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二章 黒曜麒麟
111話
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去っていくショーイチローの背中を見届けた
後に、ソラはその場にペタリと座り込んだ。
もう、足が限界だった。
立っているだけで震えるほど、力が抜けている。
ユナがそっとソラの近くまで歩み寄り話しかける。
「……大丈夫?」
心配そうに覗き込むユナに、
ソラは汗だくのまま、力なく笑った。
「うん、大丈夫。
ただ……さすがに疲れすぎた。今すぐ動けって言われたら、勘弁してほしいかな」
言葉通り、汗は絶え間なく滝のように流れ落ちている。
夜風が吹き、ふたりの間に短い沈黙が落ちた。
やがて、ユナが少しだけ躊躇うように口を開く。
「ねぇ……ソラ君。
さっきのって……雷魔法、だよね?」
ソラはユナの質問に返す言葉を探す。
正直に話すべきか
誤魔化すべきか
それとも、嘘をつくか
どうするかと少し考えてから、ソラは静かに答えた。
「……うん。
つい昨日、使えるようになったんだ」
一呼吸置いてから続ける。
「黒曜麒麟の時、手を抜いたわけじゃないんだ。
ただ、……ごめん、言い訳みたいになるけど」
視線を落としながら、今の自分の正直な気持ちを吐き出す。
「誰にも明かせない秘密があるんだ」
軽蔑されるかもしれない
距離を置かれるかもしれない
それでも――
目の前の少女に、嘘をつくことだけはしたくなかった。だからこそ、
“言わない”
という選択を、正直に伝えた。
再び静かな沈黙が流れ、1分ほどの静寂が訪れる。
その沈黙を破ったのは、ユナだった。
「……人に言えないことは、私にもあります」
そう言って、少し柔らかく微笑む。
「だからね。
いつかソラ君が、
その秘密を話せる時が来たら
――その時に、秘密を教えてください」
そして、少し照れてから言葉を付け足す。
「約束、ですよ?」
そう言い終えると、
ユナはウインクをして、小指をソラの前に差し出した。
ソラは一瞬、呆気に取られる。
嫌われたと思っていた
拒絶されると、覚悟していた
だからこそ、ユナのその気遣いが胸に染みた。
ソラも、ゆっくりと小指を差し出す。
「……ああ。
いつか、誰よりも強くなるから」
指を絡めながら、静かに言う。
「その時は、ちゃんと秘密を打ち明けるよ。
約束する」
ふたりは顔を見合わせ、笑った。
「「ゆびきりげんまん
嘘ついたら針千本のーます」」
声を揃え、指を離す。
ソラはゆっくりと立ち上がり、
ユナもそれに並ぶ。
ふたり並んで、屋敷へと帰る道を歩き出した。
見上げた夜空には、
まるでふたりを行く末を祝福するかのように、
無数の星が静かに、そして美しく輝いていた。
一方その頃――
ソラたちが滞在している街では、誰にも知られることのない静かな激闘が繰り広げられていた。
街外れのゴーマンとソラが戦った教会の近くで
カキン、カキン
と夜気を切り裂くように、金属同士がぶつかる乾いた音が響く。
誰かと、誰かが戦っている。
一人は影を纏った存在。
その輪郭は闇に溶け込み、はっきりとした姿は見えない。
もう一人は、スーツ姿の男。
少し腹が出た体型で、とても戦闘に向いているようには見えない。
だが、その剣の扱いや足運びに一切の無駄がなかった。
影の男の鋭い攻撃を、最小限の動きで捌き、
決して致命的な隙を見せない。
スーツの男が、奇妙な笑い声を漏らす。
「きしし……しつこいですねぇ。
そろそろ退散したいところなんですがねぇ……
きしし!」
人を食ったような喋り方。
挑発とも取れるその言葉に、影の男は動じずに
短く、冷たい声で返す。
『……お前が死ねば、終わりにしてやる』
それだけだった。
スーツの男は、その言葉にほんの一瞬だけ舌打ちをする。
だが、ここに影の男を誘い出せた時点で、
スーツの男の思惑通りでもあったので
問題ないとすぐに表情を緩める。
「きしし……
生憎、私もまだ死にたくはないもので。
――ここでお別れです!」
そう言い放った瞬間、
スーツの男は手にしていた剣を、教会へと投げつけた。
剣が壁に突き刺さった、次の瞬間
――ドゴォンッ!!
