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一章 契約と回帰
四十二話
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ソラはクロの入ったカバンを床にそっと置くと、ゴーマンは動いた。
踏み込み一歩。
それだけで距離が消える。
「――っ!」
ソラは反射的に身を捻った。
次の瞬間、さっきまでソラの頭があった位置を、ゴーマンの拳が通過する。
ドンッ!!
拳が空を叩いただけで、背後の石壁が砕け散った。
衝撃波が遅れてソラを襲い、体が吹き飛びそうになる。
(速い……! いや、強引すぎる……!)
ソラは腰を落とし、地面を蹴って横へ転がる。
だが――。
「逃がすかよ」
ゴーマンは、笑っていた。
次の瞬間、地を踏み抜くような一歩。
ソラが体勢を立て直す前に、すでに視界の端に“腕”がある。
咄嗟に、魔力を全身へ。
水が弾けるような感覚。
身体能力を底上げするための、無理やりな魔力循環。
ギリギリで、ソラは跳んだ。
拳が腹を掠め、皮膚が裂ける。
激痛と同時に、背後の床が砕けた。
「ほう……避けるか」
ゴーマンは感心したように眉を上げる。
「ガキにしちゃ、いい反応だ。だがな」
一歩。
また一歩。
ソラが距離を取ろうとするたび、その差は一瞬で詰められる。
(力の差はあいつが完全に上だ……!)
拳、肘、膝。
攻撃は単純だが、すべてが“当たれば終わり”の重さ。
ソラは避ける。
転がり、跳び、滑り込むようにかわす。だが、かわし続けるソラが徐々にゴーマンの攻撃に対応できなくなりつつあった。
「ははっ! いいねぇ! 逃げ回る姿、嫌いじゃねぇ!」
ゴーマンの拳が、再び迫る。
ソラは歯を食いしばり、両手に魔力を集中させた。
拳を作る――だが、殴るためじゃない。
(受け止めるな……流せ……!)
真正面からぶつからず、力を逃がす。
拳と拳が触れた瞬間、ソラは衝撃を“横”へずらした。
「――っ!!」
腕が痺れ、骨が悲鳴を上げる。
それでも、吹き飛ばされずに済んだ。
ゴーマンの目が、わずかに細まる。
「……面白ぇ」
その一言と同時に、さらに重い圧がソラを包んだ。
クロの声が、教会内に響く。
『ソラ、来るぞ!』
逃げる余地は、もうほとんどない。
それでもソラは、足を引かず、拳を構え直した。
――ここで倒れたら、全部終わる。
ゴーマンはゆっくりと近づき、逃げ道を塞ぐように立った。
「安心しろ。殺しはしねぇ。だがガキどもの依頼だから二度と立てねぇ体にはしてやる」
その言葉が、ソラの胸の奥を強く揺さぶった。
リンの笑顔。
ファラの無邪気な声。
ボッケの不器用の誠実さ。
マルコのキザだが人を想う優しさ。
そして――
何も成せなかった“前の人生”の自分。
「……ふざけるな」
ソラの声は小さかったが、確かな怒りを孕んでいた。
「終わりにしようぜ!お前のな!」
ゴーマンが踏み込む。
次の瞬間、強化された拳が真っ直ぐソラの顔面を狙って突き出される。
――今だ。
恐怖も、悔しさも、怒りも、全部まとめて叩きつけるように、ソラは感情を解放した。
胸の奥で何かが弾ける。
水面だった魔力が一気に荒れ狂い、濁流のように体内を駆け巡る。
「っ……!」
右腕に、意識を集中させる。
集めるのではない。
“溢れた”魔力が、自然と拳へと流れ込む。
ゴーマンの拳と、ソラの拳が――正面から交差した。
ドンッ!!!!
鈍く、重い衝撃音が教会に響く。
空気が震え、床の埃が舞い上がった。
「な……っ」
ゴーマンの目が見開かれる。
次の瞬間、巨体がぐらりと揺れ、そのまま――
片膝を、床に突いた。
ソラは荒い息を吐きながら、拳を下ろす。
腕は痺れ、立っているのがやっとだったが、それでも――立っていた。
膝をついたままのゴーマンが、信じられないものを見るようにソラを睨む。
「ガキが……」
その声には、さっきまでの余裕はなかった。
ソラは震える足で一歩前に出る。
「……まだ、終わってない」
それはゴーマンに向けた言葉であり、
同時に――自分自身への宣言だった。
踏み込み一歩。
それだけで距離が消える。
「――っ!」
ソラは反射的に身を捻った。
次の瞬間、さっきまでソラの頭があった位置を、ゴーマンの拳が通過する。
ドンッ!!
