普通の勇者とハーレム勇者

リョウタ

文字の大きさ
65 / 217
4章 仮面の少女

4章 エピローグ 〜動き出す物語〜

しおりを挟む


「──おーい、アルマス、起きろー」

俺は軽く揺さぶりながらアルマスを起こす。
揺さぶられたアルマスは、ゆっくりと身体を起こすと、瞼を擦りながら俺を見る。

「……ぅぅ……?……孝志?……ここは……?」

しかし、割と直ぐ起きたな。これで起きなかったら耳元で叫ぼうかと思ったのに……チェッ。


──そして、起こされたアルマスは現状が全く理解できないでいた。
ついさっきまで洞窟の最奥に居たのに、目が覚めたら洞窟の外で寝ていたのである。

あの気持ち悪い感覚を思い出し吐き気が催すが、身に起こっている大きな疑問の前にその気持ち悪さは打ち消されてしまった。

そう……何故この場所に居るのかと言う疑問。

一瞬、孝志が自分と隣で眠ているダークエルフを洞窟から運び出したんじゃないかと思ったが、非力な彼だとそれは考え難いかった。
しかも、時計を見て気絶してから1時間も経ってない事を知り、その考えを完全に捨てる。
マッピングで事前に情報を得ていたアルマスは、あの洞窟の構造を把握しており、攻略には最低でも3時間は掛かると推測していた。
しかも、あそこに出現する魔物のレベルが非常に高いので、ひ弱な孝志ひとりだと攻略なんて不可能だ。

念の為、アルマスは自分のスキルを確認してみる。
解放されたスキルは第1スキルだけで、他のスキルは発動していない。だったら尚更の事だ。

確かに戦術に特化した第二スキルが発動していたなら、上手くいけば攻略も可能だとアルマスは思っていたが、使用された形跡はない。

ならば孝志はどうやってあの場所から脱出できたのだろうか?
考えても仕方ないと思ったアルマスは直接孝志に確認を取る事にした。

「マスターは、いったいどうやってあの洞窟を攻略したのですか?」

「ん?聞いちゃうそれ?良いよ、教えてやるよ、俺の活躍を」

孝志はこれ以上ない程のドヤ顔で前振りを決めた。
そんな孝志の表情を見て、アルマスは心底可愛いと思う。

……が、したり顔で語る【活躍】の内容を聞いて、アルマスは眉を釣り上げた。


「……マスター、そこに正座なさい……」

「え?なんで?いやだけど?」

「いいから!早く!」

「あ、はい」

アルマスが声を荒げると孝志は大人しく従う。
こうして怒られると素直に言う事を聞くチキンハートなのも、アルマスにとってはどうしようもなく可愛い所なのだが、今は孝志の為にも説教が大事だと気を引き締めた。


「──マスター……なんで私が怒ってるか解りますね?」

アルマスの問い掛けに数秒悩んだ後、孝志は何かに思い至ったらしく凄い悲しそうな顔で答えた。

「……あれだろ?暗黒魔弾砲を覚えられなかった事を怒ってるんだろ?」

「……そんな訳で無いでしょう……マスター、貴方は自分が何をしたか本当に解っているのですか?」

「え?俺なんかヤバかった?」

自分に人差し指を指しながら、訳がわからないと言ったような顔をする。


普段頭がキレる癖に、変な所で鈍感なのは相変わらずよね…

そう思うが、孝志にはどうしても自分の行いの非常識さに気付いて欲しいと、アルマスは真剣に話しを続ける。


「では誰か別の人物で例えましょう。そうですね……では、ある所に橘雄星が居たとしましょう」

「ッ!?……チッ…!橘の野郎っ!ある所に居やがって…!」

「そんな場面でキレないで?」

あの世界の時から思っていたけど、ほんと孝志って橘のクソ野郎のこと嫌いよね。
この世界に来るまで、特にあの男に何かされた記憶無いんけど……まぁいいわ。

アルマスは話を続ける事にした。


「橘雄星の前に両親が無く、友達が一人もいない少女が現れました……そんな彼女の事を可哀想だと思った橘雄星は、彼女の現状も確認せずにその場から連れ出しました……マスターから見て彼の事をどう思いますか?」

「…あの野郎…!誘拐じゃねーか!……あ」

「……つまり?」

「うわっ!?おれヤベェなっ!」

ここに来て、自分の非常識さを認識したようだ。
孝志は頭を抑えて「この歳で前科ついちまった…」と呟いている。

そして孝志の話を振り返ると確かに、そのテレサという子は信じられないほど可哀想な境遇に置かれた少女だろう。
だけど、素性も知らない子を連れ出すなんてとんでもない事だ。

