
「どうだいソラ君。このローブ、なかなか決まってるだろ?」
と眉を上げる。
「その刺繍……すごいな。高そうだ。」
「ふふん、これは僕のグランドマザーが作ってくれた一点物さ。
“マルコはどうせ目立つんだから、なら堂々と輝きなさい”ってね。」
キザなポーズを決めながら話すマルコに、ボッケは呆れ半分で肩をすくめた。
「おまえ…そんな派手な格好ダンジョンで汚れるぞ。」
「ダンジョンが僕に合わせてくれればいいんだよ。」
「馬鹿な事を言ってるんじゃない!!」
そんな二人のやり取りにソラは思わず笑った。
男子3人が装備の最終チェックを終えたころ、テントの外から足音が近づいてくる。
「おまたせしました……」
控えめな声で現れたのはリン。
彼女は落ち着いた色合いのロングローブに、動きやすそうなシャツとスカートの組み合わせ。
武器は長めの木製の杖だ。軽量だが、先端には魔法が発動しやすいように小さな魔石が取り付けられている。
その後ろから、跳ねるような足取りでファラが現れた。
「おまたせでーす!! ファラ、準備完了なのです!」
ファラの装備は――想像以上に目立った。
黒を基調にしたファラの故郷の正装?らしいクノイチ装束は、動きやすさを重視しているのか露出度が高い。
肩や太ももが大きく開いており、胸元も少し控えめとは言えない。
ボッケ・マルコ・ソラの男子三人は、一瞬だけ目のやり場に困り、微妙に視線を逸らした。
「ふふっ、なんですかー? 男性陣、ヘンな顔してますー?」
ファラがいたずらっぽく笑う。
「い、いや! その……すごく動きやすそうだな、って……!」
ソラが必死に誤魔化すと、
「そーなんですよー! ファラのこの武器、クナイと手裏剣も故郷での必需品なんでーす!」
手裏剣10枚、クナイ3本。腰のホルダーに収まっているそれを見せるファラ。
マルコが呟く。
(……ファラ君って、着痩せタイプだったんだね……)
ボッケも無言でうなずいた。
みんなが揃ったところで、ソラは言った。
「みんな、もし荷物があるならアイテムボックスに預かるよ。
ダンジョンでは身軽なほうがいいし。」
「頼むぞソラ。」
「ありがとうソラ君。」
「ソラ、たよりになるー!」
「た、たすかります……」
それぞれが持ってきた水筒や予備の着替え、ちょっとした食糧などをソラのアイテムボックスへ預ける。特にリンのバックはかなり大きめで重かった。
アイテムがスッと消えていく様子を見て、改めてメンバーは感心した。
「荷物を持たないでいいなんて楽だな」
「非戦闘系なんて言わせない便利さだよ!」
リンも小さく微笑む。「……本当に助かります。」
ソラは少し照れた。
テントの布越しに外のざわめきが聞こえるなか、ソラはアイテムボックスから丁寧に荷物を広げ、ひとつひとつ確認していく。
まず取り出したのは、ハーデン先生から受け取った革製の胸当て・籠手・脛当てだ。
バトルウルフの皮が朝日を受けて白く輝く。
「……よし、サイズは問題なし。」
胸当てのバックルを締めると、身体に吸い付くようにフィットした。
革の匂いと、微かに残る油の香りがする。ソラはそれだけで心が少し落ち着くのを感じた。
腰にギルドで買った小型バッグを装着。肩にはいつものように、クロが入った肩掛けのカバンを掛ける。
さらにアイテムボックスから鉄剣を呼び出し、鞘を腰に固定した。
――よし、これで大丈夫。
胸の奥に微かな緊張感と高揚感が同時に湧き上がる。
おいソラ、お前まだ終わらんのか。」
ぶっきらぼうにボッケが声をかけてきた。
すでに着替えを終えたボッケは、上半身を覆う鉄鎧に、ヘルメット、重厚な鉄の脛当てを装備していた。
その巨体にこの鎧が加わると、まるで岩のような迫力がある。
「……すげぇなボッケ。ほんとうに頼りになりそうだ。」
「当たり前だ。前に出るのは私の役目だ。」
と言いながらも、どこか照れくさそうに鼻を鳴らす。
盾と剣を持った姿は、まさに前衛の壁そのものだった。
一方のマルコは、控えめとは程遠い存在感を放っていた。
青いローブには細かな金糸の刺繍が施され、布の揺れとともにキラキラと光る。
そして手には短く細い杖を持ち、鏡を覗くように自分の服の確認をしている。
「どうだいソラ君。このローブ、なかなか決まってるだろ?」
と眉を上げる。
「その刺繍……すごいな。高そうだ。」
「ふふん、これは僕のグランドマザーが作ってくれた一点物さ。
“マルコはどうせ目立つんだから、なら堂々と輝きなさい”ってね。」
キザなポーズを決めながら話すマルコに、ボッケは呆れ半分で肩をすくめた。
「おまえ…そんな派手な格好ダンジョンで汚れるぞ。」
「ダンジョンが僕に合わせてくれればいいんだよ。」
「馬鹿な事を言ってるんじゃない!!」
そんな二人のやり取りにソラは思わず笑った。
男子3人が装備の最終チェックを終えたころ、テントの外から足音が近づいてくる。
「おまたせしました……」
控えめな声で現れたのはリン。
彼女は落ち着いた色合いのロングローブに、動きやすそうなシャツとスカートの組み合わせ。
武器は長めの木製の杖だ。軽量だが、先端には魔法が発動しやすいように小さな魔石が取り付けられている。
その後ろから、跳ねるような足取りでファラが現れた。
「おまたせでーす!! ファラ、準備完了なのです!」
ファラの装備は――想像以上に目立った。
黒を基調にしたファラの故郷の正装?らしいクノイチ装束は、動きやすさを重視しているのか露出度が高い。
肩や太ももが大きく開いており、胸元も少し控えめとは言えない。
ボッケ・マルコ・ソラの男子三人は、一瞬だけ目のやり場に困り、微妙に視線を逸らした。
「ふふっ、なんですかー? 男性陣、ヘンな顔してますー?」
ファラがいたずらっぽく笑う。
「い、いや! その……すごく動きやすそうだな、って……!」
ソラが必死に誤魔化すと、
「そーなんですよー! ファラのこの武器、クナイと手裏剣も故郷での必需品なんでーす!」
手裏剣10枚、クナイ3本。腰のホルダーに収まっているそれを見せるファラ。
マルコが呟く。
(……ファラ君って、着痩せタイプだったんだね……)
ボッケも無言でうなずいた。
みんなが揃ったところで、ソラは言った。
「みんな、もし荷物があるならアイテムボックスに預かるよ。
ダンジョンでは身軽なほうがいいし。」
「頼むぞソラ。」
「ありがとうソラ君。」
「ソラ、たよりになるー!」
「た、たすかります……」