拳が空を叩いただけで、背後の石壁が砕け散った。
衝撃波が遅れてソラを襲い、体が吹き飛びそうになる。
(速い……! いや、強引すぎる……!)
ソラは腰を落とし、地面を蹴って横へ転がる。
だが――。
「逃がすかよ」
ゴーマンは、笑っていた。
次の瞬間、地を踏み抜くような一歩。
ソラが体勢を立て直す前に、すでに視界の端に“腕”がある。
咄嗟に、魔力を全身へ。
水が弾けるような感覚。
身体能力を底上げするための、無理やりな魔力循環。
ギリギリで、ソラは跳んだ。
拳が腹を掠め、皮膚が裂ける。
激痛と同時に、背後の床が砕けた。
「ほう……避けるか」
ゴーマンは感心したように眉を上げる。
「ガキにしちゃ、いい反応だ。だがな」
一歩。
また一歩。
ソラが距離を取ろうとするたび、その差は一瞬で詰められる。
(力の差はあいつが完全に上だ……!)
拳、肘、膝。
攻撃は単純だが、すべてが“当たれば終わり”の重さ。
ソラは避ける。
転がり、跳び、滑り込むようにかわす。だが、かわし続けるソラが徐々にゴーマンの攻撃に対応できなくなりつつあった。
「ははっ! いいねぇ! 逃げ回る姿、嫌いじゃねぇ!」
ゴーマンの拳が、再び迫る。
ソラは歯を食いしばり、両手に魔力を集中させた。
拳を作る――だが、殴るためじゃない。
(受け止めるな……流せ……!)
真正面からぶつからず、力を逃がす。
拳と拳が触れた瞬間、ソラは衝撃を“横”へずらした。
「――っ!!」
腕が痺れ、骨が悲鳴を上げる。
それでも、吹き飛ばされずに済んだ。
ゴーマンの目が、わずかに細まる。
「……面白ぇ」
その一言と同時に、さらに重い圧がソラを包んだ。
クロの声が、教会内に響く。
『ソラ、来るぞ!』
逃げる余地は、もうほとんどない。
それでもソラは、足を引かず、拳を構え直した。
――ここで倒れたら、全部終わる。
ゴーマンはゆっくりと近づき、逃げ道を塞ぐように立った。
「安心しろ。殺しはしねぇ。だがガキどもの依頼だから二度と立てねぇ体にはしてやる」
その言葉が、ソラの胸の奥を強く揺さぶった。
リンの笑顔。
ファラの無邪気な声。
ボッケの不器用の誠実さ。
マルコのキザだが人を想う優しさ。
そして――
何も成せなかった“前の人生”の自分。
「……ふざけるな」
ソラの声は小さかったが、確かな怒りを孕んでいた。
「終わりにしようぜ!お前のな!」
ゴーマンが踏み込む。
次の瞬間、強化された拳が真っ直ぐソラの顔面を狙って突き出される。
――今だ。
恐怖も、悔しさも、怒りも、全部まとめて叩きつけるように、ソラは感情を解放した。
胸の奥で何かが弾ける。
水面だった魔力が一気に荒れ狂い、濁流のように体内を駆け巡る。
「っ……!」
右腕に、意識を集中させる。
集めるのではない。
“溢れた”魔力が、自然と拳へと流れ込む。
ゴーマンの拳と、ソラの拳が――正面から交差した。
ドンッ!!!!
鈍く、重い衝撃音が教会に響く。
空気が震え、床の埃が舞い上がった。
「な……っ」
ゴーマンの目が見開かれる。
次の瞬間、巨体がぐらりと揺れ、そのまま――
片膝を、床に突いた。
ソラは荒い息を吐きながら、拳を下ろす。
腕は痺れ、立っているのがやっとだったが、それでも――立っていた。
膝をついたままのゴーマンが、信じられないものを見るようにソラを睨む。
「ガキが……」
その声には、さっきまでの余裕はなかった。
ソラは震える足で一歩前に出る。
「……まだ、終わってない」
それはゴーマンに向けた言葉であり、
同時に――自分自身への宣言だった。
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