《カクヨム様で50000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う

なべぞう

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一章 契約と回帰

五十二話

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冷たい石造りの牢の中で、ゴーマンは鎖に繋がれたまま座り込んでいた。
湿った空気が肺にまとわりつき、鉄と血の匂いが鼻を刺す。

顔は原形を留めていない。
頬は腫れ上がり、鼻梁は歪み、唇は裂けて血の痕が固まっている。それでも――生きていた。

(……なぜだ)

自分でも理由は分からない。
あの一撃を受けてなお意識が残っているのは、元々の身体の丈夫さか、それとも――別の“意思”が働いたのか。考えようにも、思考は鈍く、ただ痛みだけが現実を主張していた。

その時、足音もなく“何か”が牢の前に立った。

――バシャッ。

突然、顔面に冷たい液体がかけられる。

「ぐっ……!?」

ゴーマンは反射的に目を閉じ、呻いた。
だが次の瞬間、焼け付くようだった顔の痛みが、嘘のように引いていく。

腫れが引き、裂けた皮膚が塞がり、歪んでいた骨の違和感が薄れていく。

(……ハイ、ポーション……?)

自分の顔にかけられた液体の正体に気づいた瞬間、ゴーマンの背筋に別種の寒気が走った。

誰だ。
こんな高価なものを、こんな場所で、こんなタイミングで使う人間は――

ゴーマンは、ゆっくりと顔を上げる。

そこに立っていたのは、人の形をしていながら、人とは呼びがたい存在だった。

全身が闇に覆われている。
衣服なのか、影そのものなのかすら判別できない。輪郭は曖昧で、光を拒むように揺らぎ、唯一はっきりしているのは――闇の奥に浮かぶ、二つの目だけ。

冷たく、深く、底知れない眼光。

それを見た瞬間、ゴーマンの喉がひくりと鳴った。

「……ボ、ボス……!?
な、なぜここに……!」

震える声でそう口にした瞬間、影の男の“気配”が僅かに揺れた。
それだけで牢の空気が一段冷え込む。

『……ゴーマン』

声は低く、感情の起伏が一切ない。
だが、その無機質さこそが、何よりも恐ろしかった。

『貴様が、軽々しく“裏ギルド”の名を口にしたと聞いた』

ゴーマンの喉がひくりと鳴る。

『自らを“ボス”と偽り、勝手に依頼を受け、学生を攫い、街の外で騒ぎを起こした』
『その結果、警備隊が動き、表の連中が我々を嗅ぎ始めた』

影の男は一歩、牢に近づく。
それだけで、ゴーマンは本能的に後ずさろうとして鎖に阻まれた。

『貴様の浅はかな行いが、どれほどの危険を孕んでいるか……理解しているか?』

「ち、違う……!
俺はただ……依頼をこなしただけで……!」

必死の弁解に、影の男は首を傾げるような仕草を見せた。

『裏ギルドとは“影”だ』
『名を知られず、姿を見せず、存在を疑わせないからこそ成り立つ』

一拍置いて、冷然と言い放つ。

『それを貴様は、自ら明かし、誇示し、利用した』

牢の床に、影が濃く落ちる。

『その行為は、裏ギルドに属する全ての者を危険に晒す』
『到底、看過できるものではない』

ゴーマンの額から冷や汗が滲み出る。

「……ま、待ってくれ……!
俺は……俺はまだ役に立つ!
危険な奴がいるんだ!
俺を倒したあいつ……あいつは本当にヤバい!」

必死に声を張り上げる。

「俺を殺せば、そいつの情報は消えるぞ!!
それでもいいのか!?」

一瞬の沈黙。
だが、影の男は立ち止まらなかった。

『不要だ』

短く、切り捨てるように言う。

『危険な存在がいるならば、
それはこの私が“対処”するだけの話だ。
貴様の価値にはならない』

影の男は、すでにゴーマンの目の前に立っていた。

「……や、やめろ……」

声が震える。
本能が、全力で警鐘を鳴らしていた。

「やめろおおおおおお!!」

叫び声が牢に反響する。
だが、影の男の動きは止まらない。

闇に包まれた腕が、ゆっくりと伸びる。

次の瞬間――

ゴーマンの胸に、鋭い衝撃が走った。

「……っ……」

声にならない声。
影の男の手は、正確に心臓を貫いていた。

血が溢れる感覚すら、すぐに遠のいていく。
視界が暗くなり、思考が途切れ始める。

最後に見えたのは、感情のない二つの光。

『……お前はこれで終わりだ』

それが、ゴーマンが聞いた最後の言葉だった。

影の男は手を引き抜く。

影の男はそのまま闇の中へと溶けるように消えていく。

牢には、静寂だけが残った。
ゴーマンの身体は二度と動くことなく、冷たい床に崩れ落ちていた。
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