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3章 フェイトエピソード
着飾る少女とおかしな男
しおりを挟む第一王女とマリア王女の言い合いが終わった後は静かな時が流れていった。
マリア王女はと言うと、ほんとにただ様子を見に来ただけで軽く雑談してから帰って行った。
いい御身分だな、ほんと。
そしてパーティー開始の10分前に差し掛かり、そろそろ部屋を出ようとした時に、この部屋へ穂花ちゃんが入って来たようだ。
そして穂花ちゃんは辺りをきょろきょろ見回し、俺を見つけると一目散に駆け寄って来る。
──穂花ちゃんはパーティー用に着飾っており、ドレスの色は白色でフリルが付いた可愛らしいもの。
そして普段、穂花ちゃんは髪の毛はストレートにしていて一切装飾をしていないのだが、今日はドレスに合わせてハーフアップにリボンで結んでいる。
はっきり言って見惚れる程の可愛さである。
文句なし100点(10点満点中)
穂花ちゃんは俺の下まで駆け寄ると、その場でクルッと回り全体を見せてくれた。
「どうですか孝志さん……すごく悩んでこの服にしたんですけど……に、似合ってますかね?」
穂花ちゃんは上目遣いで不安そうに聞いてくるのだが、返答なんて決まっている。
「凄い可愛いよ…天使と見違えたよ」
初めて天使と口にしたが、この可愛さは口に出さずにはいられない!
「~~っ!!やった!…神様……ありがとう…」
穂花ちゃんは目を瞑ると噛み締める様に呟いた。
そんなに嬉しいのか……よっぽど気合い入れたんだろうな……
「うむ…確かに可愛らしいな」
今度は一緒に居たユリウスさんが穂花ちゃんに褒めの言葉を掛けた。
「ありがとうございます」
穂花ちゃんはその感想に対してお辞儀をして返す。
それから穂花ちゃんは、俺とユリウスさんを見比べる様に交互に見た後で口を開いた。
「本当に仲が良いんですね…羨ましい…」
とても心外であるが、事情があるのだ……俺が訳を話そうとすると、それよりも早くユリウスさんが理由を話しだした。
「実は孝志のエスコートを俺がする事になったんだよ。だから一緒にここで待機している感じなのさ」
めんど臭い事させられてるぜ、とでも言いたげな表情でそんな事を言うと、穂花ちゃんはユリウスさんに──
「はぁ~~~???男の人がエスコートって何ですか~~??」
──と冷たい視線をぶつけながら返した。
「うおっ!?すげぇ冷たい視線向けんなよ!」
「だってズルイもんっ!ずるい!ユリウスさん職権濫用ですよっ!」
凄い抗議の声がユリウスさんに飛ばされる…ズルいとか言ってるし、異性のエスコートに強い憧れでも抱いているのかな?
──しかし、この時ユリウスは孝志とは違う事を察したらしく『なるほど』と心の中で呟くと、穂花にこんな提案をするのだった。
「橘穂花…それなら俺の代わりに孝志をエスコートしてやってくれないか?」
「ふへっ!!?いいんですか!?」
「ああ、お願い出来るか?」
それを聞いた穂花は冷たい表情から180度変え、尊敬の眼差しを向ける。
「はいっ!お願いされますっ!……見直しましたユリウスさん……いや、ユリウス様!」
俺は何もしてないのに、状況がとても良い方にいつのまにか変化しているみたい。
穂花ちゃんが付き添ってくれる事になったのは、俺としてはかなり嬉しい。
ユリウスさんと穂花ちゃんとでは、エスコートの価値に天と地以上の差がある。
俺も見直したぜユリウスさん……いや、ユリウス様!
でも人に仕事を押し付けただけだろうけどな、実際は……
─────────
穂花ちゃんのエスコートでパーティー会場に到着すると、俺と穂花ちゃんは歓声で迎えられた。
皆が高価そうなドレスや紳士服を着飾っており、金持ちか権力者であるのが一目瞭然だった。
会場はとても広く、中央にはバイキング形式で沢山の料理が並んでる。
料理だけでかなりの空間を占領してもなお、数百人ほど集まってる人達がお互い窮屈になってない。
むしろ、隙間が空いている程で更に何百人入っても余裕だろう。
そして俺達への歓声や拍手が鳴り止んだところで、少し集まった人達を観察してみる事にした。
──人以外にも、獣人が多数居るみたいだ。
獣人でも種類は様々で、犬や猫の獣人も居れば、ウサギの耳を生やした獣人なんかもいる。
ただ、獣人に関しては貴族らしい人物は数人程度で、腰に剣をぶら下げた者が殆どだ。
ようは貴族の護衛で付き添いで来た者だろう…それでも一人残らず高価な衣装を着ている事から、其々かなりの待遇を受けていることが見て解る。
「孝志さん孝志さん!中央にご飯いっぱいありますよ!一緒にとりにいきましょう!」
そしてエスコートしてくれている穂花ちゃんは、それはもうしっかりと俺の腕に自分の腕を絡ませて全く離れようとしない。
それと周囲の目が恥ずかしいのだろう……時折絡めた俺の腕に顔をうずめて小刻みに震えてしまっている。
エスコートがユリウスさんから代わった事は非常に嬉しかったのだが、それが彼女の負担になってしまったみたいで申し訳なく思う。
因みに、俺たちの周りには後ろにユリウスさんが居るだけで、誰も集まって来ていない。
すれ違うときに握手などの熱烈な挨拶(特に獣人)はしてくれるのだが、ずっと引き留める様な事はしてこない……恐らく俺たち勇者を気遣って、事前にそうする様に話を通していたのだろう。
パーティー会場に入った時は、ブローノ王子、マリア王女、初めて会う第三王女【シャルロッテ】に出迎えられた。
シャルロッテ王女は年齢5~7歳といった感じで、挨拶もたどたどしく可愛らしい幼女そのものだった。
シャルロッテ王女というより、シャルちゃん王女だな……よし、心の中ではそう呼ぶとしよう。
そして第一王女も一応は居たのだが、ただ居るだけで俺や穂花ちゃんには一切目もくれなかった。
まぁこの女に関しては、どうでも良いけど…
この場では簡単な挨拶で済ませたが、改まった挨拶はパーティーが落ち着いてから行うとのこと。
ブローノ王子は「それじゃ落ち着いたらまた後で」と礼をして、この場を去っていく。
マリア王女はシャルちゃん王女と手を繋いで、貴族達と話をしに行った様だ。
多分、あの子の社交教育も兼ねているのだろうな。
そして、俺や穂花ちゃんと同じく本日主役の筈の雄星と中岸、奥本はまだ来ていない……とっくにパーティーは始まっているのにも関わらず。
貴族達は普段通りといった感じだが、主催らしき一部の人物やメイド達は慌てている様に見受けられる。
あんまり恥を晒すなよ…それに勇者だから連帯責任で俺にも迷惑が掛かるんだからな?
