普通の勇者とハーレム勇者

リョウタ

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1章 五人の勇者

変わり者

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橘達は過ぎ去り穂花ちゃんと残念な別れ方をした俺はユリウスさんと、そして何故かマリア王女も一緒に広い室内訓練所を東側へと向かい歩いている。
マリア王女には是非お兄様の所にでも行って欲しいが……なに?俺に構って欲しいの?

そしてこの室内訓練所はかなりの広さで、西側へと向かっている穂花ちゃん達が小さく見えるくらいだ。
ぶっちゃけ何をしているのか解らないレベルで小さく見えてる。

距離がそれ程に離れた所でユリウスさんがこちらを向き話を始めた。


「いや~さっきは済まなかったね。我慢できずに吹き出してしまったんだよな、ハハッ」

いやもう忘れろや……っ!


「気にしてないですよ。なんかあっちの世界の漫画でそう言うとステータスが表示されるのを見たんで、ついそう言ってしまっただけですんで」

「そうか!気にして無いか!孝志君はさっぱりした良い性格だな」

ユリウスは感心した様に頷きながら孝志にそう言った。


「はい。なので自分が居た世界にある漫画を知らないユリウスさんから僕を見たら、さぞ滑稽だったでしょうね!ハハッ!」

「お?」

「ですので先程の事は、全然、全く、これっぽっちも、気にしてないっすよ!ワハハ」

「いや絶対気にしてるじゃないか!みみっちいなおい!笑」

ユリウスは予想外の孝志の返答に驚き声を上げるが、孝志の表情などを見て笑いながら返した。
言ってる事とは裏腹にまったく気にした様子では無かったからだ。




♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎


      ~ユリウス視点~

さっき笑ってしまったあの時の発言や、今の返答なんかを見てユリウスは大まかにだが孝志の性格を掴んだ。
言動は兎も角、自分が思った通りさっぱりした性格の様だ。

そして、はっきり言うとその性格は自分としてはかなり相性が良い。
なんせ自分はアットホームな師弟関係を築きたいと思っているからだ。

正直、今まで訓練をつけてきた者たちは皆かなりの堅物揃いだった。
それは騎士としての教育を受けてきた彼らにしては当然だろう。加えて自分は王国最強騎士で【剣帝】と称されるユリウス・ギアートなのだ、堅物にもなるだろうな。
むしろ孝志のように来る方がどうかしている。

だからこそ、今までの教え子達は強い尊敬の念を抱き萎縮し心を開いてくれなかった。
……アリアンはいろんな意味で例外だが。


昨日はせっかくアリアンに勇者教育を丸投げできたのに、孝志が自分を指名した時には面倒だと思った。
しかし普通の人間の神経があるなら、あの時のアリアンを見て彼女に指導して欲しいとは絶対に思わない筈だ。
なので面倒だと思いはしたが『そうだよな』という気持ちの方が大きかったりもした。

あと橘雄星の妹の橘穂花もアリアンを見て凄い怯えてたな……ほんとは嫌なのだろうが、まぁ、どんまいだな!
中岸由梨と奥本美咲は雄星しか見ていないみたいだったが・・今回の勇者達は大丈夫か?

自分も彼らが呼び出されるまで他の勇者は年老いてからの前勇者しか知らず、なので彼の若い時も知らないが、流石にこんな感じにはならなかったろう。
なんか男友達と3人で来たと言ってたし(超健全)


ただ、実力はまだ解らず細かく彼を知っている訳では無いが、孝志となら上手くやっていけそうに思える。

何故なら彼からは惹きつけられる何かを感じた。
それは英雄としてのカリスマとか戦士としての勇猛さではないが、人として信頼出来そうな、話しかけ易かったり、何故かそういった魅力がある。
出会って間もないのにそう感じたのだからこの人当たりの良さも彼の才能と充分言えるだろう。



「それじゃ最初にステータスカードを見せて貰えるか?」

みみっちいと言った事を根に持ってそうな顔だが、大人しくカードを差し出してくれた。

するとさっきまで黙ってついて来ているだけだった第二王女がしれっと近付いて来る。
さっきから第二王女の様子を伺っていたが、橘穂花と彼が話してる最中に何度かこっそり覗こうとしていた。
その度に孝志が見えない様にブロックしていたんだけど。

今度は正々堂々と見る様だ。
普通に声を掛けて見せて貰えば良かったと思うが……今は普通に見ようとしている第二王女を見て、孝志は嫌そうにしている……あんたら仲悪いのか?

孝志には悪いが立場上、無下には出来ないので第二王女にも見やすい位置でステータスカードを確認する事にした。


「うぉっ、腕力と速度がFか……魔力も低いから魔術師って感じでも無いし……おっ、知力がスゲェ高いな」

孝志は小声だったので上手く聞き取れなかった様子だが、腕力と速度がFと言っている所はしっかりと聴こえていたらしくピクッと反応した……いや~分かり易くて面白いな彼。

そしてユリウスはそのままの流れで能力値の最後の項目に目を移した。


「せ、精神がSランク?!ま、まじかよっ……」

流石の自分もこれには驚愕し、一緒に見ていた第二王女も目を丸くしていた。


因みに、孝志は精神がSランクである事を『所詮は精神力』だからと軽く考えていた。

確かに、精神はステータスの中では一番評価し難い項目である事は間違いない、だが最初からランクがSとなれば話は全く別である。
加えて精神と抵抗は他の能力に比べて修練方法が限られており、上昇し難い能力だ。
他の能力値なら自分でもSランクに到達している能力はあるし、アリアンにもある。
だが精神がSというのは自分だけではなく、そもそも精神がSランクなんて聞いた事がない。
しかも一切の鍛錬なしでこれなのだ。

