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二章 黒曜麒麟
110話
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ソラが駆け抜けた速度は、この日で最速だった。
遠目から見ても、
もはや“走った”という認識すら追いつかない。
視界に残るのは、雷光の残滓だけ。
次の瞬間には、ソラのイメージ通りにショーイチローの眼前で止まっていた。
間髪入れず、攻撃。
両腕を振るい、サンドバッグを殴るかのような連打連打連打……
右、左、右、左――と殴り続ける。
殴り続ける速度が徐々に速くなる。だが――
ショーイチローは、それを受け切っていた。
片腕という明確な不利を抱えながらも、
ソラの拳を――
受け止め
弾き
透かし
逸らす
紙一重で攻撃を受け流しているが、
決して余裕があるわけではない。
ソラもショーイチローも互いに、
ほんの一瞬でも気を抜けば、
攻撃を受けるか、致命的な反撃を喰らう。
何十、何百という応酬が、積み重なっていく。
少し離れた場所で見守るユナの視界では、
もはや二人の手は消えているようにしか見えなかった。
そして決着の時は、唐突に訪れた。
ソラの絶え間ない攻撃を、
ショーイチローが滑るようにいなす。
ソラの体勢が、ほんのわずかに崩れる。
常人から見れば崩れたとすら言えない、
達人にしか見ることができない
髪の毛一本分のほつれ。
そのほつれをショーイチローは見逃さなかった。
滑らせたままにソラへ拳が、放たれる。
狙う先はソラの顔。
(――避けられない)
そう瞬時に悟ったソラは、ならばと判断を切り替える。
さらに踏み込んで、ショーイチローの体へ蹴りを放とうとする。
だがショーイチローの拳は、
ソラの身体に触れる直前で、止まった。
同時に、
ソラの蹴りもまた、
ショーイチローの腹に届く寸前で静止している。
張り詰めた空気の中、
ショーイチローが、ふっと笑った。
「……引き分けだな」
その一言で、全てが終わる。
ショーイチローが一歩下がり、体勢を整える。
ソラもまた雷神化《ライジング》が解け、
振り上げていた足を地面につけた。
その瞬間、全身に一気に疲労が押し寄せた。
肺が悲鳴を上げ、思わず肩で息をする。
そんなソラを見てショーイチローは見守るような、
温かい笑みを浮かべていた。
しばらくしてから、
ソラの呼吸が落ち着いたのを確認して
ショーイチローは口を開く。
「有意義な時間を過ごさせてもらった。
ソラ君。次は、最初から全力でやり合おう。
その日のために私も精進しよう」
そう言ってから、ふと夜空を見上げる。
「夜も遅い。気をつけて帰りなさい」
そして、背を向け――
「では、若人たちよ。次は学校で会おう」
その言葉を残し、
ショーイチローは静かにその場を去っていった。
遠目から見ても、
もはや“走った”という認識すら追いつかない。
視界に残るのは、雷光の残滓だけ。
次の瞬間には、ソラのイメージ通りにショーイチローの眼前で止まっていた。
間髪入れず、攻撃。
両腕を振るい、サンドバッグを殴るかのような連打連打連打……
右、左、右、左――と殴り続ける。
殴り続ける速度が徐々に速くなる。だが――
ショーイチローは、それを受け切っていた。
片腕という明確な不利を抱えながらも、
ソラの拳を――
受け止め
弾き
透かし
逸らす
紙一重で攻撃を受け流しているが、
決して余裕があるわけではない。
ソラもショーイチローも互いに、
ほんの一瞬でも気を抜けば、
攻撃を受けるか、致命的な反撃を喰らう。
何十、何百という応酬が、積み重なっていく。
少し離れた場所で見守るユナの視界では、
もはや二人の手は消えているようにしか見えなかった。
そして決着の時は、唐突に訪れた。
ソラの絶え間ない攻撃を、
ショーイチローが滑るようにいなす。
ソラの体勢が、ほんのわずかに崩れる。
常人から見れば崩れたとすら言えない、
達人にしか見ることができない
髪の毛一本分のほつれ。
そのほつれをショーイチローは見逃さなかった。
滑らせたままにソラへ拳が、放たれる。
狙う先はソラの顔。
(――避けられない)
そう瞬時に悟ったソラは、ならばと判断を切り替える。
さらに踏み込んで、ショーイチローの体へ蹴りを放とうとする。
だがショーイチローの拳は、
ソラの身体に触れる直前で、止まった。
同時に、
ソラの蹴りもまた、
ショーイチローの腹に届く寸前で静止している。
張り詰めた空気の中、
ショーイチローが、ふっと笑った。
「……引き分けだな」
その一言で、全てが終わる。
ショーイチローが一歩下がり、体勢を整える。
ソラもまた雷神化《ライジング》が解け、
振り上げていた足を地面につけた。
その瞬間、全身に一気に疲労が押し寄せた。
肺が悲鳴を上げ、思わず肩で息をする。
そんなソラを見てショーイチローは見守るような、
温かい笑みを浮かべていた。
しばらくしてから、
ソラの呼吸が落ち着いたのを確認して
ショーイチローは口を開く。
「有意義な時間を過ごさせてもらった。
ソラ君。次は、最初から全力でやり合おう。
その日のために私も精進しよう」
そう言ってから、ふと夜空を見上げる。
「夜も遅い。気をつけて帰りなさい」
そして、背を向け――
「では、若人たちよ。次は学校で会おう」
その言葉を残し、
ショーイチローは静かにその場を去っていった。
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