《カクヨム様で15000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う

なべぞう

文字の大きさ
56 / 106
一章 契約と回帰

五十二話

しおりを挟む
冷たい石造りの牢の中で、ゴーマンは鎖に繋がれたまま座り込んでいた。
湿った空気が肺にまとわりつき、鉄と血の匂いが鼻を刺す。

顔は原形を留めていない。
頬は腫れ上がり、鼻梁は歪み、唇は裂けて血の痕が固まっている。それでも――生きていた。

(……なぜだ)

自分でも理由は分からない。
あの一撃を受けてなお意識が残っているのは、元々の身体の丈夫さか、それとも――別の“意思”が働いたのか。考えようにも、思考は鈍く、ただ痛みだけが現実を主張していた。

その時、足音もなく“何か”が牢の前に立った。

――バシャッ。

突然、顔面に冷たい液体がかけられる。

「ぐっ……!?」

ゴーマンは反射的に目を閉じ、呻いた。
だが次の瞬間、焼け付くようだった顔の痛みが、嘘のように引いていく。

腫れが引き、裂けた皮膚が塞がり、歪んでいた骨の違和感が薄れていく。

(……ハイ、ポーション……?)

自分の顔にかけられた液体の正体に気づいた瞬間、ゴーマンの背筋に別種の寒気が走った。

誰だ。
こんな高価なものを、こんな場所で、こんなタイミングで使う人間は――

ゴーマンは、ゆっくりと顔を上げる。

そこに立っていたのは、人の形をしていながら、人とは呼びがたい存在だった。

全身が闇に覆われている。
衣服なのか、影そのものなのかすら判別できない。輪郭は曖昧で、光を拒むように揺らぎ、唯一はっきりしているのは――闇の奥に浮かぶ、二つの目だけ。

冷たく、深く、底知れない眼光。

それを見た瞬間、ゴーマンの喉がひくりと鳴った。

「……ボ、ボス……!?
な、なぜここに……!」

震える声でそう口にした瞬間、影の男の“気配”が僅かに揺れた。
それだけで牢の空気が一段冷え込む。

『……ゴーマン』

声は低く、感情の起伏が一切ない。
だが、その無機質さこそが、何よりも恐ろしかった。

『貴様が、軽々しく“裏ギルド”の名を口にしたと聞いた』

ゴーマンの喉がひくりと鳴る。

『自らを“ボス”と偽り、勝手に依頼を受け、学生を攫い、街の外で騒ぎを起こした』
『その結果、警備隊が動き、表の連中が我々を嗅ぎ始めた』

影の男は一歩、牢に近づく。
それだけで、ゴーマンは本能的に後ずさろうとして鎖に阻まれた。

『貴様の浅はかな行いが、どれほどの危険を孕んでいるか……理解しているか?』

「ち、違う……!
俺はただ……依頼をこなしただけで……!」

必死の弁解に、影の男は首を傾げるような仕草を見せた。

『裏ギルドとは“影”だ』
『名を知られず、姿を見せず、存在を疑わせないからこそ成り立つ』

一拍置いて、冷然と言い放つ。

『それを貴様は、自ら明かし、誇示し、利用した』

牢の床に、影が濃く落ちる。

『その行為は、裏ギルドに属する全ての者を危険に晒す』
『到底、看過できるものではない』

ゴーマンの額から冷や汗が滲み出る。

「……ま、待ってくれ……!
俺は……俺はまだ役に立つ!
危険な奴がいるんだ!
俺を倒したあいつ……あいつは本当にヤバい!」

必死に声を張り上げる。

「俺を殺せば、そいつの情報は消えるぞ!!
それでもいいのか!?」

一瞬の沈黙。
だが、影の男は立ち止まらなかった。

『不要だ』

短く、切り捨てるように言う。

『危険な存在がいるならば、
それはこの私が“対処”するだけの話だ。
貴様の価値にはならない』

影の男は、すでにゴーマンの目の前に立っていた。

「……や、やめろ……」

声が震える。
本能が、全力で警鐘を鳴らしていた。

「やめろおおおおおお!!」

叫び声が牢に反響する。
だが、影の男の動きは止まらない。

闇に包まれた腕が、ゆっくりと伸びる。

次の瞬間――

ゴーマンの胸に、鋭い衝撃が走った。

「……っ……」

声にならない声。
影の男の手は、正確に心臓を貫いていた。

血が溢れる感覚すら、すぐに遠のいていく。
視界が暗くなり、思考が途切れ始める。

最後に見えたのは、感情のない二つの光。

『……お前はこれで終わりだ』

それが、ゴーマンが聞いた最後の言葉だった。

影の男は手を引き抜く。

影の男はそのまま闇の中へと溶けるように消えていく。

牢には、静寂だけが残った。
ゴーマンの身体は二度と動くことなく、冷たい床に崩れ落ちていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

公爵家次男はちょっと変わりモノ? ~ここは乙女ゲームの世界だから、デブなら婚約破棄されると思っていました~

松原 透
ファンタジー
異世界に転生した俺は、婚約破棄をされるため誰も成し得なかったデブに進化する。 なぜそんな事になったのか……目が覚めると、ローバン公爵家次男のアレスという少年の姿に変わっていた。 生まれ変わったことで、異世界を満喫していた俺は冒険者に憧れる。訓練中に、魔獣に襲われていたミーアを助けることになったが……。 しかし俺は、失敗をしてしまう。責任を取らされる形で、ミーアを婚約者として迎え入れることになった。その婚約者に奇妙な違和感を感じていた。 二人である場所へと行ったことで、この異世界が乙女ゲームだったことを理解した。 婚約破棄されるためのデブとなり、陰ながらミーアを守るため奮闘する日々が始まる……はずだった。 カクヨム様 小説家になろう様でも掲載してます。

転移術士の成り上がり

名無し
ファンタジー
 ベテランの転移術士であるシギルは、自分のパーティーをダンジョンから地上に無事帰還させる日々に至上の喜びを得ていた。ところが、あることがきっかけでメンバーから無能の烙印を押され、脱退を迫られる形になる。それがのちに陰謀だと知ったシギルは激怒し、パーティーに対する復讐計画を練って実行に移すことになるのだった。

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』 たったこの一言から、すべてが始まった。 ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。 そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。 それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。 ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。 スキルとは祝福か、呪いか…… ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!! 主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。 ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。 ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。 しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。 一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。 途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。 その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。 そして、世界存亡の危機。 全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した…… ※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。

ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち
ファンタジー
ダンジョンを攻略する人材を育成する学校、竜桜学園に入学した主人公綿貫 鐘太郎(ワタヌキ カネタロウ)はサブカル同好会に所属し、気の合う仲間達とまったりと平和な日常を過ごしていた。しかしそんな心地のいい時間は長くは続かなかった。 まったく貢献度のない同好会が部室を持っているのはどうなのか?と生徒会から同好会解散を打診されたのだ。 しかしそれは困るワタヌキ達は部室と同好会を守るため、ある条件を持ちかけた。 一週間以内に学園のため、学園に貢献できる成果を提出することになったワタヌキは秘策として同好会のメンバーに彼の秘密を打ちあけることにした。

【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
 女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!  HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。  跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。 「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」  最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

処理中です...