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二章 黒曜麒麟
九十九話
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動かないボッケとセレンを前に、
黒曜麒麟は迷わなかった。
今なら、確実に仕留められる。
自身な脚で人間の体を踏み抜けば、
命など容易く潰える――
そう本能が告げていた。
黒曜麒麟は向きを変え、
二人へと歩み寄ろうとする。
「させ……ない……!」
ユナが叫ぶ。
喉が裂けそうなほど、
魂を絞り出すような声。
黒曜麒麟に向かって両手を前に出し魔法を発動させようとする。
《ビッグ・アイスランス・シェル》
巨大な氷の槍が顕現する。
その瞬間――
ユナは無意識のうちに、
“回転”を加えていた。
ギュルギュルと高速回転する氷槍。
それは、これまでユナが放ってきた
どの《ビッグ・アイスランス・シェル》よりも
明らかに異質だった。
「いけぇぇぇぇっ!!」
叫びと共に、射出される。
空気を切り裂く異音を立てながら、
大質量の氷が黒曜麒麟へと迫る。
黒曜麒麟もそれに気づき、踏みつけを中断し
迎撃の体勢を取る。
そして――
回転する氷槍は、
一直線に黒曜麒麟の角へと突き刺さった。
ギュルギュルギュルッ――!!
まるで金属が擦れ合うような、火花を散らす音。
回転する氷と、黒曜の角が激しくぶつかり合う。
黒曜麒麟の角のひび割れは、
一気に広がった。
蜘蛛の巣のように、
黒曜麒麟の角全体へ。
遠目からでも、
誰の目にも分かるほどに。
――折れる。
誰もがそう思える瞬間にそれは起きた。
パキリ。と
乾いた音が響いた瞬間、砕け散ったのは
――氷の槍の方だった。
粉々に砕けた氷が、宙に散る。
角は
――折れていない。
だが、“あと少し”のところまで来ていた。
それこそあと一撃加えれば良いところまで。
ユナの顔が、絶望に染まる。
「……あと……少しだったのに……」
震える声。
涙が、堰を切ったように溢れ出す。
「もっと……もっと私が強ければ……」
ボッケも、セレンも、ハーデンも。
誰も、こんな危険な目に遭わせずに済んだのに。
悔しさと無力感が、胸を締めつける。
涙が止まらない。
洪水のように、頬を伝い落ちる。
現実は、非情だった。
既に、あまりにも多くの氷魔法を使った。
ユナの体の奥で、魔力が枯れかけているのが分かる。
これ以上、氷を生み出すことはできない。
――次は、ない。
ユナは、それを痛いほど理解していた。
ユナの心が、深い闇へと沈みかけた
――その瞬間だった。
ユナの視界の端に、影が映る。
――上?
反射的に顔を上げた瞬間、
空から“何か”が落ちてきていた。
それは、
隕石のように一直線に黒曜麒麟に向かっていく。
ただの落下ではない。
意志と力を持った、何か。
ユナは、呆然とその光景を見つめながら、
胸の奥でほんのわずかな熱を感じていた。
――まだ、終わっていない。
黒曜麒麟は迷わなかった。
今なら、確実に仕留められる。
自身な脚で人間の体を踏み抜けば、
命など容易く潰える――
そう本能が告げていた。
黒曜麒麟は向きを変え、
二人へと歩み寄ろうとする。
「させ……ない……!」
ユナが叫ぶ。
喉が裂けそうなほど、
魂を絞り出すような声。
黒曜麒麟に向かって両手を前に出し魔法を発動させようとする。
《ビッグ・アイスランス・シェル》
巨大な氷の槍が顕現する。
その瞬間――
ユナは無意識のうちに、
“回転”を加えていた。
ギュルギュルと高速回転する氷槍。
それは、これまでユナが放ってきた
どの《ビッグ・アイスランス・シェル》よりも
明らかに異質だった。
「いけぇぇぇぇっ!!」
叫びと共に、射出される。
空気を切り裂く異音を立てながら、
大質量の氷が黒曜麒麟へと迫る。
黒曜麒麟もそれに気づき、踏みつけを中断し
迎撃の体勢を取る。
そして――
回転する氷槍は、
一直線に黒曜麒麟の角へと突き刺さった。
ギュルギュルギュルッ――!!
まるで金属が擦れ合うような、火花を散らす音。
回転する氷と、黒曜の角が激しくぶつかり合う。
黒曜麒麟の角のひび割れは、
一気に広がった。
蜘蛛の巣のように、
黒曜麒麟の角全体へ。
遠目からでも、
誰の目にも分かるほどに。
――折れる。
誰もがそう思える瞬間にそれは起きた。
パキリ。と
乾いた音が響いた瞬間、砕け散ったのは
――氷の槍の方だった。
粉々に砕けた氷が、宙に散る。
角は
――折れていない。
だが、“あと少し”のところまで来ていた。
それこそあと一撃加えれば良いところまで。
ユナの顔が、絶望に染まる。
「……あと……少しだったのに……」
震える声。
涙が、堰を切ったように溢れ出す。
「もっと……もっと私が強ければ……」
ボッケも、セレンも、ハーデンも。
誰も、こんな危険な目に遭わせずに済んだのに。
悔しさと無力感が、胸を締めつける。
涙が止まらない。
洪水のように、頬を伝い落ちる。
現実は、非情だった。
既に、あまりにも多くの氷魔法を使った。
ユナの体の奥で、魔力が枯れかけているのが分かる。
これ以上、氷を生み出すことはできない。
――次は、ない。
ユナは、それを痛いほど理解していた。
ユナの心が、深い闇へと沈みかけた
――その瞬間だった。
ユナの視界の端に、影が映る。
――上?
反射的に顔を上げた瞬間、
空から“何か”が落ちてきていた。
それは、
隕石のように一直線に黒曜麒麟に向かっていく。
ただの落下ではない。
意志と力を持った、何か。
ユナは、呆然とその光景を見つめながら、
胸の奥でほんのわずかな熱を感じていた。
――まだ、終わっていない。
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