そして俺達三人が料理を楽しんでいると、こちらに一人の人物がやって来る。
この人物は男性で、ただ挨拶に来ただけといった感じではなさそうな雰囲気だ。
格好も紳士服の上に緑色のコートを羽織っており、この会場でかなり浮いてしまっている。
ユリウスさんも普段は黒いマントの様な物を羽織って居るが、今日は着けていない。
それだけこの会場では似付かわしくない格好なのだ。
そしてそんな彼がこちらに挨拶するよりも先に、ユリウスさんの方から彼に話掛けた。
「ようオーティス元気か?」
「無論だ、我が永遠の宿敵よ」
どうやら知り合い同士のようだ…仲も普通に良さそうな雰囲気。
……っていうか、いま話し方変じゃなかったか?
「孝志と橘穂花にも紹介しておこう。彼はオーティス・アルカナ……この王国の宮廷魔導師長で、魔法に関しては右に出る者の居ない最強の男だ」
オーティスと紹介された人物に対して、俺と穂花ちゃんは礼儀正しく礼をした。
そして相手のオーティスさんも礼を返してくれた後で俺達にこう言った。
「…おおっ!この世界を救うべく招かれた黄金の戦士達よ…この出会いも、神の導きによって引き合わされた運命だろうな……そう!我こそは王国最強にして、いずれは永劫に語りつがれるであろうレジェンドウィザード……その名も……オーティス・アルカナ……ぜひ覚えていて欲しい……気高き我が名を…!」
「「………」」
きょ、強烈過ぎる…
なんと言うか…そうだな、早い話が中二病だ。
年齢は解らないが、ユリウスさんと友達みたいだし、30歳はいってるかもしれない。
ぱっと見も、25~30歳といった年齢に見受けられる……はっきり言ってきついっすわ。
穂花ちゃんなんか別の生物でも見るような目で彼を見ている。
「ははははは、やっぱそうなるよな!」
俺達のリアクションを見たユリウスさんは大笑い。
いや普通にこうなるから!というかこの国異常者のバリエーション豊富過ぎないか?
「では、今宵は…語り合おう…どんな話がいいだろうか…」
「いや~…ハハ」
俺はこの人をなんとかしろと言う思いを込めて、チラッとユリウスさんの方を見る。
ユリウスさんは俺のチラ見の意図がわかったらしく、やれやれとでも言いたげに大袈裟な首振りをすると、俺達とオーティスさんの間に割って入る。
「少しオーティスと話があるんだが、少しこいつと話をしていいか?」
「「是非お願いします」」
穂花ちゃんと同時に即答で答えた。
それだけ言うと俺と穂花ちゃんは足早に、速攻でこの場を後にする。
去り際にオーティスさんが何かを言って来たが、俺達の歩みはそれでも止まらない。
それにユリウスさんが抑えてくれている事もあって、完全に逃げきる事に成功した。
「凄かったですね…」
「うん、凄かったね…」
歩きながら話をするが、お互いにこれ以外の感想は出てこなかった。
──そして、ユリウスさんとオーティスさんの元を去った後は、穂花ちゃんと二人きりになる。
穂花ちゃんは、もう腕こそ組んでないものの、とにかく体を俺に密着させて離れようとしない…ずっとベタベタしている状態だ。
これはエスコートじゃないと思うけど、嬉しいから黙っておく事にしよう。
──それから少しして、今度は穂花ちゃんと同じ年代くらいの少女達がこちらに近づいてきた。
人数は三人で、貴族の父か母に連れて来られた子達なのだろう……三人とも可愛く着飾っている。
一応、お互いに挨拶は交わしたが、それとは別に穂花ちゃんと話しがしたいように見える。
しかし、気を使い近寄っては来れないみたいだ。
……そして穂花ちゃんも、この世界に来てから同年代の子と話す機会がまったく無かったのだろう…話したそうにしている。
「穂花ちゃん…少し話してくるといいよ」
「え?…でも孝志さんが……」
「俺はいいよ、ユリウスさんだって好き勝手やってるんだし、友達作って来なよ」
そう言って俺が背中を押してやると、穂花ちゃんは少し名残惜しそうな表情をみせるのだが、少女達と話したい気持ちも強いのだろう。
直ぐに少女達の元へ歩み寄って行った。
貴族の少女達も、笑顔で歓迎してくれている様で、お互いが楽しそうに会話をしている様に見える。
時折、彼女達は俺を見て何かを穂花ちゃんに言っており、その都度、穂花ちゃんが顔を赤くしているみたいだ。
……俺の悪口言ってないよね?(被害妄想)
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