教会は凄まじい音と共に崩れ落ちた。
砂埃が夜空へと舞い上がり、視界を完全に覆い尽くす。
影の男は思わず舌打ちする。
『……くっ、しまった!』
視界が遮られ、
砂埃が収まる頃にはスーツの男の気配は、すでに消えていた。
影の男は倒壊した教会の瓦礫の中から、
投げ捨てられた剣を慎重に拾い上げる。
そして、低く呟いた。
『次こそは必ず……奴を、殺す』
その言葉を残すと、
影の男の身体はゆっくりと、自身の影の中へと沈み込んでいく。
ズズッ――と音を立て、影の男は完全に姿を消した。
その場に残ったのは、
夜の闇に沈む、完全に倒壊した教会だけだった。
後に、ソラはその場にペタリと座り込んだ。
もう、足が限界だった。
立っているだけで震えるほど、力が抜けている。
ユナがそっとソラの近くまで歩み寄り話しかける。
「……大丈夫?」
心配そうに覗き込むユナに、
ソラは汗だくのまま、力なく笑った。
「うん、大丈夫。
ただ……さすがに疲れすぎた。今すぐ動けって言われたら、勘弁してほしいかな」
言葉通り、汗は絶え間なく滝のように流れ落ちている。
夜風が吹き、ふたりの間に短い沈黙が落ちた。
やがて、ユナが少しだけ躊躇うように口を開く。
「ねぇ……ソラ君。
さっきのって……雷魔法、だよね?」
ソラはユナの質問に返す言葉を探す。
正直に話すべきか
誤魔化すべきか
それとも、嘘をつくか
どうするかと少し考えてから、ソラは静かに答えた。
「……うん。
つい昨日、使えるようになったんだ」
一呼吸置いてから続ける。
「黒曜麒麟の時、手を抜いたわけじゃないんだ。
ただ、……ごめん、言い訳みたいになるけど」
視線を落としながら、今の自分の正直な気持ちを吐き出す。
「誰にも明かせない秘密があるんだ」
軽蔑されるかもしれない
距離を置かれるかもしれない
それでも――
目の前の少女に、嘘をつくことだけはしたくなかった。だからこそ、
“言わない”
という選択を、正直に伝えた。
再び静かな沈黙が流れ、1分ほどの静寂が訪れる。
その沈黙を破ったのは、ユナだった。
「……人に言えないことは、私にもあります」
そう言って、少し柔らかく微笑む。
「だからね。
いつかソラ君が、
その秘密を話せる時が来たら
――その時に、秘密を教えてください」
そして、少し照れてから言葉を付け足す。
「約束、ですよ?」
そう言い終えると、
ユナはウインクをして、小指をソラの前に差し出した。
ソラは一瞬、呆気に取られる。
嫌われたと思っていた
拒絶されると、覚悟していた
だからこそ、ユナのその気遣いが胸に染みた。
ソラも、ゆっくりと小指を差し出す。
「……ああ。
いつか、誰よりも強くなるから」
指を絡めながら、静かに言う。
「その時は、ちゃんと秘密を打ち明けるよ。
約束する」
ふたりは顔を見合わせ、笑った。
「「ゆびきりげんまん
嘘ついたら針千本のーます」」
声を揃え、指を離す。
ソラはゆっくりと立ち上がり、
ユナもそれに並ぶ。
ふたり並んで、屋敷へと帰る道を歩き出した。
見上げた夜空には、
まるでふたりを行く末を祝福するかのように、
無数の星が静かに、そして美しく輝いていた。
一方その頃――
ソラたちが滞在している街では、誰にも知られることのない静かな激闘が繰り広げられていた。
街外れのゴーマンとソラが戦った教会の近くで
カキン、カキン
と夜気を切り裂くように、金属同士がぶつかる乾いた音が響く。
誰かと、誰かが戦っている。
一人は影を纏った存在。
その輪郭は闇に溶け込み、はっきりとした姿は見えない。
もう一人は、スーツ姿の男。
少し腹が出た体型で、とても戦闘に向いているようには見えない。
だが、その剣の扱いや足運びに一切の無駄がなかった。
影の男の鋭い攻撃を、最小限の動きで捌き、
決して致命的な隙を見せない。
スーツの男が、奇妙な笑い声を漏らす。
「きしし……しつこいですねぇ。
そろそろ退散したいところなんですがねぇ……
きしし!」
人を食ったような喋り方。
挑発とも取れるその言葉に、影の男は動じずに
短く、冷たい声で返す。
『……お前が死ねば、終わりにしてやる』
それだけだった。
スーツの男は、その言葉にほんの一瞬だけ舌打ちをする。
だが、ここに影の男を誘い出せた時点で、
スーツの男の思惑通りでもあったので
問題ないとすぐに表情を緩める。
「きしし……
生憎、私もまだ死にたくはないもので。
――ここでお別れです!」
そう言い放った瞬間、
スーツの男は手にしていた剣を、教会へと投げつけた。
剣が壁に突き刺さった、次の瞬間
――ドゴォンッ!!
教会は凄まじい音と共に崩れ落ちた。
砂埃が夜空へと舞い上がり、視界を完全に覆い尽くす。
影の男は思わず舌打ちする。
『……くっ、しまった!』
視界が遮られ、
砂埃が収まる頃にはスーツの男の気配は、すでに消えていた。
影の男は倒壊した教会の瓦礫の中から、
投げ捨てられた剣を慎重に拾い上げる。
そして、低く呟いた。
『次こそは必ず……奴を、殺す』
その言葉を残すと、
影の男の身体はゆっくりと、自身の影の中へと沈み込んでいく。
ズズッ――と音を立て、影の男は完全に姿を消した。
その場に残ったのは、
夜の闇に沈む、完全に倒壊した教会だけだった。
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