普通の勇者とハーレム勇者

リョウタ

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3章 フェイトエピソード

女神の根回し

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「貴女に用は無いわよ、引っ込んでなさい」

「そういう訳にはいきません…何やらお姉様が此処にいる勇者様を侮辱しているみたいですし?」

「別に侮辱した訳ではないわ…本当の事を言っただけよ」

「そうかしら?わたしには全て狂言にしか聞こえなかったのですが?」

言われた第一王女のこめかみに青筋が立った様に見える……止めろよこの姉妹……両方煽りのプロなんだから……てかせっかく大人しくしてたのに何で出て来るの?
……まぁちょっと嬉しいけど。


「もしかして、その勇者に肩入れでもしているのかしら?良い趣味ねマリア」

「あら?品の無い詮索ですわお姉様」

「品が無いですって?!」

第一王女の顔は真っ赤に染まっていく。
煽り上手でも、耐性の方はまったくない様だ。
それにして姉妹の仲悪過ぎないか?微笑ましい姉妹喧嘩とは程遠い、険悪な感じしか伝わって来ないんだけど。

周りのメイドさん達は王族同士の口げんかに震えており、騎士達もたじろいでる。
ユリウスさんに至っても、ポカーンとした顔で二人のやり取りを観てる様だ。


「はい…それに、橘雄星に会うなんて理由で大事な会議にも出席しない様なお姉様が良く人の事言えますわね?」

「……なんですって?」

「二度も同じ事を言わせないで欲しいですわ……お姉様」

それを聞いた第一王女は、怒りで顔を赤くするどころか真っ青になってしまった。
怒りで真っ青になる人間なんて初めてみたんだけど……大丈夫なの?


「マリア…覚えてなさい…!」

第一王女は捨て台詞を吐くと、そのまま勢いよく扉を開け外へと飛び出して行った。
そして、それに続く様に騎士達も出て行く。
去り際に、隊長と思われるイケメンの騎士が、申し訳無さそうな顔で俺の方を向くと深々と頭を下げる。
この一度のやり取りだけで彼の苦労が伝わって来てしまう…イケメンなのに将来ハゲそうだな……


第一王女と騎士達が去って行くのを確認したマリア王女は深く息を吐くと、気疲れを表現するかの様に腰を折って顔を下げた。


「ふぅ~…疲れたわ~」

「…す、素敵なお姉様をお持ちですね」

「殺すわよ♡」

「うぉ……なんかすいません」

マジもんの殺意を向けて来るの止めてくれませんかね?周りのメイドさん達ビックリしていたぞ?
それより気を付けても結構揉めてしまったな……なんとかさんは間違いなく俺にとってのジョーカーだ。
これから顔を合わせる機会がある時は、天敵を相手にする様な気分で引き締めた方が良いかもな。

結局揉めてしまったが、マリア王女だったら同じ位の権力があるし、ダイアナさんやユリウスさんみたいにマズイ事にはならないから大丈夫だろう。


「…とりあえず、サンキュ」

正直、出てきてくれた時は嬉しかったので礼を言う。
俺が素直に礼を言うと、マリア王女は周りに見えない様に小さく親指を立てる。


俺もマリア王女の親指立てに、小さくピースをして返すのだった。


♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎


「くそっ…!いい気になるんじゃないわよ…見ていなさいマリア……それに松本孝志!」

私は大勢の騎士を引き連れてパーティー会場へと向かっている。
本当は雄星が来ているんじゃないかと様子を観に行っただけなのに、何でこんな屈辱を味わわなければならないのよ…っ!


「これも全て…あの松本孝志とか言う勇者のせいよ…」

そうだ!昨日あの男に会ってからと言うものロクな目に合ってない。
アイツが昨日、あんな生意気を言わなかったら私がこんな屈辱を味わう事も無かったと言うのに…

周りの騎士達にネリーの大きな独り言は聞こえていたが、咎める者は誰も居ない。
そう…みながネリーの性格を重々理解しており、言っても無駄で有ると同時に、意見すればどんな目に合うかも知っているのだ。
騎士達はネリーに眼を付けられた孝志に強く同情していた。


ネリーと騎士達は廊下を歩き続けしばらくすると、反対側から何者かが此方に向かって来るのが見えた。
騎士達は一瞬だけ警戒するものの、その人物が誰なのか判ると直ぐに警戒を解く。
やって来たのは自分達と同じ様にいずれは王族に仕える予定のシーラだ。


「ネリー王女様…こんばんわでございます」

シーラは片膝をついて礼をする。


「……ええ…こんばんわ…」

私も当たり障りない返事で返す。

…私はこの子供が苦手だ。
本来なら、マリアに専属で仕える騎士であるこの子は、直接私の手で迫害すべき相手なのだが……何かわからないがこの子には手を出せないでいる。
……理由は自分でも良く分からない。


「それでは失礼するわ…」

こんな子と話す事は何もないと、私が横を通り過ぎようとした時──一瞬だけシーラと目があった。



「【スピーキン・リバース(言動反転)】……対象者、松本孝志」

「……?」

何か呟いていたみたいだけれど、咎めるのも嫌だわ。
私はそのまま彼女を置いて廊下を進んで行った。


…それよりもあの勇者、パーティーでとんでもない恥をかかせてあげるわ。
会場ではさっきの様には言えないだろうけど、遠回しに大勢の前で貶めてあげるんだから!

私はこれからの事を考えながら、上機嫌に会場へと向かう。




──そんなネリーは、後ろで微笑んでいるシーラになど気付きもしない。




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