普通の勇者とハーレム勇者

リョウタ

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4章 仮面の少女

転移した先

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松本孝志は今まで味わった事のない、大自然から与えられる開放感を噛み締めていた。

今、彼の周囲には沢山の木々が生い茂っており、時刻が昼過ぎという事で明るい太陽の光を浴びていた。

この場所は何処かの林だろうか?
森と呼ぶには木々がそこまで成長してなく、森ならではの暗さが此処には無い。

ほんの数分前まで真っ暗な洞窟の最奥に居たとは到底思えない。
そう……一瞬でこの場所に出る事が出来たのである。
洞窟から脱出するのにはそれなりに苦労すると覚悟していた孝志だけに、そんな苦労をしなくて済んだ事でより一層喜びに満ち溢れていた。

なぜ洞窟の最奥から一瞬でこの場所に出られたのかと言うと、テレサの持つスキル【瞬間転移】の効果によるものだった。

因みに、テレサの扱う転移は魔法では無くスキル。
自身はもちろん自分以外のモノであっても、自分が一度行った場所なら転移する事が出来る能力だ。

ミーシャが禁呪として使用し、自身の魔力と引き換えに行った大魔法を、テレサはスキルとして自在に何のデメリットもなく扱う事が出来るのだ。
……実に可哀想なミーシャである。

そして、転移場所は事前に指定できるという事なので、孝志は転移場所を【獣人国近くの人目に付かない場所】にお願いしていた。
この世界の地図が解らないので、当然見覚えの無い場所だが、指定通りならここは獣人国に近い場所なんだろう。

孝志がテレサの魔法で一緒に転移して来た、アルマスとミーシャ……二人の中の頼れる相棒(アルマス)を道案内の為に起こそうとした時だった──


『あ、あれ?』

「はぁんっ!?」

俺は突如鳴り響いた脳内音声に驚きの声を上げて飛び上がった。
この甘ったるい声は間違いなくテレサだ……この子、直接脳内に語り掛けて来やがった…!

危険察知とはまた違った聴こえ方だったので、全然耐性が出来てなかったせいか、とんでもない声を上げてしまった……実に恥ずかしい。

『ご、ごめん…!ビックリさせちゃった?』

「ん、ん?ぜ、全然だぜ?余裕余裕」

俺がそう言って強がると、テレサは信じたようで『それなら良かった』と言ってくれた。
いや、明らかに怪しい言動なのだから、少しは疑って欲しいんだけど…

そして俺に騙された正直者のテレサは、そのまま『あれ?』と俺に語り掛けた訳を話し始める。

『ごめんよ、孝志…獣人国へ送ったつもりだったんだけど、なぜか少し離れた場所へ転移させてしまったみたいなんだ……謝って済むことじゃないけど……ほんとごめん』

深刻そうに謝罪して来るテレサに、俺は少し疑問に思うのだが直ぐに返事を返した。
因みに俺が話す時は声を出さなくてはならない。

「そんなに気にしないで。じゃあ、悪いけどもう一度お願い出来る?」

もう一度転移のスキルを使って貰えば問題ないだろう。
俺はそんな風に考えていたので、非常に楽観的だった──

──テレサの次の言葉を聞くまでは……

テレサは息を呑むと、物凄く申し訳なさそうに謝罪の理由を述べてくれた。

『僕の転移のスキルは自分だけじゃなく、どんな物資や生物でも指定した場所へ簡単に転移させる事が出来るものなんだ……だけど、一つだけ制限があって、自分以外のモノを転移させた後に同じモノをもう一度転移させる場合には40時間のインターバルを空けないと駄目なんだ』

「まじすか?」

これを聞いた俺は、正直かなり焦った。
このままだと大事な会談に間に合いそうに無いからだ。
しかもあわよくば獣人国へ先回りし、上手いこと待ち伏せ出来れば、マウントを取って優越感に浸れるとすら思っていたのに…

……それに、この場所から獣人国までの距離はどのくらいだろう?

「因みに、獣人国からどれくらい離れてる?」

これを聞いたテレサは、更に申し訳なさそうにすると──

『……歩いて3日くらい』

──と答えた。
3日って……ちょっと転移先ズレすぎじゃないですかね?

『でもおかしいな…?今まで失敗した事なんて無かったのに……何か強い力に引っ張られるみたいな感覚を受けたんだ……ごめんね』

さっきからずっと申し訳なさそうにしているテレサだが、彼女を責めるつもりはない。

「強い力ね……でも気にしないで。あの洞窟から出られただけでもすげぇ助かったから!」

『うん…』

あの洞窟から出られたのは、めちゃくちゃでかい。
それだけでもありがとうだ。
あの洞窟の入り口からでも歩いて3日掛かると言っていたし、洞窟の入り口に出れる魔法を使って貰ったと思えばちょうど良い。

しかし、もう少しゆっくり日光を浴びて休もうかと思っていたが、それどころでは無くなったのは確かだ。

俺はテレサとの通信を中断し、直ぐにアルマスを起こす事にした。
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