もしかしたらあちらの世界で彼は過酷な環境に居たのかもしれない。
とてもそうは見えないが気になったので聞いてみる事にした。


「孝志くんはあちらの世界で特殊な環境だったりしたか?」

「いえ、普通の男子高校生でしたよ。あっ、でも飲食店で接客のアルバイトをしていました。ヤバい常連客がいたりして大変だったので冷静に考えたら精神がSになってもおかしくないと思います。週5でしたし」

「特に何にも無さそうだな。そうなると君の精神が異様に高いのはこの《???》のスキル項目が原因だろうな」

俺は精神のランクを見た直後に目に付いた孝志のスキルについて語る。
恐らくはこれが精神をSランクにしている要因の一つなんだろう。


「いえ、ですからバイト……」

「…真面目に話そうか?」

「はい」

素直かよ…だったら最初から真面目に聞いて欲しいだけど…
一応、彼に聞く姿勢ができたようなので詳しく説明をする。


「スキルと能力値は比例するんだよ。狩人や槍術を得意とするスキルを所持している者は速度の能力値が高かったり、戦士や格闘家系統のスキル保持者だと腕力が元々高かったり、上がりやすかったりな」

彼も真剣に話を聞き入ってる様なので話を続ける。


「そして精神が高いと優秀な精神干渉系のスキルを覚えるからな」

「おお!マジですか!」

最後まで聴き終えると孝志は嬉しそうに言った。
《???》という表記であるという事は、初めて発現したスキルという事だ。

俺自身もどういったスキルか楽しみにしている。


──────────


「それでは修練を始めようか」

「はい…よろしくお願いします」

凄く嫌そうな顔で彼は返事をした。
全然乗り気じゃないね、はは。


「どんな武器を覚えたい?」

「う~ん、やっぱり剣ですね」

「普通だね~」

「いや、そこはいいでしょ別に」

そして武器を決めた後、ユリウスは孝志と向き合い修行を開始した。


なんか遠くから橘雄星らしき人物の叫び声が引っ切り無しに聞こえて来るんだけど……気のせいって事にしておこう!うん!


俺が孝志に基礎を教えつつ、彼の剣筋を見ながら十数回ほど剣を合わせたそんな時だった。

一人の男性が第二王女の前まで慌てた様に駆け寄ってきた。
彼の事は良く知っている……王族に仕える専属の執事だ。

彼は俺や孝志に一礼すると、第二王女になにやら耳打ちを始めた。
恐らくこちらに聞こえない様に耳打ちで話しているのは、俺に聞かれたらマズイ内容ではなく孝志に聴かれるとマズイ話だからだろう。
内容を聞いた第二王女は驚いた表情を見せた。


「!クロードが?!……わかりました、直ぐに私も向かいます」

「お願いします、既に王子殿下が軽傷のエディ様に詳しい話を伺っておりますので」

「いま伺ってるという事は、詳しい状況はまだ解ってないという訳ね」

「はい。恐縮ながら私もこうして直ぐにマリア王女の元へ駆けつけてきたもので……」

「そう……急ぎの通達ご苦労だったわ。途中からでもかまわない、私も兄様と一緒にエディの話を伺いましょう。今すぐに向かうわ」

「はっ!かしこまりました!では直ぐにご案内致します、こちらへ」

執事の男性が案内を開始したところでマリアは思い出した様にこちらに…というより孝志の元へ近づいて行った。


「孝志様、先程の約束は別の日になってしまいました。お許し願います。ユリウスも失礼しますね」

そういうとマリア王女は長いスカートをつまみ、俺と孝志に会釈をした。


「はい。ではお気をつけて」

俺は余計な詮索などせずに第二王女に礼を取った。

そして孝志は深々と頭を下げる事でそれに応えた。
なんか孝志は凄く嬉しそうな表情になったが、なんでだろう?


しかし珍しいな……第二王女が出会って間もない、しかも男性と個人的な約束を交わしていたなんて。
さっきから孝志にまとわりついて居たのはそういう事もあったのかと俺は納得した。
やはり孝志は他者を惹き付ける何かがあるな。


第二王女は孝志の嬉しそうな表情を見て、何か言いたそうだったが特に何も言わずに執事の後を付いていった。

何があったかはわからないが、恐らく余裕が無くなる何かがあったんだろう。
去り際に執事の男性も孝志に会釈し、孝志がそれに返すと二人はこの場を離れて行ったのだった。



その後は予定時刻まで孝志と訓練をし、その日の仕事は終了である。


雄星らしき人物の悲鳴が聴こえていた場所からは既に雄星の悲鳴は聴こえて来なくなっており、いつのまにかアリアンと橘穂花の二人だけが修練に励んでいた。

遠目だがアリアンも橘穂花も凄い笑顔に見えるんだが……ま、いっか。

とりあえず俺は適当に友人等と時間を潰し、充分遅い時間になってから床に就いた。
これで明日も爽やかな朝を迎えられるだろう。


────────

・・・そして次の日の朝



目が覚めた俺の耳に橘雄星がアリアンに半殺しにされたというニュースが飛び込んで来た。




マジでなにやってんの?




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