「友達も居なく、両親も他界していると聞いて、マスターは勝手に彼女を行き場の無い孤独な少女だと思い込んだのでしょうが、そこを確認しないといけない」

「はい…」

孝志は大人しく説教を聞き入る。

「良いですか?一緒に行動するなとは言いません。ですが今日の夜会う時に、素性をしっかりと確認しなさい。それから呪いについても、人に迷惑の掛からない為にどう行動するのか、それも互いに確認なさい……それでどうしても思い付かなかったら私に相談しなさい……良いですね?」

「はい。今回は誠に申し訳ありませんでした」

「ふふっ、素直で可愛い♡」

「ああん?」


──おっと……つい本音が。
私は笑って誤魔化す事にした。

「オホホホ」

「笑って誤魔化そうとすな!」

み、見破られてしまった……

しかし、解って貰えて良かった。

だけどなぜ孝志にあのスキルの影響が無かったんだろう?
第4スキルが発動していた訳でもないのに……もしかしたらステータスカードにも記載されない隠された能力でもあるのだろうか?

けど、ずっと一緒に居る私が気付かないものかしら?


──アルマスの中には小さな疑問が残るのだった。

そして孝志の説教が終わったアルマスは現在地を確認する為、自身に備えつけた能力【ワールドマップ】を発動する。

弘子との旅でも、この能力を何度も使って来たんだっけ……と、アルマスは感傷に浸りながらワールドマップを眺め今いる地点を確認するのだった。


──そして、現在地を知ったアルマスは驚きのあまり目を見開きその場に立ち尽くすのだった。


───────────


急に凄い顔で黙り込んだアルマスを見て俺は思った……もしかして脳に異常が発生したんじゃないかと。

……いや、もともとおかしかったわコイツ。
最近は少しまともになってきたが、偶にこちらの何気ない一言で興奮したりするからやっぱりまだ何処かおかしい筈。

普通に考えてみたら、洞窟内で使用していた解析やマッピングみたいな能力を使っている最中なんだろうけど、表情が険しかったので話かける事にした。


「ボーッと突っ立ってどうしたの?」

するとアルマスはゆっくり俺に視線を向ける。
その顔は喜びとも困惑ともとれる、複雑な表情を作っていた。

「マスター……一刻も早く獣人国へ向かうべきなのは心得ています。ですが、一箇所だけ、寄りたい場所があるのですが……宜しいでしょうか?」

…?急にどうしたんだろうか?
俺の疑問とは裏腹に、アルマスは説明もそっち退けで話し続けていた。

「この森林を奥へ進んだ場所に古城があります。周囲には幻影の魔法を展開しているのでここからでは見えませんが、ここからすぐ近くにあります──それに、もしかしたら移動手段が手に入る可能性がありますよ?」

「いや、待ってくれ!どういう場所なんだ?」

「あ、すいません。はい………以前、私を従えていたマスターと一緒に暮らしていた城です」

「以前のマスター?」

アルマスに俺のスキルとなる以前に、別のマスターがいる事は聞いていた。
前のマスターの事なんてあまり興味が無かったから、詳しく聞かなかったけど…

「もう100年以上前ですので、家主は亡くなっていると思いますが、あの方に仕えていたエルフが存命かつ、あの城で暮らしている可能性が高いです。エルフは人間に比べて遥かに長寿ですし、彼自身とても義理堅い男でしたから…」

家主が亡くなったと口にした時、アルマスはとても悲しそうに目を少しだけ潤ませていた。
かつて仕えていたマスターとは、恐らく、その亡くなった家主のことだろう。

俺も急がなくてはならないので少し悩んだが、移動手段が見つかる可能性があるというので、アルマスの提案に頷くのだった。

というよりも、ここから歩きで獣人国へ向かうとなると到着までに3日は掛かるとテレサが言っていた。
それだと、ぶっちゃけテレサの転移スキルのインターバルを待った方が速い。

……そう考えると、アルマスが以前仕えていたマスターの住処へ立ち寄っても寄り道にはならないだろう。

……俺は起こしてもまったく起きようとしない、未だ気を失っているミーシャをアルマスに担がせると、そのまま古城へと向かうのだった。



──孝志はアルマスがかつて支えていたマスターなんて、自分にとって無関係なものだと思っている。

その人物が自分の産まれるずっと前に、行方不明となった祖母だなんて思いもしない。

しおりを挟む
感想 295

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。

みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。 勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。  辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。  だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...