62 / 116
二章 黒曜麒麟
五十八話
しおりを挟む
ソラは十体目の吸血コウモリを斬り落とし、ダンジョン内の奥に残っていた微かな羽音が完全に消えたのを確認してから、ゆっくりと息を吐いた。
「……終わりだな」
鉄剣を下ろすと、剣身にまとっていた淡い雷光がぱちりと弾けて消える。
胸の奥に残る魔力の流れはまだ整っていて、息切れもほとんどない。
ダンジョンを出ると、外の空気がひんやりと肌を撫でた。
以前ここで魔石を集めた時は、たった数体倒しただけで脚が重くなり、腕も震えていたはずだ。なのに今は、確かな疲労はあるものの、まだ動ける余裕がある。
「……本当に、全然違うな」
自分でも驚くほどだった。
訓練場での魔力操作、筋力トレーニング、走り込み。地味で派手さのない積み重ねが、確実に自分の身体を変えている。
だが――
ソラの口元は、自然と緩んでいた。
「それより……」
ソラは手のひらを見つめる。
先ほどまで鉄剣に纏わせていた雷の感覚を思い出す。魔力を流し、形を与え、武器と一体化させる感触。意識すれば、今でも指先に微かな痺れが蘇る。
『……浮かれているな』
肩掛け鞄の中から、クロの声が聞こえた。
「わかってる。でもさ……」
ソラは苦笑しながら答える。
「雷を“纏う”って、正直めちゃくちゃかっこよくないか?」
『そこか』
クロは呆れたように息をつく。
『だが、浮かれるだけの理由はある。雷魔法レベル2は、単なる威力の上昇じゃない。応用が一気に広がる段階だ』
「エンチャントとスタンピート、か」
『そうだ。特にスタンピートは出が早く、当てれば相手の動きを一瞬止められる。致命打を作るための魔法だ』
ソラは頷く。
実際、吸血コウモリを相手にしてその強さをはっきり実感した。スタンピートを当て、動きが止まった瞬間に踏み込み、確実に仕留める。以前なら無駄な動きが多く消耗も激しかったはずだ。
「……ちゃんと、強くなってるんだな」
『ああ。お前自身の努力の結果だ』
クロの声は淡々としていたが、どこか誇らしげにも聞こえた。
『だが、慢心はするな。雷魔法は扱いを誤れば自分の身体を壊す。特にエンチャントは、長時間使えば神経に負担がかかる』
「了解。使いどころは考えるよ」
ソラは鞄を背負い直し、ダンジョンの入口から離れていく。
夕暮れの光が、地面をオレンジ色に染めていた。
胸の奥には、確かな手応えと、抑えきれない高揚が同時にある。
だがそれ以上に、ソラの心を満たしていたのは――
(もっと先に行ける)
という、静かな確信だった。
「……終わりだな」
鉄剣を下ろすと、剣身にまとっていた淡い雷光がぱちりと弾けて消える。
胸の奥に残る魔力の流れはまだ整っていて、息切れもほとんどない。
ダンジョンを出ると、外の空気がひんやりと肌を撫でた。
以前ここで魔石を集めた時は、たった数体倒しただけで脚が重くなり、腕も震えていたはずだ。なのに今は、確かな疲労はあるものの、まだ動ける余裕がある。
「……本当に、全然違うな」
自分でも驚くほどだった。
訓練場での魔力操作、筋力トレーニング、走り込み。地味で派手さのない積み重ねが、確実に自分の身体を変えている。
だが――
ソラの口元は、自然と緩んでいた。
「それより……」
ソラは手のひらを見つめる。
先ほどまで鉄剣に纏わせていた雷の感覚を思い出す。魔力を流し、形を与え、武器と一体化させる感触。意識すれば、今でも指先に微かな痺れが蘇る。
『……浮かれているな』
肩掛け鞄の中から、クロの声が聞こえた。
「わかってる。でもさ……」
ソラは苦笑しながら答える。
「雷を“纏う”って、正直めちゃくちゃかっこよくないか?」
『そこか』
クロは呆れたように息をつく。
『だが、浮かれるだけの理由はある。雷魔法レベル2は、単なる威力の上昇じゃない。応用が一気に広がる段階だ』
「エンチャントとスタンピート、か」
『そうだ。特にスタンピートは出が早く、当てれば相手の動きを一瞬止められる。致命打を作るための魔法だ』
ソラは頷く。
実際、吸血コウモリを相手にしてその強さをはっきり実感した。スタンピートを当て、動きが止まった瞬間に踏み込み、確実に仕留める。以前なら無駄な動きが多く消耗も激しかったはずだ。
「……ちゃんと、強くなってるんだな」
『ああ。お前自身の努力の結果だ』
クロの声は淡々としていたが、どこか誇らしげにも聞こえた。
『だが、慢心はするな。雷魔法は扱いを誤れば自分の身体を壊す。特にエンチャントは、長時間使えば神経に負担がかかる』
「了解。使いどころは考えるよ」
ソラは鞄を背負い直し、ダンジョンの入口から離れていく。
夕暮れの光が、地面をオレンジ色に染めていた。
胸の奥には、確かな手応えと、抑えきれない高揚が同時にある。
だがそれ以上に、ソラの心を満たしていたのは――
(もっと先に行ける)
という、静かな確信だった。
10
あなたにおすすめの小説
異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!
枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕
タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】
3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!