それぞれが持ってきた水筒や予備の着替え、ちょっとした食糧などをソラのアイテムボックスへ預ける。特にリンのバックはかなり大きめで重かった。
アイテムがスッと消えていく様子を見て、改めてメンバーは感心した。
「荷物を持たないでいいなんて楽だな」
「非戦闘系なんて言わせない便利さだよ!」
リンも小さく微笑む。「……本当に助かります。」
ソラは少し照れた。
30
あなたにおすすめの小説
異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!
枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕
タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】
3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!
最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様
コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」
ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。
幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。
早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると――
「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」
やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。
一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、
「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」
悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。
なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?
でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。
というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!
現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜
涼月 風
ファンタジー
御門賢一郎は過去にトラウマを抱える高校一年生。
ゴールデンウィークにソロキャンプに行き、そこで綺麗な石を拾った。
しかし、その直後雷に打たれて意識を失う。
奇跡的に助かった彼は以前の彼とは違っていた。
そんな彼が成長する為に異世界に行ったり又、現代で錬金術をしながら生活する物語。
異世界帰還者の気苦労無双録~チートスキルまで手に入れたのに幼馴染のお世話でダンジョン攻略が捗らない~
虎柄トラ
ファンタジー
下校帰りに不慮の事故に遭い命を落とした桜川凪は、女神から開口一番に異世界転生しないかと勧誘を受ける。
意味が分からず凪が聞き返すと、女神は涙ながらに異世界の現状について語り出す。
女神が管理する世界ではいま魔族と人類とで戦争をしているが、このままだと人類が負けて世界は滅亡してしまう。
敗色濃厚なその理由は、魔族側には魔王がいるのに対して、人類側には勇者がいないからだという。
剣と魔法が存在するファンタジー世界は大好物だが、そんな物騒な世界で勇者になんてなりたくない凪は断るが、女神は聞き入れようとしない。
一歩も引かない女神に対して凪は、「魔王を倒せたら、俺を元の身体で元いた世界に帰還転生させろ」と交換条件を提示する。
快諾した女神と契約を交わし転生した凪は、見事に魔王を打ち倒して元の世界に帰還するが――。
~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる
僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。
スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。
だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。
それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。
色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。
しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。
ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。
一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。
土曜日以外は毎日投稿してます。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる
家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。
召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。
多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。
しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。
何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。
レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない
あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる