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4章 仮面の少女
彼女の希望
しおりを挟む──どれくらいの時間、話をしているのだろうか?
彼女があまりにも嬉しそうに話すので、俺も思わずいつも以上に饒舌になってる気がする。
「──それでね、ここなら誰にも会わずに済むから、こうして偶に足を運ぶんだ。でも孝志達は急に現れたよね?どうやったの?」
テレサは興味深そうに聞いてくる。俺はその件には触れて欲しく無かったが、聞かれた以上は答える事にした。
「実はさ、どこぞの馬鹿エルフ女の意味不明な術でこんな場所に飛ばされたんだよ、あり得なくね?」
この答えに対してテレサは笑いながら返す。
「あ~~!──人に馬鹿って言ったらダメなんだよ?孝志悪い子だね~」
「そ、そうかな?」
馬鹿って言ったくらいで悪い子って……ちょっと純粋過ぎないか?
「それにこんな場所って言い方も酷いし……僕は落ち着ける良い場所だと思うけど?」
ここが良い場所って……いや、あまり考え込まない方がいいな……悲しくなって来る。
取り敢えず明るく返すか。
「そうか…でもこれだけ暗いとお化け出そうじゃない?」
少しふざけた質問に対しても、テレサは嫌な反応一つせず、どんな問い掛けをしても嬉しそうに話してくれる。
「へへ……そんなの怖くないし、孝志に会えたから今日は来て良かったよ~、えへへ」
「そ、そうなの?」
いや、俺を甘やかし過ぎだって。
さっきからこんな感じで、冗談にも突っ込んでくれない。俺にとってとことんまで甘い会話が続いている。
テレサと話した直後にマリア王女と話なんかしちゃうと、温度差で発狂するんじゃないだろうか?
「それに、お化けは僕だし……な、なんてね…!」
「……そんな事言うのやめよ?」
……え?ジョークのつもりなの?全然笑えないだけど?自虐がエゲツなさ過ぎてどう返せばいいのか困るんだが?
それでも何とか、出来るだけ彼女に喜んで貰える様な返答を考える。
「いや、ほら!テレサって、俺にとっては綺麗な声に聞こえるじゃない?だから姿も不気味じゃなくって普通に見えたりするのかもよ?」
咄嗟に返した言葉ではあるが、正直言うと本気で思ってたりする。
何故か理由は分からないけど、今まで誰一人として克服出来ないと言っていたテレサの呪いが、俺には一切通用していないからだ。
理屈は本当わからないけど恐怖が効かないなら、容姿に掛けられた呪いも大丈夫なんじゃないか?
……だけどテレサは、ここまで数十分ほど話をしているが、この話題には触れない様にしていたので、俺もさっきまで合わせていた。
もしダメだった時の事を考えると、テレサは第一歩を踏み出す勇気が出せないで居る様だ。
俺も何気無く放った様に見える一言だが、実は少し勇気を出して言ってたりする。
「や、やだ……呪いと醜い見た目は完全な別スキルなんだ……だから、恐怖が効かなくても、容姿まで大丈夫とは限らないよ。それに──」
そして、彼女は少し間を置いたあと、心底悲しそうにこんな事を口にした。
「──孝志に拒絶されたら、もう生きていけないよ……孝志は僕にとっての全てなんだよ……」
はっきりと、そんな事を口にした。
流石に大袈裟だと思うんだけど……
「さっき会ったばかりなのに、ちょっと言い過ぎじゃないか?」
「……ううん。ダメなんだ、もう……孝志と会って、希望を持っちゃったから。初めてなんだよ?僕の恐怖を克服できた人物って」
「……両親も耐えられなかったって言ってたね?」
それと、呪いの影響で亡くなったとも言ってた。酷く悲しそうな声で。
だからこそますます解らない。なんで俺が大丈夫なのだろうか?
「そうだよ。それにどういう訳か、この呪いは日に日に進化してるから、今はあの時より強力になってる……もうみんな僕の声を聞くことがすら耐えられないんだって……」
彼女は自分の身の上を話し続ける。本当なら合間に慰めの言葉を掛けるべきだろうけど、言葉が思い浮かばない。
「──だからもう、孝志は僕にとっての全てなんだ……多分、次に君みたいな人物が現れる事は期待できない」
「………そんな事は──」
「無いと思う?」
「……いや……ぅん…」
俺ってこんなにコミュニケーションが取れない男だっけ?いつものような保守的な解答さえ出来ない。
気休めでも言えばいいんだ、そんな事は無いって……
けれど言葉を発しようとすると、どうしても頭に過ってしまう……テレサのこれまでの孤独や、人から与えられるべき情や愛に飢えてきた人生を。
そして、出会って間も無い俺に対し、貴方が自分の全てだと言ってしまえる程に追い詰められてる事を。
そんな者に対して、なんの苦労もなく生きてきた俺の気休めの言葉が届くとは到底思えなかった。
それに逆の立場だったら、やっぱり苦労知らずの人間に気休めを言われると、俺なら腹が立ってしまうだろう。
「──ごめん、少し意地悪なこと言っちゃったね」
「意地悪とは思って無いさ……でもさ、やっぱり少しだけで良いから顔を見せない?」
少し強引な気もするが、もし彼女が顔を見せようとした時、本当にダメだとしたらマイフェイバリットスキル【危険予知】が反応して止めてくれるかも知れない。
いや、視覚的に感じる不快感程度で発動するか分からないが、無理矢理にでもそう解釈しなくては、話は進まないと思った。
それに、彼女の容姿が俺に普通見えたのなら、そこから彼女を救い出すきっかけが生まれるかも知れない。
──ただ、もし醜く見えてしまった場合は?
その時はこうして扉越しで話せば良い。
反応で彼女を傷つけるかも知れないが、その時は彼女の傷が癒えるまで慰め続けよう。
「………や、やだ………嫌な顔をされたら僕死んじゃう……やめよう?ね?」
当然、直ぐには納得しないのは分かっていたので、俺はある事を提案する事にした。
「確か、テレサって仮面を付けてるだったよね?」
「う、うん。あんまり可愛く無いかもしれないけど、道化師を形どった仮面だよ」
道化師?……ああ、ピエロの事か。この世界にも存在するんだな。
ただ仮面について、今は気にする事は無いだろう。
「テレサは、仮面を着けたまま出て来てくれる?」
「え?もちろんだけど?あ!わかった!仮面の状態で顔を合わせるんだね?!それなら大歓迎だよ!孝志の顔みたかったんだ~……声からしてカッコいいんだろうなぁ~……凄く楽しみ、えへへ」
ヤッベェ、いちいち可愛すぎて死にそうなんだけど。俺を殺す気かな?
それに声からしてカッコイイって……俺ってもしかしてイケボだったりするの?
いや、テレサの言う事はあまり真に受けたらダメだな……なんて言うか、ちょっと俺に依存気味だし。
いや、和んでる場合じゃないので真剣に行くか。
「実はちょっと違うんだ。テレサは仮面を付けた状態で出て来て貰うけど、顔を合わせたらテレサは眼を瞑って……その間に俺が仮面を外すから」
「──え?顔は見ちゃうの?」
扉の向こう居るテレサが少し困惑気味だったので、少し間を空けてから話を続けた。
「それで俺の目にどんな風に見えても、仮面を元に戻す。そしてテレサそのまま扉の向こうへと戻る……なので、もし俺の目に醜く映ったとしても、テレサはわからない。どう、いい作戦じゃないか?」
「え?……いや………うぅ~~ん」
と言うのはもちろん嘘で、醜く見えなければその場でネタバラシするつもりだ。
少し考えれば分かりそうなガバガバな作戦だが、テレサは少し世間知らずな所があるので、案外気が付かないかも知れない。
もし呪いの影響を受けてしまったのなら、仮面を戻す事になってしまうが、俺は大丈夫だと思う。
恐怖の呪いが効かないのなら、容姿の影響を受けない可能性が高い。
──そしてテレサは数分悩んだ後
「──その作戦だったら………良いよ」
消え入りそうな声で、俺の提案に乗ってくれたのだった。
ーーーーーーーーーーーーーー
あとがき
今日の18時に、もう一話投稿します。
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