最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様
コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」
ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。
幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。
早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると――
「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」
やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。
一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、
「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」
悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。
なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?
でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。
というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!
現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜
涼月 風
ファンタジー
御門賢一郎は過去にトラウマを抱える高校一年生。
ゴールデンウィークにソロキャンプに行き、そこで綺麗な石を拾った。
しかし、その直後雷に打たれて意識を失う。
奇跡的に助かった彼は以前の彼とは違っていた。
そんな彼が成長する為に異世界に行ったり又、現代で錬金術をしながら生活する物語。
レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない
あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。
スキル『レベル1固定』は最強チートだけど、俺はステータスウィンドウで無双する
うーぱー
ファンタジー
アーサーはハズレスキル『レベル1固定』を授かったため、家を追放されてしまう。
そして、ショック死してしまう。
その体に転成した主人公は、とりあえず、目の前にいた弟を腹パンざまぁ。
屋敷を逃げ出すのであった――。
ハズレスキル扱いされるが『レベル1固定』は他人のレベルを1に落とせるから、ツヨツヨだった。
スキルを活かしてアーサーは大活躍する……はず。
~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる
僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。
スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。
だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。
それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。
色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。
しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。
ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。
一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。
土曜日以外は毎日投稿してます。
異世界帰還者の気苦労無双録~チートスキルまで手に入れたのに幼馴染のお世話でダンジョン攻略が捗らない~
虎柄トラ
ファンタジー
下校帰りに不慮の事故に遭い命を落とした桜川凪は、女神から開口一番に異世界転生しないかと勧誘を受ける。
意味が分からず凪が聞き返すと、女神は涙ながらに異世界の現状について語り出す。
女神が管理する世界ではいま魔族と人類とで戦争をしているが、このままだと人類が負けて世界は滅亡してしまう。
敗色濃厚なその理由は、魔族側には魔王がいるのに対して、人類側には勇者がいないからだという。
剣と魔法が存在するファンタジー世界は大好物だが、そんな物騒な世界で勇者になんてなりたくない凪は断るが、女神は聞き入れようとしない。
一歩も引かない女神に対して凪は、「魔王を倒せたら、俺を元の身体で元いた世界に帰還転生させろ」と交換条件を提示する。
快諾した女神と契約を交わし転生した凪は、見事に魔王を打ち倒して元の世界に帰還するが――。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる